【Unknown】
息子が三歳になるまでは、二人目は作らないようにしようと約束していた。
「あなた、あの...私......」
千尋が一歳を迎えた年、青褪めた顔をしたアイツは、俺に二人目が出来たことを告げた。
何があったのかを話したアイツは、泣きながら俺に謝った。
宿った命に罪はない、妻を責めるのは筋違いだ。
俺は二人目も【自分の子】として、家族を養っていくことを決めた。
いけない事だと知りながら、主治医のDNA検査の結果を書き換えさせて、【父親】の痕跡を消した。
アイツや子どもたちと暮らせるならそれで良いと思った。
だが、俺たちのささやかな幸せは、崩された。
俺を苦しめた、身内を苦しめた、アイツを苦しめた、あの野郎が壊した。
泣いて縋る子ども達を引き剥がし、泣いて嫌がるアイツを無理矢理連れて行った。
野郎は、アイツに書かせた離別承諾票を送りつけてきた。
乗り込みたい気持ちはあった。
それをやれば危害を加えられる事は見えていた。
突きつけられた選択を抗うことを選べず、書面へ記名して国役所に出した。
帰り道、俺のグチャグチャな感情を表すかのように、空から滝のように水が降り注いだ。
ふつふつと煮えたぎる怒り。
胸を握り潰してゆく悲しみ。
不甲斐ない自分への悔しさ。
俺の中の黒いモノは、全身を打つ水へと溶け出したのだろう。
纏わりついていたそれは、俺の思いに反応するように、雫からナイフへと形を変えた。
歪み捻れきった思いから手にした力。
俺はそれに過信した。溺れた。縋った。
止める声を振り払い、請負人の真似事に興じた。
この体が壊れても構わない。
アイツを取り戻して、また、四人で居られるなら。
── コノ怨ミ 晴ラサデ オクベキカ




