最後の詰め
大体の事情を話し終わった頃に、彼らは霊山に到着した。ネズミの道から出てきた人間たちの前に、木の上からリスが下りてくる。
「よく来たな。オレはアラベラ。この山にいる間は、基本的にオレの支持に従ってもらうぞ」
彼女はバーニーたちを見上げて告げた。バーニーが仲間たちを代表して答える。
「勿論だ。お前たちの住処を、荒らす気はない」
「そうか。それならいいんだ。……ところでエル。天候を変える作戦は、どうだった? うまくいったか?」
アラベラは彼の言葉に納得して、エルドレッドに向かって話しかけた。
「まあ、それなりに。……何度も使えるようなものじゃないな。視界が悪くなるし、後始末が大変だ」
「というか、もうこっちから仕掛けてもいいんじゃない? 皇国の将軍が前に進みたがるバカなせいで、向こうの軍はドンドン母国から離れていってるもの。今なら皇国の戦力は手薄になってるでしょ。ネズミの道を王都の裏に繋げて、直接王城を攻めて……エルが王様になっちゃえば?」
ルーシャが楽しそうに笑う。セラフィーナは首を傾げた。
「王様って、王様の血を引く人しかなれないんじゃなかったっけ?」
「そうね。でもそれは、王様の家系に創造神の血が流れてるから。エルは神様の子供なんだから、理屈としては一緒よ」
その言葉を聞いたエルドレッドが、複雑な表情を浮かべてため息をついた。
「……それ、オレの苦労が倍になるやつだろ。というかその場合、今の王様はどうするんだよ」
「知らないけど。引きずり下ろして、帝国に押し付けたら? 色々拗れてるみたいだけど、私たちには関係ないもの。だいたい、家庭の事情をを国と国との間で持ち出す方が明らかに間違ってるでしょ。家庭のことは、家庭内で決着をつけるべきよ」
ルーシャは真顔で言い切った。ロドニーが彼女の横で、大きく頷く。
「そうですね。このまま争い続けて犠牲が大きくなることは、誰も望んでいないでしょう。……それが幻覚だったとしても、あなたが神から使命を託されたというのなら。それは果たされなければならない。僕はそう思っています」
バーニーが戸惑う。彼は困ったような様子で、マリオンを見た。マリオンは苦笑を浮かべて口を開いた。
「……ああ、お前の気持ちはよく分かる。私も1度は、王に剣を捧げた身だ。騎士として、反乱に手を貸したくはない。だが、それ以上に。民が苦しんでいる現状を、見過ごすことはできないだろう。我らの剣は、民を護るために振るうもの。王を守ることは二の次だ」
彼女はハッキリと宣言した。その宣言を聞いて、バーニーたちも覚悟が決まった。アラベラがネズミたちを集める。
「王城……いや、玉座の裏から帰ってきたネズミはいるか?」
「ボクのこと?」
1匹のネズミが進み出る。彼は落ち着かない様子で、周囲を見渡していた。
「あの時、王様はボクに気づかなかったから……。あの道もきっと、まだ見つかってないと思う。でも、確実じゃない。それでも使う?」




