死体を迎える(前編)
ガタゴトと、馬車が動く。3人は1言も発さなかった。馬車はやがて帝都に着く。そして、街で1番大きな宿の入り口で止まった。3人は、警戒しつつ馬車から下りた。馬車を遠巻きに見ていた僧侶たちが、下りてきた3人を見て首を傾げる。そのうちの1人が、ラディに向かって問いかける。
「司教様は、ご一緒では無いのですか?」
「……はい。司教様は、その……」
「仕事が忙しいんだって。アタシたちは、エルの迎えを頼まれたの。死体でもちゃんと連れて帰って、墓を掘るんだ」
言葉に詰まったラディの代わりに、セラフィーナがその問いに答えた。僧侶は安堵の表情を浮かべる。
「そうでしたか。よろしければ、その……お墓の場所を、お聞きしても?」
「霊山だよ。生きてた頃のエルが、そうして欲しいって言ったんだ。私はセラフィーナ・ミュアヘッド。エルの仲間で、友達だよ」
彼女は笑みを浮かべて断言した。僧侶はそれで納得したようだった。安堵の息を吐いて、彼は宿の2階を見上げる。
「エルドレッド様は、角のお部屋にいらっしゃいます。帝国兵が宿の周囲を固めていて、誰も入ることが出来ないでいますが……エルドレッド様のお仲間がいらっしゃるのなら、帝国の方々も……」
「それはどうかな〜。……この国のことは知ってるでしょ。エルの仲間だなんて、正直に名乗ったら……きっと、アタシたちまで殺される」
僧侶が難しい顔をする。ロドニーが話に入ってきた。
「ここには、神殿兵の方々はいらっしゃらないんですか?」
「はい。私たちは、普段は別の宿に泊まっているんです。司教様の馬車が来たので、あの方から直接話を通していただこうと思ったのですが……お仕事がいつ終わられるか、司教様から聞いていらっしゃいますか?」
「残念ながら。……正攻法で会うことは、諦めなければならないようです。もしよろしければ、皆様が泊まられている宿に……身分を偽って宿泊させていただきたいのですが」
「私は構いませんが……そのような事が、可能なのですか?」
僧侶が驚く。セラフィーナは笑って言った。
「任せて! そういう交渉は得意だから!」
「分かりました。……こちらです」
セラフィーナの言葉を信じた僧侶は、ロドニーたちを別の宿へと案内した。セラフィーナは宿に入ってすぐに、店主の前に金貨が詰まった袋を置いた。
「悪いけど、何も聞かずに部屋を用意して。3人部屋。それから誰にも、私たちのことを話さないで。報酬は言い値で払うから」
店主は金貨の袋を持ち上げて、秤に乗せた。そして1言。
「もう1袋だ。それで1日分の宿泊費にする。払える間は泊めてやるよ」
「オッケー。んじゃ、これ。今日の分ね」
セラフィーナがもう1つの袋を取り出して、店主に渡す。それで話はついた。3人は案内された部屋に入って、扉を閉めた。




