大神殿(中編)
真っ白な大理石で作られた、大きな神殿。その前に停まる豪華な馬車。
(本当に、ここに来る度に思うが……これで良く、清貧な暮らしが理想だと言えるな)
平等を謳いながら序列を作る。質素倹約を説きながら、自分たちだけ贅沢三昧。ここはそういう所だった。盗賊が笑う。
「宿にしちゃあ上等じゃねえか。ここはどこもお高くとまってるもんかと思ってたぜ」
「大神殿はユラ・サリエール様がこの大陸をお作りになった時、人の祖となるべき方々にお与えになった家です。ですから、周りの者たちがどうしてもと申しまして……。本来なら他の神殿のように、小さく慎ましくあるべきなのですがね」
「大きさや広さは問題ではありませんわ。大神殿は全ての神殿を支える、神の住まう場所とも言われています。エルドレッド様にとっても、思い入れのある場所でしょう?」
司教と僧侶が口々に言う。エルドレッドは顔をしかめた。
「そうだな。……司教様から直々に審問された場所だ。あの時のことは、忘れようと思っても忘れられない」
「それは良かった。ご安心ください。今は準備ができておりませんから、審問することは不可能です」
「……以前にもそう仰られて、裏で準備を進めていらっしゃいましたよね?」
「おや、そうでしたか?」
司教はニコニコと笑っている。エルドレッドがため息をつく。勇者が笑いながら口を開いた。
「まあ、まずは夕食にしよう。そういう話だったからね。司教様は、信徒の皆様とお食べになられるのですよね?」
「普段はそうですが、今回はせっかくのお客様です。個人的なおもてなしの方を優先させていただきましょう。……こちらです」
司教が4人を先導する。エルドレッドは懐かしさを感じた。その光景には見覚えがある。
(そういや、あの時もルーシャと喧嘩してたな)
他愛のないものだ。机の上に並べられた料理に目を輝かせる彼女に向かって、『食べすぎると太るぞ』とか、そんな言葉をかけた気がする。
(ロドニーは、出された料理を残すのと粗食を貫くのと、どちらが良いことなのかって悩んでたっけ。セラフィーナが横から皿を奪って、盗賊の前で気を抜きすぎだって笑ってた。……懐かしいな)
そんなことを考えながら席につく。皿の数まであの時と同じ、けれど決定的に違う時間。
(いつまでも過去の思い出に浸っていることはできない。ここにいる奴らは、全員敵だ)
気を引き締めて、前を見る。そこには司教が座っていた。彼は相変わらず、穏やかに笑っている。
「なあ、もう食べていいか? いいよな?」
「構いませんよ」
盗賊の問いに司教が答える。そうして彼らは食事を始めた。




