作戦会議(後編)
側で話を聞いていたマリオンが、難しい顔で呟いた。
「……ふむ、奇跡か。雨が降らない土地に恵みの雨を降らせることなどは、奇跡と言われてもおかしくなさそうだが」
「あー、天候を変える魔法ね。確かにエルは、そういう術も扱えるけど。でもあれ、気軽に火事が起きた時とかに使ってたから……。今さら『これは奇跡です!』って言っても、あんまり信用されないかも」
「病を治す魔法も、その類ですね。高位の僧侶でもないのに高度な癒やしの術が使えることは、本来ありえないことなのですが。エルドレッドはこれまでの旅の中で、何度も使っています。奇跡と言い切ることは不可能かと」
セラフィーナとロドニーが、とんでもないことを話している。アラベラはルーシャと視線を合わせて、口を開いた。
「……エルは日常的にそんなことをしていたのか? それは確かに、人間たちから神として扱われても仕方がないな」
「そうなのよね。あの司教が扱いに困って、神の子だっていう証を与えたくらいだもの。……肌に白粉でも塗って色を変えて、後ろに偽の太陽でも背負ってみる? エルならそれだけで、本当に蘇ったんだって信じてもらえると思うけど」
ルーシャが横目でエルドレッドの方を見る。彼は渋い顔をして、腕を組んだ。
「……まあ、出来ねえことはねえけど。見た目だけなら、太陽を真似るのは難しくねえし。けどなあ。それを背中に付けるってのは、ちょっと派手じゃねえか?」
アラベラが彼を見上げる。彼女は真顔で告げた。
「少し派手なくらいが丁度いいんだ。その方が説得力が出るからな。何なら鳥たちに頼んで、空から地上に下ろしてもらうか?」
「ああ、そうして頂けるとありがたいですね。……その時は、できることなら白い体色の方にお願いしたいです。白は神聖な色ですから」
ロドニーは、柔らかな笑顔を浮かべている。エルドレッドがため息をついた。
「……お前らオレで遊んでんだろ」
「そんなことないよ〜。……ちょっと面白いなとは思ってるけど、一応真面目に考えてるもん」
「そうよエル。あんたが神聖国を何とかしたいって言ったから、色んな提案をしてあげてるんじゃない。心配をかけた分、少しくらいは恥ずかしい思いをしてほしいなんて……全然思ってないんだから」
セラフィーナがニヤニヤとしている。ルーシャは、しれっとした表情で言い切った。
(…………絶対いつもの悪ノリだ。楽しんでるな……)
エルドレッドは諦めた。こうなると、ルーシャたちは止まらない。それに、こんな風に仲間たちと馬鹿騒ぎをするのは久しぶりだったから。
(仕方ねえか)
彼は全てを受け入れた。そして皆と話し合って、計画の詳細を詰めていった。




