閑話 【盗賊と勇者】
睡眠中というのは、人が最も無防備になる瞬間である。
「こんな夜更けに、何をしているのかな?」
「べっつにー? お前こそ、何をしに来たんだよ。ここ、他人のベッドだぞ」
エルドレッドが寝ている間に、彼の荷物を漁ろうとして。盗賊は勇者に見つかった。彼は全く悪びれなかった。
「お前も気になってんだろ。2人で見てみようぜ、呪いの品ってヤツを」
「……まあ、気にならないといえば嘘になるね」
勇者は笑って、盗賊と共に荷物をひっくり返した。その品物が何かは知らない。けれど彼の荷物の中には、どれだけ探してもそれらしき物は無かった。
「何も見つからねえなぁ。ガセか?」
「彼が隠しているんだろう。……何かがあるのは確定だよ。何もないなら、司教様は仕掛けてこない。あの人が気にするのなら、特別な物はあるんだ」
「オレ、あの人のことよく知らねえんだよなー。だからまだイマイチ分かんねえの。てか、呪いとか初めて経験したし」
「それは僕もだよ。彼は慣れているんだろうね、色々と」
ベッドで眠るエルドレッドを見ながら、勇者が呟く。盗賊はひっくり返した荷物を元に戻しながら、話を続けた。
「お前って、あいつと結構親しそうだけど……どんくらいの付き合いなわけ?」
「旧時代に、何度か仕事を依頼した程度の仲だよ。グロウのメンバーとも会ったことがある。……エルドレッドは、頼れる男だった、今回の件で思い出したよ。僕たちは、彼に喧嘩を売った。もちろん覚悟の上だ。勝算もある。……それでも、怖くなるんだ。呪いの品なんて、彼に持たせていたらどんな風に使われることか……」
勇者が真顔でそんなことを言う。盗賊は楽しそうに笑っていた。
「オレはシンプルに、司教でも誰でもいいから売りつけるつもりー。高く売れそうだし」
「ああ、僕は別に……呪いの品がどこでどう使われようと、彼の手に無ければどうでもいい。……協力するかい?」
勇者が盗賊の目を見る。彼は本気だ。それを感じ取って、盗賊は上機嫌になった。
「おっ、いいねえ! 僧侶は……あの様子じゃあ、こっちに引き入れることはできねえか。けど、お前が協力してくれんなら心強い。頼んだぜ」
「任せてくれ。……それに僧侶は騙されやすい子だから、うまく使えば呪いの品が何かくらいは聞き出してくれるかもしれない。剣か盾か、それとも全く別の何かか。大きさや形も知りたいな」
「そうだな。……よろしく頼むぜ、勇者サマ」
エルドレッドの荷物を元あった場所に置き直して、盗賊が勇者に向かって手を差し出す。勇者は微笑んで、その手を取った。こうして、彼らは手を組んだ。




