大神殿(前編)
司教が乗ってきた馬車に同乗して、4人は大神殿に向かった。その道中で、勇者が彼に話しかけてくる。
「エルドレッドは、司教様と親しく話す仲だったんだね。驚いたな」
「……そんなに親しいつもりはないけどな。恐れ多いし」
「おや、そうですか? もう少し気楽に接していただいても、私としては構いませんが。そうですね。まずは敬語を取るところから。いかがです?」
司教がすかさず口を挟んでくる。エルドレッドは苦笑を浮かべて断った。
「せっかくですが」
盗賊は頬を膨らませて外を見ている。僧侶は笑顔で、司教の隣りに座っている。
「そうですわ。私、エルドレッド様にお聞きしたかったことがあるのです。あなた様に信頼していただけるようになるまで、私はどれほど修練を積めばよろしいのかしら」
「積まなくていい。……いいか、こんなことは2度と無いんだ。呪いの箱は、開けてはならない物だ。俺が信頼する奴らは誰も、箱を見つけても開けない。そういう奴らだから信じられるんだ」
エルドレッドは即答した。こればかりは、念を押さなければならないことだ。司教が笑みを深める。
「以前から思っていましたが……あなたは、他人が巻き込まれそうになると自分を差し出す性格なんですね。良いことだと思いますよ」
「……そりゃどうも」
エルドレッドは渋い顔をした。
(要するに人が良いってことだろ……。否定はしねえけど)
呪いを広めるということは、何の罪もない人々が傷つくということだ。それは看過できない。自分の手で止められるのなら、止めるべきだ。僧侶が更に目をキラキラとさせているのが、少し……いや、かなり鬱陶しくても。
「つまりはイイコちゃんなわけだ。そりゃあオレなんかと、仲良くしたくはねえよなあ」
盗賊が不貞腐れる。さっきから、彼はずっとこの調子だ。
「言っておくが、別に俺はお前らの中の誰と組むことも考えてない。今のところは」
エルドレッドが念を押す。勇者は困ったような笑みを浮かべた。
「君は、それでいいのかな。取り戻さなければならない人たちがいるんだろう?」
「そうだな。だが、お前らには頼らない」
「では、どうやって取り戻すつもりなのかな?」
勇者がエルドレッドの目を見て問いかける。エルドレッドは真顔になった。
「それは、お前に話すことじゃない」
車内が一気に気まずい雰囲気になる。エルドレッドは気にしなかった。しばらくして、馬車が停まる。司教が笑って告げた。
「着きましたね。……積もる話はこの後で。すぐに夕食を用意させますから」




