死体を迎える(後編)
「……あなたはもしや、皇国を発つ時に見送ってくださった騎士様ですか?」
心底驚いた様子で、ラディが呟く。セラフィーナが首を傾げた。
「その人が、どうしてここに? それになんで、アタシたちの事を知ってるの?」
「実は私は、街の見回りを任されていてな。君たちを見かけたことがあるんだ」
マリオンと名乗った騎士は、穏やかな口調で話を続けた。ロドニーが戸惑う
「それだけで、帝国まで来たんですか? あなたには、皇都の警護という大切な任務があるのでは……?」
マリオンは苦い表情になった。そして告げる。
「私は解任された。自警団を組織しようとして、王に歯向かった罪で投獄されることになったんだ。エルドレッドから託された女性たちは、何とか別の大陸に逃がせたが……私にできた事は、それだけだった」
ラディが息を呑む。セラフィーナとロドニーは、悲しそうな顔をした。マリオンはそんな彼らを真っ直ぐに見て、話を続けた。
「私は追われる身だ。それでも良ければ、協力させてほしい。君たちの役に立てるのなら、これ以上のことはない。今の私には、失うものは何もない。この剣を、君たちのために……エルドレッドを取り戻すために、振るわせてほしい。――頼む」
彼女はそう言って、深々と頭を下げた。ロドニーがネズミを見る。
「エルドレッドがいる部屋まで、道を繋げてもらえますか?」
「分かった。1度繋げた道は、壊して埋めたから……。少し時間はかかるけど、もう1度繋ぐことはできる。任せて」
ネズミはその言葉を残して走り去った。セラフィーナがマリオンを見る。
「あなたは、旅立つエルを見送ったんだよね。話はしたの?」
「ああ。あの日、エルドレッドにも同じ提案をした。その時は断られてしまったが……今なら分かる。彼は私を、心配してくれていたんだ」
「そっか。エルは、ずっとそうしてきたんだね」
セラフィーナは、寂しさと嬉しさが混ざったような複雑な顔をした。ロドニーがラディの方を見る。
「……いつまでも思い出に浸っているわけにはいきません。ラディさん。杖を出してください。僕と一緒に、彼女たちに身体能力を強化する術をかけてほしいので」
ラディが頷いて杖を取り出す。2人分の強化を受けて、マリオンは目を見張った。
「これは……!」
「動きやすくなったでしょ。他にも色んな術を使って、後衛は前衛をサポートする。その代わりに、前衛は何が何でも後衛を守るんだ。たとえ自分が傷ついても。……それがアタシたちの戦い方。ラディとマリオンはグロウのメンバーじゃないけど、一緒に戦うのなら覚えておいて」
セラフィーナが真剣な表情になる。マリオンとラディは、彼女の言葉を真摯な態度で聞き届けた。ネズミが帰ってくる。
「繋がったよ」
その言葉を合図として、4人は動いた。前と後ろに分かれて、道を進む。その先にいる彼のことを、考えながら。




