大神殿(後編)
食事をしながら、勇者が旅の話をする。そしていよいよ、本題に入った。
「呪いの街は僕たちにとって、とても嫌なところでした。通常通りの活動ができたのは、ラディとエルドレッドだけです。エルドレッドは呪いの起点を探しに、街の奥へと向かいました。そして1人で片付けて、帰って来たのです。僕が知っているのは、それだけですよ」
「それは大変興味深いお話ですね。探すも何も、エルドレッドは……あなたは分かっていたでしょう? 呪いの起点が、どこにあるのか」
勇者たちが目を見開く。エルドレッドは深いため息をついた。
「目星はつけていました。当たりを引いたのは2箇所目です」
「おや、そちらを後にしたんですね。確かにその方があなたらしい」
「……箱がある場所まで、ご存知だったんですか」
エルドレッドが、鋭い目つきで司教を見る。司教は笑って受け流した。
「彼女は私に、全てを報告してくれていましたから。起点になっていたのはサリュの樹でしょう? 生きている木を、1人で壊せたのですか?」
「ここにいる方々と呼吸を合わせるよりも、1人で全てやった方が遥かに楽です。ここでこうしろと、いちいち指示するのは……面倒な上に、呪いが暴走する危険もありましたから」
「それは行動の理由でしょう? 私が話しているのは、行動の内容についてです。1秒にも満たない時間で、完全に木を殺すのは……人間の技ではありません」
「俺と同じランクで刃物が扱える職種なら、適切な練習をすれば誰でもできるようになります。それに、俺は何度も同じことをやってきましたので」
「だとしても、やはりあなたは特別ですよ。それだけのことをして、呪いの品まで預かって……お疲れでしょう? 今晩は、ゆっくりお休みになってください」
司教がそう言った時には、あれだけあった料理は全て無くなっていた。彼は外に声をかけて、人を呼ぶ。
「お客様を、客室に案内して差し上げてください」
「分かりました」
司教に呼ばれて駆けてきた若い司祭が、エルドレッドたちに話しかける。
「こちらです。どうぞ」
1人に1つ、大きな広い客室が割り当てられる。エルドレッドは自分に与えられた部屋に入って、中から鍵をかけた。
(……やっぱり、呪いについて聞いてきたな。呪われた品物のことまで……)
懐に入れたルビーに触れる。石は熱を発し続けている。眠っていた悪魔を起こしたからだ。
(一応、最初に声をかけたのは俺だが……正式な契約を結んでいるわけじゃないから、石が盗まれたらそれで終わりだ。誰にも奪われないように、気をつけないと)
念の為に鍵はかけたが……今日はおそらく、何もしてこないだろう。エルドレッドが司教の動きを警戒していることは、彼も理解している。今日の夜に、司教が秘密の話をする相手。それはおそらく、彼ではない。これから先のことを考えながら、エルドレッドは暗い気持ちで眠りについた。




