☆彡 ２ ☆彡
手相。
推定万人受け第一位のとっつきやすさを誇る占い（たぶん。）
それほど親しくない相手でも、「手相見せて」は受け入れてもらいやすい。
中学の頃、よく同級生の手を見せてもらっていた。三大線を知ってる子はけっこういた。なんだかんだ興味を持っている人が多いジャンルだと思う。
友達付き合いの初手に、まずは手相。ヲタクあるあるだ。
ということで（？）。
放課後。空いた隣の席を陣取った飯尾に、私の手の平はじっくり舐めまわすように眺められているのだった。
「保科さん。感情線が普段のイメージと違うね」
「そ、そう……？（どんなイメージ？）」
「絶対あると思った。神秘十字線」
「そ、そう……？（だからどんなイメージよ？？）」
「あ、旅行線の出方と長さ。オレとそっくり！」
「そ、そう……」
「ほら」
なんでそんなに嬉しそうなんですかね……。
なんでって、まぁ、趣味友に飢えていたんだろうけど……。
私はなんともいえない気分で、笑顔で差しだされたひと回り大きな手の平を見下ろした。
ハイハイじゃあ拝見させていただきますよー。
……本当だ。旅行線が出る位置から長さまでほぼ一致してる。これってかなり珍しいよね。
知能線長いなー。そういえば成績いいんだっけ。意外に線は下降ぎみ。
うわ～絶対あると思ったけど。こんなに強い人気線、初めて見た……。校内一のイケメン様の金星帯に震えが止まらない。
やっぱり占いって面白～………、
（……はっ！？ いかんいかん。私はヲタ卒者。これは弱みに付け込まれて仕方なく見てるだけ。フェスが終われば解放されるんだし、それまでの辛抱よ）
『付き合うのはフェスまでだからね。その後は連絡先も消させてもらいます』
どんなに顔がいいからって、唯々諾々と流されるつもりはない。
ちょっと冷たいかなとは思ったけど……。でも脅迫してくる相手には、毅然とした態度も必要かなって。
連絡先交換（させられた）当日に、飯尾にはメッセージで釘をさしておいた。
『わかった。消されないように努力する』
……本当にわかったのかな？？（嫌な予感しかしない……）
「わぁ、飯尾がまた手相見てる」
「ペンで線足すと運が変わる説、あれってマジなの？」
「見て見て保科さん、俺マスカケ線あるんだ～」
だいぶ人気のなくなった教室で、それまでなんとなく少数からの視線を感じる程度だった（腫れもの扱い？）私たちの周りが急に賑やかになった。
飯尾と仲のいい男子たちだ。オーラは見えなくても陽キャの波動を感じます。
一度も会話をしたことのない相手から手の平を差しだされ、陽キャ波に気圧されつつのぞきこむ。
う～～ん。マスカケ、に見えないこともない？ 途中で線が途切れてるけど。
しかしなかなかいい運命線じゃないか。大器晩成タイプ。月丘もわりといい感じ、援助運もありそう……、
「邪魔すんな。あとお前のそれマスカケじゃない」
ついジックリ眺めていたら、目の前の手の平が隣から伸びてきた手にぺしっと払いのけられた。
驚いた顔の大器晩成君（一応クラスメイトだし名前は知ってる。）と仲間たちを無視して、飯尾が鞄を手に立ち上がった。なぜか私のリュックまで持ってる。
「帰ろ」
…………え。一緒に？？
