BE WITH YOU FOREVER
今回もよろしくお願いします。
* * *
「はあ…言っちゃったよ…」
帰りの馬車の中、ラミィが冷や汗をかきながら呟いた。
「私、一族と離縁なんて薄情者とか思われないかしら」
「冷遇されてもなお家族のことを想うのは、僕は少し優しすぎると思うけどな。でも、それも君のいいところだよ」
僕はラミィに向き直った。
「とはいえ、これで僕らは婚約者同士だ。これからもよろしくおねがいします」
ふふ、と微笑んでラミィも僕と向き合うように体を横に向けた。
「こちらこそ、不束者ですがよろしくお願いします」
そして僕らは顔を近づけ、唇を重ねて___
「ん゙ん゙っ゙!」
マイロさんの咳払いでお互い我に返り、顔を真赤にしてしまった。
次の登校は寮からではなく、新しい我が家からだった。全体的な修理は僕が創造神と草木魔法でサクッとすませ、ナハト・クリーフェン城から10人ほど使用人に来てもらって引っ越しを終えた。
「あれ?今日ってもしかして…」
「ええ、本日2月19日は旦那様の17歳の誕生日でございます」
皆引っ越し祝いにしてはやけに大きな宴の用意をしているのでラミィが使用人の一人に聞いてみた。
「僕はあまり大きなお祝いはいらないって言ったんだけど…まあ、皆で楽しむのも悪くないかなと思ってね。引っ越し祝いも兼ねてご馳走を出すことにしたんだよ」
「何よそれ!私聞いてない!」
「まあ、別に必要ないかなって…」
「必要大有りよ!なんで教えてくれないの!何も用意できてないわ!」
「まあまあプレゼントとかは良いから、今日は心置きなく騒いでね」
「もう…!」
ラミィはかなり怒っているようだったが、大広間に出されたテーブルに並べられる食べ物を見てなんとか落ち着いてくれたらしい。
「イズ、来たよ〜って、なんか豪華すぎない?」
アズラエル、ジブリル、そしてクリスティーンがフードを被って入ってきた。
「今日、イズの誕生日だったらしいんですよ!」
「「「えっ(以下略)」」」
ラミィの一言に全員が固まる。
「あれ、従者の方々はいらっしゃらないのですか?」
「だって引っ越し祝いって聞いたからあまり大勢で来ても迷惑かなって…」
「まあ、それほど大きくない建物ではありますしね」
「じゃなくて、いつもお世話になってるし何かしらプレゼント用意しなきゃじゃん!」
それからはラミィと同じような小言を一通り浴びせられた。
「まあまあ、うちの腕利きの料理人たちがこだわりの料理を用意してくれましたので、まずは食べましょう」
「それもそうだね」
大広間に広げられたいくつもの長机はすべて白いテーブルクロスがかけられ、その上に丁寧に料理の盛られた大皿が並べられている。使用人たちや客人たちもそれぞれ思い思いの料理を取り始めた。半分ほどは王都周辺で手に入る肉や野菜を使った料理だが、ナハト・クリーフェンから送られてきたサーモン、タラ、カキ、エビが輝きを放っている。そしてその中央にはテル・エル・アマルナの米で作られたおむすびの山がいくつも積み上げられている。
「これは何だ?米かい?」
ジブリルは物珍しそうにおむすびを見つめている。
「ええ、テル・エル・アマルナで収穫された米を炊いて握った「おむすび」でございます。こちらの山はイクラの醤油漬け、こちらは牛すじ煮込み、こちらは米に青のりと天かすを混ぜており、こちらは中身のない塩むすびとなっております。お手でそのまま取ってお召し上がりください」
料理人が意気揚々と説明をする。
「どれもうまそうだ!イズのおすすめはどれだい?」
アズラエルが取り皿を構えてどれを取ろうかと見回している。
「どれも抜群に美味しいですが、私はイクラが好きですね。ふつうイクラは冬になると味が濃厚になる代わりに皮が固くなってしまうのですが、ナハト・クリーフェンでとれるイクラは真冬でもそれほど皮が固くならないので優しい口当たりになります」
僕が説明し終わらないうちにアズラエルはイクラのおむすびを手に取り、勢いよく頬張った。
「すごい、何だこれ!」
それもそのはず、王都では米はほぼ出回ることがない。王族であるアズラエルでさえ殆ど食べたことはないだろう。
「皆早く食べな、これうまいぞ!」
興奮した様子でアズラエルが皆を急かす。手づかみに躊躇していたジブリルやクリスティーンもおむすびを食べ始める。するとすぐに手が止まらなくなり、おむすびの山はどれも小さくなってしまった。
僕もイセエビの丸焼きと牛肉のステーキをとり、食べ始めた。
「おう、ようやく雑務が片付いたよイスラフェル」
パーティーも中盤に差し掛かろうとしていたときに大扉を開けて入ってきたのはレーレライだった。僕を含めた軍関係者はその場で取り皿を置き、敬礼をした。
「いや、いい。私も非番で来てるんだ。楽にしてくれ」
「「「はっ!」」」
「それはそうと、うまいご馳走をタダで食べられると聞いて来てみたんだが」
「もちろんです!」
使用人の一人がレーレライに取り皿を渡し、料理の説明を始めた。一通り料理を食べた後、僕はレーレライに話しかけてみた。
「お忙しい様子でしたので、まさかいらっしゃるとは思いませんでした」
「非番なのに仕事をやらされる労働量ってどうなんだよ…。あと、このカキうまいな」
ワインを味わいながら、レーレライはカキの炭火焼きを食べている。
「こんなうまいものがとれるなら、私をナハト・クリーフェンに住まわせてくれよお…」
「私達が肩代わりできる内容の仕事があれは良かったのですが…」
「ああ、気遣いありがとうな。でも料理がうまいから明日からも頑張れそうだ」
「よろしくお願いします」
そうして夜は更けていった。レーレライなど一部の酔いつぶれた大人たちは今日は屋敷の客間に泊まっていくらしい。その他の客が皆帰り、撤収作業もすべて済んだ後、屋敷は再び静寂に包まれた。
「ねえ、今いいかしら?」
夜、ベッドで横になって本を読んでいるとラミィが僕の部屋を訪ねてきた。時間的にはもう10時を回っているはずだ。
「うん。どうしたの?こんな遅くに」
「その…誕生日プレゼントなんだけど」
「いやいや、大丈夫だよ。気持ちだけで」
「いや、そうじゃなくて…!」
静かに寝室の扉が開き、ラミィが恐る恐る入ってきた。素肌が透けるほど薄いレースのネグリジェしか着ていない。
「え…?」
僕は驚きのあまり読んでいた本を落としそうになってしまった。
「…誕生日プレゼント、私じゃ…ダメ、かな…?」
「…本当に、良いのかい?」
「うん…」
ラミィは僕のシャツを脱がせ、自身も下着を脱いだ。僕と向き合うように膝に座り、手を僕の首に回して舌を絡めさせるようなキスをした。僕も彼女の柔らかい肢体を支えるように背中に手を回し、その豊かな胸に触れて濡れたラミィの身体を確かめるかのように愛撫する。
「もう、我慢できない…」
吐息混じりに彼女は耳元でささやき、もう一度僕に口づけをしてそのままベッドに倒れ込んだ。ラミィは頬を赤らめながら僕を受け入れ、小さく喘ぎながら腰を動かし始めた。
今日、僕とラミィは眠れない。
読んでくださり、ありがとうございました。
本日(この回を投稿した)11月7日は、私霧島宇宙の18歳の誕生日です。もうすぐ「高校生」という貴重なステータスが失われることを惜しみつつ、成人という責任を自覚しながら今後とも学業・芸術に邁進していく所存でございます。どうかこれからも「Notice-code:Ω」シリーズをよろしくお願いしたします。
ちなみにイスラフェルの誕生日の2月19日は、ニコラウス・コペルニクスの誕生日からとってます。




