地下(前編)
地の底に落ちたエルドレッドとマリオンは、白いネズミたちに囲まれた。そこは広い円形の空間だ。天井は低く、複数の道が繋がっている。ネズミの道の中継地点。そこに招かれたのだろうと、エルドレッドは当たりをつけた。
「迎えに来たよ」
「頼まれたから」
ネズミたちが口々に言う。エルドレッドは、困ったような笑みを浮かべた。
「……誰に頼まれたんだ? アラベラか?」
「ルーシャだよ」
その答えを聞いた瞬間に、彼は音を立てて硬直した。血を失って意識が朦朧としていたマリオンが、その名を聞いて少し笑った。
「……愛されているな、貴殿は」
エルドレッドは、恥ずかしさといたたまれなさが混ざったような顔をする。ネズミたちはそんな彼のことなど気にせずに、話を続けた。
「ロドニーとセラフィーナもいるよ」
「エルドレッドを助けに来てる」
「これでようやく揃ったね」
その言葉を聞いた彼は、目を見開いた。その瞳から、涙が溢れて地面に落ちる。広場に繋がった道の奥から、ローブを着た少女が歩いてきた。ルーシャだ。
「……何よ。皆が気にしてるから、どんな風になってるかと思ったら。……なんにも変わってないじゃないの」
彼女もまた泣いている。泣きながら、怒っていた。ネズミたちが散らばって、道を開ける。彼女はゆっくりと、エルドレッドに近づいた。
「…………いや、変わってんだろ。見た目とかさ……」
「何バカなこと言ってるの。1人で何もかも背負い込むところなんて、子供の頃から変わってないわよ」
ルーシャはエルドレッドに抱きついた。エルドレッドが恐る恐る、彼女の背に腕を回す。
「……ホントだ、エルだ」
「……ええ、そうですね」
ルーシャの後に続く形で、セラフィーナとロドニーが姿を見せる。ロドニーは杖を掲げて、治癒の術を使った。エルドレッドとマリオンの傷が癒えていく。マリオンが起き上がって、ロドニーに向かって頭を下げた。
「すまない。助かった」
「いえ……。僕の方こそすみません。完治には、時間がかかると思います。僕はまだ未熟なもので……」
「そんなことは気にするな。君は、私たちにとって最も信頼できる僧侶だ」
マリオンが断言する。セラフィーナはロドニーの横で、大きく頷いていた。
「そうそう。ロディはアタシと違って、丁寧な仕事が売りなんだから。そういうことは、考えなくていいの」
ロドニーは杖を掲げたまま、照れたような笑みを浮かべた。
「……はい。ありがとうございます」
白い光に満ちた広場。壁際ではネズミたちが集まって、輪になって話し合っていた。




