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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
ILLUSIORY SERENE

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BACTERIA

今週もよろしくお願いしますお願いします。

 呼吸を整えろ。血流を遅らせて毒が全身に回るのを防ぐんだ。

「おい、イスラフェル!!大丈夫か?!」

 サフローノワが駆けつけてきたが、「遅かったか」というような表情だ。泣きそうな顔で必死に僕の脈を確認したり、僕の口元に顔を近づけてまだ呼吸しているか確かめたりしている。だけど、僕は大丈夫だ。まだ死んでいない。

「…3分」

 僕は今にも消え入りそうな声を喉からひねり出した。

「3分だけ、作ってください」

「…わかった。3分でいいんだな」

 サフローノワはフォラスに向き直り、剣を構えた。


氷獣の咆哮(フロスト・ウルフ)

 辺りの気温がぐんと下がり、サフローノワの足元に氷が張り始めた。そこから這い出るように氷の狼が数匹飛び出してきて、冷気を撒き散らしながら今にもフォラスに噛みつかんと走っていった。

 彼女の固有魔法”雪月花”は、まるで生き物かのような正確な氷のコントロールを可能としている。氷を操作するだけでなく、大気中の水分を凍結させて冷気を作り、武器にすることもできる。

「一度見た術くらいは見切れないと君の前で魔術師なんて名乗れないよな、イスラフェル。3分耐えられたら後で褒めるくらいはしてくれよ」

 彼女のそばで横たわり毒の分解に専念する後輩を見てそうつぶやき、狼のコントロールに専念する。狼たちはフォラスの剣を避け、腕に噛みついた。その噛み傷からじわじわと腕が凍るのを見たフォラスは迷わず腕を切り落とし、すぐさま再生した。まさに人類の魔法を超越した芸当だ。

 フォラスはすかさず毒の霧をサフローノワに向かわせたが、サフローノワは霧を丸ごと凍らせてしまった。

 イスラフェルの脇腹にあったのは刺し傷、つまり彼に重症を負わせたのは近距離戦だ。距離を取って戦うべきだろう。氷の槍を何本か投げつけて更に距離を取る。格闘戦は狼で対応し、自分は遠距離でトドメの一撃となる攻撃を狙う。しかしフォラスの動きは凄まじいの一言に尽きる。槍は簡単に避けられてしまうし、狼のスピードにも余裕で対処してくる。こうなったらあれをやるしか無い。

雪原の巨獣(ブリザード・マンモス)

 足下の氷原から巨大な氷のマンモスの群れを作り出す。尋常ではない魔力消費を代償に強大な破壊力を持つ氷獣を呼ぶサフローノワ最強の切り札だ。

 マンモスの群れは周りにある木や岩を全てその冷気で凍らせ、粉砕してフォラスに突っ込んでいった。これには流石にフォラスもたじろぎ、上空に跳躍して躱そうとした。しかしサフローノワはそれを読んでいた。というより、そう仕向けていたのだ。

 サフローノワは剣を芯にして巨大な氷の刃を作り出し、横に薙ぎ払うように振り抜いた。しかし、その刃は途中で大きな音と共に止められてしまった。フォラスは指先で氷の大剣の刃をつまみ、その力だけで止めたのだ。

 サフローノワがたじろいだ隙に恐ろしいほどのスピードでフォラスが突進してくる。氷の壁は…間に合わない。

「ああイスラフェル…3分くらいは…稼げたかなあ…」

 死を覚悟したサフローノワはそっと目を閉じた。その大きな目からこぼれた一雫の涙が、冷気で氷の結晶となって砕け散った。

 しかしその瞬間切り刻まれたのは彼女の体ではなく、フォラスの腕だった。

「3分24秒、ありがとうございます…!」

 イスラフェルがサフローノワを優しく抱きかかえ、毒の刃から救い出したのだった。


 * * *


 僕は意識が朦朧としながらも必死に頭を回転させ、起死回生の一手を掴もうとしていた。テトロドトキシンには解毒剤が存在しない。しかし体内から排出する「解毒」は出来なくても、毒性を弱める「無毒化」なら理論上は可能だ。ただしあくまで理論上、本当に使えるかはわからない。

 テトロドトキシンはナトリウムチャネルと呼ばれる細胞内のタンパク質と結合し、ナトリウムイオンを締め出して電気信号を遮断することで神経を麻痺させる。そこでテトロドトキシンの構造に合ったモノクローナル抗体を生成し、そこにテトロドトキシンを結合させるのだ。そうすればナトリウムチャネルに結合することはなくなり無毒化することができる。ただこれは僕の世界でも研究途上、というかほぼ研究されていない方法だ。だが、これに懸けるしかない。

 Y字型のモノクローナル抗体の構造をイメージし、その結合部位をテトロドトキシンの分子構造に合った形に書き換える。手のひらに魔法陣を起動して抗体を生成し、傷口から全身に行き渡らせる。

 途端に症状の進行が止まって徐々に視界がクリアになってきた。不整脈だったのが正常に戻り、だんだん手足の感覚が戻ってきた。よし、まだまだ動ける。

 ちょうどフォラスが剣をサフローノワに突き刺そうとしているところだ。いや、まだ僕なら間に合う。

超加速(ハイ・ブースト)

 瞬時に加速してSTVSを取り、二人の横から突っ込んでフォラスの腕を切り刻んでサフローノワを助け出す。

「3分24秒、ありがとうございます…!」

 そうサフローノワに言うと、彼女は疲労のあまり意識を失ってしまった。僕はサフローノワを近くに寝かせて再び加速し、フォラスと切り合う。

 ふと、一瞬フォラスの右腕の反応速度が悪くなった気がした。まさか、毒の剣と切り結んで刃にテトロドトキシンが付着した刀で切ったから傷口から毒が入ってしまったということか?まさか、毒使いなのに毒に耐性がないのか?いや、そういうことじゃない。おそらくフォラスの体内に入ったテトロドトキシンの量は合計約5グラムほど、人間に対する致死量の1000倍を超える。それだけ取り込んで腕の反応速度が少し鈍る程度だなんて、多少は効いてしまうにしても恐ろしい毒耐性だ。個人的に毒を使って敵を殺すのは嫌いだがこの場合は仕方がない。

物質創造ブラフマー・アーティファクト

 C6760H10447N1743O2010S32というあまりにも複雑な化学式を持つこの毒は、普段は小さな細菌が生成する食中毒を起こす程度の強さだ。しかしそれは細菌が持つ程度の量の話である。経口摂取した場合、この物質の致死量はテトロドトキシンの5000分の1にもなるほどだ。地上最強と言われるこの神経毒の名は…。

「A型ボツリヌストキシン、さ」

 僕はそれをSTVSにまとわせて構えを整えた。

「ボツリヌストキシンは1キログラムで全人類が2度絶滅するらしい。君にこれを打ち込んだらどうなるかな?」

 フォラスは臆することなく僕に突っ込んできた。おそらく彼はどんな毒でも生成することができる。しかし1ミリの何百分の1のサイズの細菌が持つ毒が最強だなんて想像もしなかっただろう。とは言え人間相手ならテトロドトキシンでも十分すぎるほど強い毒だ。間違いなく大きな脅威になる。

 だが、フォラスの動きはもう見切っている。突きをメインとしたスピード型のパターンだ。手数が少ないのは、今まで戦った相手が皆そこまで頭を捻らなくても楽に倒せるくらい実力差が開いていたからであろうか。

 とにかく、相手の攻撃はもう全て分かる。後はもう的確にカウンターを入れていくだけだ。

 ついに夏休みだああああああああああああ

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