皇国(前編)
「ネズミの道を信用してないわけじゃない。それでもそれを使うのは、王都までだ。急に背後から現れて奇襲するのは、流石に卑怯すぎんだろ」
エルドレッドはしゃがんでネズミと目を合わせた。そして告げる。ネズミはその言葉を聞いて頷いた。
「分かった。それじゃあそこまで、みんなと一緒に繋げるね。少しだけ、そこで待ってて!」
白いネズミが駆け去っていく。それを見送って、ルーシャが笑った。
「本当、あの子たちには助けてもらってばかりね。1度キチンとお礼をしなくちゃ。何がいいのかしら。小麦とか?」
「それは全てが終わってから、直接聞いてやってくれ。ネズミたちは、常に群れで行動しているが……実はそれぞれ、個性があるんだ。100匹に好物を聞けば、100種類の答えが返ってくるぞ」
アラベラが彼女の問いに答える。彼女はその答えを聞いて微笑んだ。
「そう? 分かったわ。全部終わったら、あの子たちに聞いてみる。……アラベラは、このまま霊山に留まっていて。人間たちの町には、嫌な思い出が多いでしょう?」
「確かにそうだが、ここが正念場だ。オレはオレのやり方で、最後まで戦い抜くよ。それに人間も、悪い奴らばかりではない。王都に行けば、味方はもっと増やせるはずだ」
アラベラは真顔で断言した。セラフィーナとロドニーが、その言葉に同意する。
「そうだね~。アタシは、ギルドの皆に声をかけてみる。協力してくれるかどうかは賭けだけど……。悪いことにはならないんじゃないかな。エルは皆に好かれてたから」
「僕は王都の教会を訪ねてみましょう。エルドレッドが神の使者であることは、既にあちらにも伝わっているはず。そのエルドレッドが助力を求めていると聞けば、教会は応えてくれるでしょうから」
マリオンは部下と共に、彼らの話を一通り聞いた。そして目を細めて、宣言する。
「皆に頼みがある。これからはエルドレッドの指示を、私の指示だと思って従ってくれ」
バーニーが息を飲む。彼の後ろにいた部下が、小さな声で呟いた。
「コートネイ将軍は、それほどまでにエルドレッドの判断を信頼しているのですね。……分かりました。これより私たちは、彼の指揮に従って行動します」
ネズミたちが戻ってくる。王都への道が繋がったのだろう。エルドレッドは深呼吸して、前を見据えた。
(こうなるとは思ってなかったが、なった以上は進むしかねえ。もう後戻りは出来ねえんだ)
彼は内心で決意を固めて、ネズミに先導されて王都へと向かった。




