死体を迎える(中編)
「……慣れていらっしゃるのですね。こういった事に」
部屋に入った後に、ラディが小声で呟いた。セラフィーナが目を細める。
「そうだね。エルと一緒に旅してきたから」
ラディが申し訳なさそうな顔で口を閉じる。沈黙がその場を支配する。セラフィーナはため息をついた。
(正直、どうでもいいんだけどなあ。終わったことだし。今考えなきゃいけないのって、エルをどうやって連れて帰るかってことでしょ)
ネズミの道を使って、エルドレッドがいる部屋に入れたとしても。帝国軍の兵隊が、その部屋に集まっている可能性は高い。今の彼らに1番必要なのは、純粋な武力だ。ロドニーとラディは後衛職だから、前衛に出られるのはセラフィーナだけ。その彼女も、正規兵を相手にして渡り合えるほど強くはない。ルーシャがもしも起きてきたとしても、この問題は解決しない。彼女もロドニーたちと同じ、後衛職なのだから。
(エルの剣が動いてるっていうのが、どういうことなのか分からないからなあ。ラディっていう子も、剣が動いてる所は見てないって話だし。エルなら絶対守ってくれるけど、エルの剣のことは分かんないし……)
セラフィーナはロドニーの方を見た。視線が合う。彼は難しい顔をして、口を開いた。
「今の僕たちが全面的に頼れるのは、アラベラさんだけです。ネズミの道を通るにしても、馬車を使うにしても。1度、霊山に戻るべきかと」
「……そうなるよね。でも今の霊山って、司教がいるから……あの男に頼ることになりそうで、すごく嫌」
セラフィーナの言葉を聞いたラディが、暗い表情になって俯く。けれど、彼女は何も言わなかった。そんな彼女の目の前に、小さな白い生き物が姿を見せる。
「……ネズミさん?」
ラディは目を丸くした。セラフィーナとロドニーが、彼女の方に視線を向ける。ネズミは困ったような顔をして、言葉を発した。
「……あの。ちょっと、いいかな。皇国に、道を繋げた時。エルドレッドを助けたいって、言ってくれた人がいたんだ。力になりたいって。もし、困っているのなら。紹介できる。どうする?」
「お願いします」
ロドニーは即答した。今は少しでも、味方がほしい。ネズミたちが紹介してくれる相手なら、信頼できる。そう思って。ネズミは頷いて、部屋の隅に走っていった。道は既に、繋げられている。その道の先から、1人の女騎士を連れて。白いネズミが、戻ってきた。
「お初にお目にかかる。私はマリオン・コートネイ。皇都の騎士だ」
女騎士はロドニーとセラフィーナに歩み寄って、毅然とした声で名乗った。




