皇国(中編)
王都には不思議な緊張感が漂っていた。以前は人が大勢いたはずの大通りにも、今は全く人の姿が見えない。街は静まり返っていた。アラベラがネズミの道から出て、周囲を確認する。
「人の姿は無い。今なら外に出てもいいだろう」
「昼間なのに、人が居ないの? ……皆、家に籠もっているのかしら」
ルーシャが目を細める。バーニーたちは目を伏せて、口々に言った。
「戦争に反対すると、城に連れていかれて牢屋に入れられるからな。そうなるのが嫌で、騒ぐ奴が減ったんだよ」
「トゥーニやレヴィも、町の人を庇って連れていかれた。俺たちも目を付けられていて……」
「俺は見て見ぬ振りをしたんだ。他の奴らも。……騎士として、情けない限りだよ」
部下たちの話を聞いて、マリオンが真剣な顔をした。
「いいや、そんなことはない。お前たちは、機会を待っていただけだ。逃げることもなく、こうして私たちに協力してくれている。その時点で、お前たちは情けなくなどない。胸を張れ」
バーニーたちが、照れたような表情で黙り込む。その様子を微笑ましい気持ちで見守りながら、セラフィーナは荷物を背負い直した。
「そんじゃ、アタシはギルドに行ってくる。ルーのことはアタシに任せて、エルは全力で戦ってきてね」
「僕は教会に向かいます。……くれぐれも、気をつけてくださいね」
ロドニーがエルドレッドに真っ直ぐな眼差しを向ける。エルドレッドはその目を見返して頷いた。
「ああ。ロドニーたちも、近衛兵に見つからないようにしてくれよ」
「僕たちはいいんですよ。エルドレッドが城に向かえば、近衛兵はそちらへの対処で手一杯になるでしょう? 危険なのは、あなたの方です」
「……まあ、それはそうか。分かった。気をつけて、行ってくるさ」
エルドレッドが苦笑を浮かべて告げる。彼はマリオンたちを引き連れて、城に向かって進んでいった。それを見送って、ロドニーがルーシャたちの方に目を向ける。
「ギルドと教会は同じ方向ですが、どうします? 途中まで一緒に行きますか?」
「……ううん、大丈夫。バイロンさんの宿屋は、もう無くなっているみたいだけど……他のお店にも、仲良くしてくれてた人たちはいるから。そういう人たちがどうしてるか気になるし、一通り街を見て回るわ」
「うんうん。危なくなっても、アタシとアラベラさんがついてるから……何とかなるよ。大丈夫」
2人の言葉を聞いたロドニーは、納得した様子で去っていく。残された2人は、アラベラと共に音の絶えた大通りを進んでいった。




