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☆彡 4 ☆彡


(…………近っっ!!!)


 通ってる高校まで徒歩10分って羨ましい……じゃなくて!!


 私はベンチのすぐ後ろに建つ家(フェンスの先ギリギリのところまで壁がある。近い。)を呆然と眺め、隣を振り向き、無表情に戻った顔をまた呆然と眺め。

 ゆっくり回れ右をしようとすると、腕を掴んで阻止された。


「大丈夫。君らの話が聞こえてたのはオレだけだから」


 それ全然大丈夫じゃない。


 よりによって公園に一番近いところが飯尾の部屋らしい。

 ここなら人目を気にせず思いっきり語れる!!っとテンションだだ上がりのヲタ全開、少々デシベル数に配慮が欠けがちだった私たちの会話は、ほぼ丸聞こえだったようで……。

 うわあああぁぁ~~!!!


「騒音被害すみませんでした……!!」

「まぁそれを喜んで聞いてたこっちもどうかと思うんで、そこは。」


 衝動的に逃げようとした私の腕をとったままで、器用に飲みかけの缶コーヒー二つを端に置くと、ベンチに並んで腰掛け(させられ)る。


「いろいろ疑問に思ってるみたいだし。少し話を聞いてもらおうと思って」

「……はい」


 まるで身柄を確保された容疑者の気分で。赤面してうなだれながら、私は素直に返事をした。



   ☆彡



 児玉千晶こだまちあきさん。他校に通う高校2年生。


 癖のない「ザ・美人」な整った顔。身長168cm。モデル体型。

 特技は運動全般・ダンス・ジョ●ョ立ち。(プロフ写真のポーズがキレキレ)

 将来の夢は世界で活躍するアイドル。秋頃放送予定の『プロデュース202』というアイドルオーディション番組に出演予定。


 彼女は飯尾のご近所さん。幼馴染だそうだ。


「アイドル目指した活動がうまくいかなくて落ち込んでた頃、軽い気持ちで保科さんの受け売りを言ってみたら。なんか効果てきめんだったらしく」


 渡された飯尾の携帯でSNSページを見ていると、顔を寄せてきた。

 思わず離れようとしたら肩に手を回され、そのままもう片方の手で携帯を操作し、目に馴染みのある画像に切りかえた。


 ネットの無料サイトで出したホロスコープだ。

 千晶さんの生年月日らしい。ちゃんと出生時間も入力してある。


「それから時々、千晶の相談に乗るようになったんだ」


 ……つまり。飯尾は1年の頃から、私の濃ゆい占いヲタ語りを聞いていた。(この件に関して反省すべきなのは私。)

 ある時、夢への活動が軌道に乗らず落ち込む千晶さんに、私の会話から引用したアドバイスで励ました。

 その“開運アドバイス”で物事がうまくいきはじめた(と感じた)彼女から、何かと助言を求められるようになった。


 当然、私の会話の断片だけでは対応しきれなくなっていき。

 自分でも占いを勉強していくうちに面白さに目覚め。気付けば沼にどっぷりハマって、今日に至る――。


「でも本気でプロ目指してるやつ相手に、オレのにわか占術だとだんだんキツくなってきて。“師匠”の保科さんにきちんと弟子入りしようかと」


 いや弟子とかとる気ないですけど。そもそも趣味のオタクだっただけで、占い師でもなんでもないし……。


 私は一方的な弟子入り希望者に呆れた目を向け、肩に置かれた手を払いのけた。


「飯尾君。そんなことしてるから、現在進行形のトラブル線が出るんだよ」


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