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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
ILLUSIORY SERENE

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PRINCE'S DISTRESS

 今回もよろしくお願いします。

 ここで僕の一日のルーティーンワークを振り返ってみよう。


 AM5:00、僕起床。隣で寝ているラミィを起こさないように静かにベッドを抜け出す。顔を洗い、服を着替えて30キロランニング。ひたすら家の周りをぐるぐる走る。そして例の重すぎる大剣を振りまくる。


 AM7:30、水を浴びて汗を流したら朝食。専属の料理人が作ってくれるが、たまにラミィが手料理を出してくれることもある。時間の関係でゆっくり食べられないのは超ショック。


 AM8:30、授業開始。さり気なくアズラエルに付き添い、目を光らせる。Bクラス以下の生徒には課外授業として7:30から朝練があるが、Aクラスでは免除されている。学年にもよるが、2年生の授業内容は言語・数学のような一般教養の他に魔法の体系理論、魔法陣構築の実習、選択式の剣術/槍術/弓術など武術指南。


 PM5:00、授業終了とともに全力ダッシュで先生の家へ。PM9:00までみっちりしごかれる。


 PM9:30、ようやく家に帰る。ラミィにただいまのキスをするのを忘れずに。夕食を使用人たちも含めて全員で食べ、風呂に入る。傷口にお湯が染みてめちゃくちゃ痛い。


 PM11:00、就寝。日によってはラミィと寝る前に一戦。


 休日の場合は学校の部分がそっくりそのまま軍務に置き換わるか、一日中キリルと剣を交える。本当に休める休日は一ヶ月に2日あれば良い方だ。


 これ、僕が休める日ほぼなくないか?だが、こんな無茶苦茶な生活リズムでも1,2ヶ月続ければ嫌でも身体が適応してしまう。そんなこんなでようやく体が慣れてきた頃、僕らは3年生に進級した。


 * * *


「それじゃ、初め!」

 キリルの号令で僕は木剣を構え、まっすぐ突進した。いつものようにキリルは切っ先をまっすぐ構え、僕を捉えようと太刀筋を見極める。僕は剣が触れ合う直前に剣を地面に突き立て、それを支点にして急ターンしキリルの左側をすり抜け、その勢いで腰のあたりに斬撃を浴びせる。キリルは僕の剣をすくい上げるように剣を手首で回し、突きを繰り出す。空中で一回転して突きを躱し、曲線を描くように木剣を振るう。しかしキリルはそれを読んでいたかのように僕の進路上に剣を置くが、間一髪で避けて頭をめがけて渾身の一撃を放つ。片手剣で防がれたが、そのまま押し込んで木剣を振り抜いた。次の瞬間には僕の木剣もキリルのものも刃の部分が粉々に砕け散り、僕はそこで力尽きて地面に倒れ込んでしまった。

「キッツ・・・」

 思わず口からこぼれる。

「だが、魔法に頼らずともかなり動けるようになっているじゃないか。その調子だよ、イスラフェル」

「先生こそ強すぎますって…。一体どんな人に剣を教わったんですか…」

「ふむ…、僕より君のほうがよく知っている人だと思うよ?」

「…え?」

 そんな人、いるか…?

「ケルビム・フォン・ダブリス男爵、君のお父上だよ」

「……え?嘘でしょ?」

「今の今まで、僕は一度も師匠に勝ったことはないよ。それほどダブリス男爵は強い。なんであんな閑職に甘んじてるのかわからないくらいにね」

 でも確かに、僕は父さんが剣を持つところを殆ど見たことがない。実の父親なのに実力を全く知らないのだ。今度聞いてみるか…。


 * * *


 来る日も来る日も僕は剣を振り続けた。自分にこんな胆力があったのかと驚くほど振り続けた。

 アスターテには珍しくはっきりとした四季がある。季節は巡り、アスターテは初夏を迎えた。


 * * *


 おかしい。ふと、僕は毎朝飛んでくる伝書鳩の知らせのかごを見て思った。ダゴン王国、特に王都アケメネス周辺に潜伏しているはずのレイヴンからの定期報告がこの一週間途絶えている。

 鳥型の魔物を調教して使っているのがこの世界の軍用鳩だ。普通の鳩よりも知能が高く、体力もスピードもある。その伝達スピードと正確性は恐るべきものであるが、それでもアル=イスカンダリーヤとアケメネスの間の1500キロ弱を飛ぶには最低でも5日ほどかかる。そう考えると、ここ1、2週間の間にアケメネスで何かあったと考えるのが自然だ。とりあえずレーレライに報告しておこう。


「おおイズ、ちょうどよかった。君に用があるんだ」

 レイヴンの隊長室に入ると、レーレライとヴァサーゴが大きな地図とにらめっこしていた。他でもない、ダゴンの地図だ。

「端的に伝える。___ダゴン王国で反乱が起こった」

 レーレライは僕に資料を寄越しながら説明を続けた。

「2週間前、ダゴン国王アーキム・フォン・ダゴンが病死した。順当に行けば王位継承者は本来第一王女クリスタのはずだったが、大将軍ザイード・フォン・ハルブと組んだ王弟アーディルが軍を率いて王位を簒奪しようとしている。すでにアケメネスと周辺の主要都市は王弟派に制圧されているらしい」

 なるほど、その混乱に巻き込まれて潜伏レイヴンが鳩を飛ばせなかったのか。

「長い間政治から遠ざけられていたアーディルに関しては情報が少ないが、アスターテに対して友好的ではないのは間違いない。このままアーディルが擁立されれば確実にアスターテとの全面戦争になる」

 僕はふと、ダゴンの地図に目をやった。国の南半分の城には『陥落』を意味する赤いピンが刺されている。

「どうやらクリスタはアケメネスからは出ていないようだが、潜伏に徹しているらしく我々でも居場所を掴めない。そこで君の任務は…」

 レーレライもヴァサーゴも次から次へと届けられる書類に素早く目を通している。

「クリスタ王女御一行の救出。いち早くアケメネスに潜ってもらいたい。ホードヌイ将軍の軍を国境沿いのルクソール城に待機させるから、そこにお連れするといい」

「ホードヌイ将軍は、ルクソールではなくアル=イスカンダリーヤで待機をしていただいたほうがいいと考えます。高速飛行中はルクソールとアル=イスカンダリーヤの間は数秒で移動できます。なので城塞機能が心もとないルクソールよりもアル=イスカンダリーヤでクリスタ殿下をお迎えしたほうが安心できると思われます」

「わかった、将軍に伝えておこう。とはいえ、現状アケメネスがどうなっているか全くわからない。そんなところに大事な部下をたった一人で向かわせるわけにもいかないから…、イズ、高速移動中に何人運べる?」

「準備をすれば10人くらいは運べますが、追加装備無しで移動するなら超音速飛行時の衝撃と高熱に耐えられる人でないといけません」

「ならばちょうどいい。彼女を連れて行け」

 レーレライが指を鳴らすと扉が開き、一人の女性軍人が入ってきた。

「ソフィ・ローズ二等魔術士官、入ります」

 …ん?なんか聞いたことある名前だぞ??

「君も知っているだろうが、彼女の結界術を破れるものは存在しない。護衛戦が想定される任務だから呼んだのだが、案外君の特性とも合致しているらしいな」

 そこにいたのは、紛れもないAクラス担任のローズ先生だった。

「それと、相談なんだが…」

 それまでずっと資料ファイルとにらめっこしていたヴァサーゴが口を開いた。

「反乱の話を聞いてから、息子が「自分が行く」と言って聞かないんだ。イスラフェル、どうすればいいかなあ…」

「そのままアスターテに残されても、アズラエル殿下はご自分でダゴンへ向かってしまうのではないでしょうか。殿下ご自身の実力は陛下もご存知のとおりですし、それならばむしろしっかりした部隊とともにアケメネスに潜入していただいたほうがいいのではないでしょうか?」

「そうだよなあ、お前もそう思うよなあ…」

 ヴァサーゴは苦悩で顔を歪める。息子を好きにさせてやりたい気持ちと親として子を心配する気持ちが葛藤しているようだ。

「よし、アズラエルに関してはお前に任せる!」

「と、いいますと…?」

 ま、まさか…、連れて行けとか言わないよな…?

「イスラフェル、君なら安心して息子の警護を任せられる!アズラエルを連れて行ってくれ!」

 ウソだろぉ…。まあ、気持ちはわかるが…、まあでも、うん、行けなくもないか…。

「あ、一応皇太子殿下と接するときは鎧モードで頼むよ」

 レーレライが補足する。僕に拒否権はないらしい。

「ハッ!」

「ならばすぐ発ってくれ、一刻も早くアケメネスの状況を知りたい」

「「ハッ!」」

 ローズ先生と僕は連れ立って部屋を出て、そのまま王宮に向かった。

 読んでくださり、ありがとうございました。


 何が「恋人たちの祝日」だ、クリスマスにはシャケを食え。

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