☆彡 3 ☆彡
「一応、上木たちには『一緒にフェス行く相手をタロットで占ったら、保科さんだった』って言ってある」
そうだったんだ。まぁ妥当な理由かな。(ちなみに上木=大器晩成君。)
お礼を言うのも変なので、隣を歩く飯尾を見上げてとりあえず頷いてみせる。するとなんか微妙な視線が返ってきた。
「だけどさっきみたいに鑑定したら、オレが言わなくてもバレるよ」
「へっ!? ……もしかして私、口に出してた?」
「無自覚か」
どうやら運命線が大器晩成だとかのあたりから、心の呟きがもれていたらしい。
うわ~~やっちまった。バラされる前に自爆しかけてたなんて……。
頭を抱える私を見て、飯尾が思わずといった感じでふきだした。
「やっぱ保科さん、筋金入りだよね」
「こ、今後は気を付けるから……じゃなくて占い沼を本気で脱出するから大丈夫」
「いやー無理でしょ」
「……笑いすぎ」
あんまり感情表現豊かそうな手相じゃないのに。(実際の性格もそんな感じ。)
いつまでも笑っている飯尾を睨んだら、道端の自販機の前で止まり、
「はい。お近付きのしるしと、連絡先消されないように賄賂」
と、買った缶コーヒーを一つこちらに寄越した。
これは受け取ったらだめなやつ。
突っ返すとタブを開けて、「飲まないなら捨てるよ。あーもったいない。環境にもよくない」とか言い始めたのでしぶしぶ受け取った。
恵まれた知能線をこういう使い方するの、よくないと思います。
帰ると言いながら飯尾が向かったのは、学校から徒歩10分くらいのところにある公園だった。
私は内心ドキッとしたのを顔に出さないよう気を付けた。
ここは最寄り駅に近くて便利なわりに、通学によく使われる道沿いではないせいか、今までうちの学校の生徒を見かけたことはない。
そんな穴場なので、私は友達の愛李と時々、学校ではちょっと話しにくい内容のお喋りをするのにここを利用していた。
彼女はアニメが大好きで、推し声優が複数いる。
それぞれ自分の好きなものについて、交代で思いっきり語る。お互い聞いているようで聞いてなかったり。だけどその距離感がちょうどよかったり。
公園の奥へ向かってまっすぐ歩いていく飯尾に大人しくついていく。その先には私と愛李がいつも使っているベンチが佇んでいた。
私は変な動悸がしてくるのを必死に押し隠した。
ベンチの前で立ち止まった飯尾が(もしかしたら挙動不審ぎみかもしれない)私をちらっと見てから、公園の裏手、フェンスの先にある家を指差した。
「あれ、オレの家」