嵐の後
平野を覆った嵐が過ぎ去る。皇国も帝国も、とても戦いを続けられる状況ではなくなっていた。帝国の兵たちは、既に拠点に戻っている。その状態でも皇国の将軍は追撃しようとして、周囲の兵たちに止められていた。その様子を、エルドレッドたちはネズミの道に隠れた状態で見ていた。
「明らかに前より人数が減ってるのに、気づいてないのかな?」
セラフィーナが首を傾げる。マリオンは真顔になった。
「どうやらそのようだ。……将軍がアレで、今までよく統制が取れていたな」
「今見たとおり、部下が優秀なんですよ。以前は俺たちも居ましたし」
「そうそう。あの将軍は、ドレア家の3男なんですが……。戦場で武勲を建てることにこだわりすぎて、周りが見えなくなってるようなんです」
「そんな人間を将軍にするのはどうかと思うんですが、家の後押しがあったんでしょうね。コートネイ将軍が解雇された際にも思いましたが、皇国の上層部は腐りきっているようです」
マリオンの部下たちが、呆れ顔になって呟く。その数、およそ20人ほど。地下の空間は、人で埋め尽くされていた。
「コートネイ将軍がいらっしゃった頃を懐かしんでる奴も多かったですよ。俺たち以外にも、将軍に付いていきたいと思う人間はそれなりにいるはずです」
バーニーが笑顔で告げる。マリオンは目を細めた。
「……お前たちのことは信頼している。だが、他の者は別だ。ネズミの道は、緊急時の避難先として使い続けることになる。入口を閉じたといっても、それは道を埋めただけのこと。人間の手で掘り返されれば、再び通れるようになる。この道の存在は、出来れば人に知られたくない。それに、地下に招ける人数にも限界がある。戦力を増やすのはここまでだ」
「そうだな。霊山に、あまり大勢の人を招くわけにもいかない。アラベラも、それは許してくれないだろう」
エルドレッドが真剣な声を出す。バーニーはその言葉を聞いて、目を丸くした。
「これから霊山に行くのか? あの場所は、人が立ち入れない聖域だと聞いたことがあるが……」
「山の獣たちには許されてる。騒がなければ大丈夫だ。……野宿に近い生活にはなるけど、それは平気だろ?」
「ああ。俺たちは昔から、野宿には慣れている。任せてくれ」
バーニーが胸を張る。周囲にいる男たちが無言で頷く。それを見て、エルドレッドは霊山に向かって歩き始めた。その道中で、これまでのことをロドニーが話す。男たちは彼の話を、興味深そうに聞いていた。




