地下(後編)
しばらくして、エルドレッドとマリオンの怪我が完全に治る。それを見て、ネズミたちが寄ってきた。
「あのね、アラベラが言ってたの」
「ボクたちは、エルドレッドに協力する」
「皆で相談したんだ。それで決めたの」
「山にいる他の獣たちも、賛成してくれた」
「人に狩られて、だいぶ数が減っているから」
「正面から戦ったら、負けちゃうけど」
ネズミたちの言葉を聞いたエルドレッドは、笑みを浮かべて首を振った。
「いや、すごく心強いよ。……人間に傷つけられて、山に逃げてきた奴も多いだろ。そんなお前たちが、オレのために戦おうとしてくれるだけで嬉しい。ありがとな」
ネズミたちがエルドレッドの周囲を回る。マリオンはその様子を見て、目を細めた。
「獣人が力を貸してくれるのは心強いな。エルドレッドが姿を消したことで、神聖国も少し動きにくくなるだろう。帝国軍は戦意はあるが、練度が足りていない。帝国と皇国がこのまま戦い続ければ、帝国が負ける。……エルドレッド。貴殿はこれから、どうするつもりだ?」
エルドレッドが考え込む。彼は少しして、悩みながら口を開いた。
「神聖国と皇国が協力してたのは、帝国にオレが居たからだ。オレが居なくなった以上、その協力関係はすぐに終わる。……それ自体はいいことだけど、帝国が落ちるのを待つことはできない。帝国と皇国の間には色々と因縁があるから、1度本気で戦い始めたら慎重派の皇国でも止まれない。対して神聖国の方は、オレを警戒しているとか何とか理由をつけて戦いに参加しないようにすることができる。できれば、神聖国側の戦力を削りたいんだけど……」
セラフィーナが、ため息をついて肩をすくめた。ロドニーは彼に、非難の眼差しを向ける。ルーシャが彼を睨みつけた。
「要するに、もう1回戦いに行きたいってことよね。アンタ全然反省してないじゃない。いくら獣人の協力があるからって、それだけでどうにかなるわけないでしょ」
「そうそう。エルはもうちょっと、頭を使った方がいいよ。こっちの方が弱いんだから、作戦を立てて……卑怯な手とかも、ガンガン使っていかなきゃね」
マリオンはそのセラフィーナの言葉を聞いて、複雑な気分になった。彼女は正しい。騎士としてのマリオンなら否定していた意見だが、これまでのエルドレッドの戦い方を間近で見た友人としては、その言葉には同意しかない。エルドレッドはあまりにも、無謀な行動をしすぎている。
「…………悪かったな、考えなしで」
エルドレッドは目をそらした。ロドニーがそれを見て苦笑する。
「ひとまず、霊山に戻って作戦を立てましょう。1日や2日で、事態が大きく動くようなことはないでしょうから」
反対意見は出なかった。5人はネズミたちと共に、霊山に向かって歩き始めた。




