魔法図書館 楽しい夢
皆様こんにちは、魔法図書館の司書をしているユメと申します。
まだ名乗っていなかったので、この機会に名乗らせていただきました。
まぁ、私の名など気にしていなかったかもしれませんが。
そうだ、この間の彼女はどうなったでしょうね?
仲直りしてから返しにきてくださいと言いましたが、いつになるかは分かりませんからね。
少し気になっていたんです。
彼女に差し上げても良かったのですが、ここは図書館ですから。返していただかないと。
あっ、音がしました。
もしかしたら、彼女が来てくださったのかもしれません。
すみません、私はもう行きますね!
「お待たせしました。お求めはなんでしょうか?」
「本を返しにきました!」
「あら、この間の方ですね。ありがとうございます。そちらの方は?」
やはり彼女でした。
ですが、隣に見たことのない女の子がいます。
誰でしょうね?
「あっ、この子は私の友達です!こないだ話してた…」
「初めまして。紹介したいからと連れて来られました」
「そうでしたか。無事仲直りできたようで良かったです」
お友達でした。
ちゃんと仲直りしたから本を返しに来てくれたのですね。
良かったですね。
「あの、この子も悩みがあるみたいで…本を貸してもらうことってできますか?」
「はい、もちろん。どのような本をお望みですか?」
私は、彼女のお友達に聞く。
「怖い夢をみないで済む本が良いです」
「怖い夢、ですか…それなら—」
私は一つの本を飛ばした。
その本は、お友達の手にすっぽりおさまった。
「本当に飛んでくるんですね」
「そうですよ。そして、そちらが貴方がお望みになられた本です」
「なんだか可愛い絵ですね。それに、粉?ですか?」
「えぇ、その金粉を寝る前に手で撫でるんです。本の中だけを読んでも効果はありますけどね」
「なるほど。試してみます!この本を貸してください」
「はい。返却は、貴方がよい眠りにつけた次の日で。お待ちしております」
彼女達は、帰って行った。
ニコニコと笑いながら。
本当に仲がよろしいのですね。
彼女に渡したあの本。
それは私が幼少期に読んでいたものです。
まだ幼くて怖い夢をみると泣いていた私に、お母さんが読んでくれたのです。
そんな思い出があるあの本で、一人でも多くの方に笑っていただけるのなら幸いです。
魔法図書館ではいつでも、利用者の方の笑顔を最優先にさせていただいていますから。
次、彼女が返しにくる時には笑顔でいてほしいですね。
本日の魔法図書館はこれにて閉館させていただきます。またのご利用をお待ちしております——