転機
「何があったのですか。いったい、どのような事が。話してください、エルドレッド様」
「できない。詳しいことは司教様に聞いてくれって、言ってるだろ」
「それは……呪いの品に、関することですか?」
「違う。司教様が意図的に、伝えていなかったんだろう。……グリズスたちは知っている。どうしてもと言うなら、2人に聞け」
朝食を食べながら、エルドレッドは僧侶と話した。盗賊が笑いながら口を挟む。
「いやあ、オレは知らねえなあ。お前、知ってる?
「さあね。僕も知らないよ。どういうことかな、エルドレッド」
勇者も同じだ。人の悪い笑みを浮かべて、彼らは自然に嘘をついた。僧侶が顔色を変える。
「エルドレッド様……!」
エルドレッドは2人を睨んだ。
「分かっていて、俺に話させる気か。……いいか、ラディ。1度しか言わないから、よく聞け。俺には仲間がいた。大切な奴らが。そいつらは全員、皇国に拐われて捕えられた。三国は共謀して、俺の大切な人間を奪った。3人も」
「そんな……そんなこと、有り得ません。司教様がそんな事をお許しになるなんて」
「旧時代の伝説は、吟遊詩人が各地で語っているだろう。英雄には仲間がいる。魔女と僧侶と盗賊だ。……いま、ここには居ない奴ら。俺が会いたいと思っている奴らが」
皇帝が立ち上がる。彼は指を鳴らした。4人の周囲を、帝国兵が取り囲む。
「エルドレッド以外は動くな。一歩でも動けば、殺されると思え。……エルドレッド。俺はお前を買っている。お前の強さは、仲間の力があってこそだ。こちら側に来い。神聖国と皇国に、宣戦布告をする。心配するな。お前の仲間は全員、俺が助けてやろう」
「断る」
エルドレッドは即答した。流されてはならない。大体、彼は……。
「善意だけでそんな事を言っているわけじゃないだろ。帝国は規模が大きく、荒くれ者が多い。戦争が出来ない今、民の不満は動かないお前に……皇帝に向かう。三国の睨み合いが1番響いているのは、帝国だ。いつまでも動かなければ、腑抜けの王だと言われて……クーデターを起こされかねない。それを阻止するためには、行動を起こさなければならない。こんなに目立つことをしたのは、そのためだ。違うか?」
「……相変わらず、お前の言葉は耳に痛いな」
皇帝が苦笑する。エルドレッドは食事を終えて、席を立った。
「面倒な建前は、ここで終わりだ。この旅は、目的があってしているものじゃない。俺はどの国にも協力しない。殺したければ殺せ。ルーシャたちを人質に取られている俺には、抵抗するという選択肢はない。俺が怖いのなら、殺しに来い」
そんな言葉を残して。彼は2階の客室に、戻っていった。




