彼がいない、彼の居場所
ルーシャたちは、真っ暗な地下道を進んでいた。ネズミが作った道は、とても狭くて湿り気もある。お世辞にも快適な環境とは言えないが、今の彼らにとっては1番有り難い場所だった。
「……2人には、怪我はない?」
「多少はありますが、それほど大きなものではありません。ですから心配は要りませんよ。新しい杖が手に入れば、治癒の術をかけることもできます」
「アタシも! ……エルの苦しみに比べたら、こんなの全然何でもないよ。早く会いに行ってやろ。あいつ、きっと……ルーに、会いたくて会いたくて。寂しがってるよ」
「馬鹿! それは2人もでしょ! ……仲間、なんだから……」
ルーシャが顔を真っ赤にして俯く。セラフィーナとロドニーは、顔を見合わせて笑い合った。エルドレッドとルーシャは、素直になれないだけで……本当は互いに、想い合っている。それは2人以外のグロウメンバーだけでなく、2人と関わった者なら誰でも分かることだ。
「そうだね。仲間なんだから、これからはずっと一緒にいよう」
「全くです。急に恥ずかしいことを言われても、今度は追い出さないでくださいね」
「…………わ、分かってるわよぅ…………」
2人は笑顔で念を押した。ルーシャが耳まで赤くなった顔で、小さく頷く。こんな事になるとは思わなかったけれど、こうなった以上は仕方ない。前みたいに、また4人で。協力して、この危機を乗り越える。その思いは同じだった。3人を先導していたネズミが、立ち止まる。
「……待って。他の生き物が、近くにいる。この感覚は……地下牢かな。どこかの国の牢獄とぶつかった。道を変える」
3人はネズミの言葉を聞いて、頷いた。そこに。
「……そのお声。どなたか、いらっしゃるの? 助けていただけませんか。謝りたいのです。せめて、1言でも。エルドレッド様に」
そんな声が聞こえてきた。3人はその声の主を知らない。けれど。
「…………エルドレッドと言いましたね。彼の、知り合いですか?」
ロドニーは声が聞こえた壁に近づいて、話しかけた。姿は見えないが、この人物は……3人が知らない彼のことを、知っている。そう判断して。
「知っています。……知らないことの方が多いのですが。あの方は神の子です。殺されてはならない人です。そのはずなのに、どうして。どうして皆様は、あの方を殺そうとなさっているのでしょう。どうして……」
壁の向こうにいる人物は、そう言って泣き出した。通路の向きを変えていたネズミが、3人の方を見て声をかける。
「どうする? この人を助けると、どこかの国に恨まれるかもしれないよ。牢に入っている人だし、助かりたくて嘘をついているのかもしれない。判断は、あなた達に任せるよ」
そう言って。ネズミは再び、穴を掘る作業に戻っていった。




