作戦会議(中編)
「というか。エルが戦場に出なければ、神聖国が戦う理由は無いでしょ。ユラサリ教の教義に、他人に非道なことをしてはならないっていうのがあるもの。信仰に誠実に生きてる人は、教義に反することは出来ないんじゃないの?」
ルーシャが不思議そうな顔をする。ロドニーはその言葉を聞いて苦笑いした。
「……そのはずなんですが、あの国では司教と大神殿の力が強いので。司教に神託が下ったと触れ回るだけで、戦う理由ができるんです」
セラフィーナが腕を組む。彼女は難しい顔をして、口を開いた。
「その辺の矛盾をついて、内部から瓦解させられないかな? 確かエルが死んでた時は、司教も本気で焦ってたよね」
「ユラ様は今でも天上から人間たちを見守っていてくださると、彼らは信じていますからね。審問を乗り越えたエルドレッドは、色々な意味で特別なんです。……エルドレッド。何か、彼らを納得させられるような奇跡を起こせますか? 蘇生できたこと以外で。奇跡に見える魔法でも構いませんが」
ロドニーは真顔で聞いた。エルドレッドが複雑な表情になる。
「……お前は一応僧侶だろ。そういうこと言っていいのかよ」
「良いも悪いもありません。エルドレッドが僕に話してくれたことは、教義には書いていないことばかりだったのですから。あなたの話を信じるということは、教義を根本から疑うということになります。……正直今でも、信じられないという思いの方が強いんですよ。実際に体験したあなたには、申し訳ないことですが」
ロドニーはどこか吹っ切れたような様子だった。それを見て、エルドレッドが目を伏せる。
「……いや、分かるよ。というかオレも、正直そんなに信じてない。オレが見た光景は、死に瀕したオレの頭が生み出した幻想かもしれねえんだ。自分で死のうとしたくせに、本当に死が近づいたら怖くなって。死ななくていい理由を、探そうとしたんじゃねえかって」
「それならそれでいいんじゃない? アタシはアリだと思うけどな〜」
セラフィーナが笑顔で口を挟む。ルーシャはエルドレッドに、冷ややかな眼差しを向けた。
「怖がるくらいなら、最初から自殺なんてしないで。エルが死んだとか蘇ったとか、急にそんな話を聞かされる方の身になってみなさいよ」
「……ごめん」
エルドレッドは素直に頭を下げた。マリオンとアラベラが顔を見合わせる。アラベラがエルドレッドに近寄って、その顔を見上げる。
「まあ、終わったことは仕方がない。オレも協力するから、奇跡に見える魔法の使い方を考えよう」




