化け物の帰還
黒い肌に、赤い紋様。死んだはずの男は、変わり果てた姿になって帝都に来た。
「どういうことだ」
報告を受けた皇帝は、すぐに動いた。大通りに現れた死者を出迎えて、問い詰める。
「エルドレッドは死んだ」
「そうだな。1度死んで、生き返った。今のオレは、不死身の体だ」
「馬鹿なことを……」
「馬鹿はどっちだ。オレの剣に勝てなくて、ルーシャたちに対処させようとしたんだろう? ここでオレとやり合っていいのか。オレが帝国に来たことは、他の国にもそのうち伝わる。そうなったら、帝国は神聖国と皇国の双方から攻められることになるぞ。オレとここで戦うような余裕は、お前にはないはずだ」
黒いエルドレッドが周囲を見回す。周囲に集まった人々は、冷めた目をして彼らを見ている。皇帝は苦い顔をした。
「……それは貴様が来たせいだろう」
「そうだな。でもオレは、この国に所属しないと戦うこともできない。軍に組み込んで、前線に出してもらえればそれでいい。オレを倒しに来る相手は、オレが全員片付ける」
その言葉を聞いた皇帝は、表情を消してエルドレッドを見つめた。
「どういうつもりだ。お前は戦争を嫌っているはずだが」
「事情が変わったんだ。好きに使える駒が増えたと思ってくれ」
皇帝はため息をついた。これ以上、ここで言い争っていても仕方がない。彼がそうしたいというのなら、帝国側としてはその提案を飲むしかないのだ。
「……よかろう。お前が帝国軍に入ること自体は、悪いことではない。むしろ歓迎すべきことだ。……後ろにいる女騎士は、お前の部下だな? 同じ隊に入れても良いか?」
「ああ、そうしてくれ」
マリオンは目の前で交わされている会話を真顔で聞いていた。言いたいことは多いが、今言うべきことではない。
(……不死身か。心臓となっている魔石を砕けば、人の体は動かなくなるのだろうが……。それでも、剣だけは変わらず動き続けるのだろうな)
彼の話を全て信じるとしたら、エルドレッドは死んでも死ねない存在だということになる。だからこそ彼は、前線に行くと言い出したのだろう。
(とはいえ私たちは、帝国にとっては厄介者だ。戦力として頼られるというより、囮として使い潰される方向に行くだろうな)
皇帝が帝国兵に指示を出す。周囲に集まっていた人々が、兵隊たちの手で散らされていく。皇帝はその様子を見ながら、エルドレッドに向かって言った。
「お前はここから西に向かって、クセルの町で戦闘中の第6小隊と合流してくれ。その後のことは、追って指示する」
「分かった。馬はここで借りていくけど、それでいいな?」
「……いいだろう。厩舎はこちらだ。付いてこい」
皇帝はそう言って、エルドレッドとマリオンを連れて厩舎に向かった。




