地下牢(後編)
ラディは知っていることを全て話した。話を聞いていたルーシャは、思わず叫び声を上げそうになった。セラフィーナが彼女の口を塞ぐ。そして小声で話しかけた。
「気持ちは分かるよ。でも、今はロディに任せよう。エルはエルなりに頑張ってた。あたし達はそれを知ってる。だから、ね?」
ルーシャが蒼白な顔で頷く。暗い表情になったロドニーは、それでも。前と同じ穏やかな声で、話を進めた。
「ラディさんがここに落とされてから、どれほどの時間が経っているか分かりますか?」
「分かりませんわ。ここは日も差さないので、時間の感覚が無くなってしまって……」
涙声で、ラディが言う。ロドニーは眉をひそめた。
(話からすると、この方も清廉潔白とは言いづらい生き方をしていたようですね。それに……まだ、その事を自覚することも出来ていないようです)
ネズミは少し離れた場所で、3人を待っている。ラディの話が全て真実だとすれば、一刻の猶予もない。すぐにエルドレッドに会いに行かなければ、取り返しのつかないことになる。ロドニーは覚悟を決めて、ゆっくりと口を開いた。
「……大変心苦しいのですが、僕にはあなたを助けることはできません。あなたのことは、エルドレッドに話しておきます」
「エルドレッド様は、許してくださるでしょうか。私のことを……」
「僕はあなたから聞いた話を伝えるだけです。それを聞いた彼がどんな判断をしたとしても、何を言うつもりもありません」
ロドニーはキッパリと告げた。ラディが言葉を詰まらせる。
「……私……私は……」
それきり彼女は喋らなくなった。聞こえてくるのは、すすり泣きの声だけだ。ロドニーは離れた場所にいるルーシャ達に近づいて、声をかけた。
「……行きましょう」
2人が無言で頷く。ネズミが3人を連れて、新しい道に入っていく。
「………………私のせいよ」
道を歩いている途中で、ルーシャが小声で呟いた。
「私がエルを追い出したからこうなったの。全部私が悪いんだわ。……エルもきっと、そう思ってる。きっと……」
「どうかなあ。エルのことだから、自分が離れなければって思っているかもよ。エルとルーは似てるから」
セラフィーナが、努めて明るい声を出す。ルーシャは俯いたまま、顔を上げない。3人はそのまま、無言で歩き続けた。道の先に、光が見える。出口だ。
「この先は霊山。ワタシたちが生きる場所。ここに招くのは、あなた達だけ。ようこそ。ここが、ワタシたちの世界だよ」
ネズミはそう言って、光の中へ消えていった。3人はその小さな背を追って、出口を通り抜けた。




