AGE OF UPHEAVAL
「勝者、イスラフェル・フォン・レラティビティ!!」
学園祭の武術大会の表彰台の頂点、これで3度目だな。決勝の相手はもちろんアズラエルの班だ。お互いにチームメイトは変わっているが、それでも最後まで一歩も譲らなかった。
前々回に僕らが結界も含めて派手に会場を破壊してしまったので開催中止になると思っていたが、かえってローズ先生の闘争心に火を付ける結果となったらしい。翌年の大会のときには以前の15倍という凄まじい強度を持つ新型の結界を開発してきた。それで安全性にも問題ないと判断されて、翌年からも決行ということになったのだ。とはいっても、以前の強度でも結界を破れるのはアスターテ全体を見ても僕とアズラエルとあと数人だっただろう。
悪魔に関してはあれ以来なんの音沙汰もない。悪魔どころか魔物に関する事件も、破壊の眷属に関しても一切ない。そう、ちょっと怖くなるくらいになんの音沙汰もないのだ。レイヴンとしても依然として気を抜かずに護衛任務につく、という方針になったらしい。というわけで、僕がまともに休暇を取れるのはもう少し先になりそうだ。
とりあえず図書館のアクセス権は持っているので、賞金だけ受け取った。2年前の三等士官任官のときの報奨金にもロクに手を付けられずにいる。なにかお金の使い道を考えなければ。
「イズ、おめでとう!」
ラミィが僕を抱きしめる。彼女とはその後も順調だ。アスターテでは10代後半で結婚するのが普通だし、プロポーズも考えている。
「ああ、ありがとう」
僕もラミィを抱き返す。まあ、プロポーズどうこうも貴族という身分では双方の親の同意が必要だが、お父さんには「イズは次男だし、誰と結婚してもいいよ」というお墨付きをもらった。
アズラエルやその他の王族はあのあと念の為王都の城壁の外へ出ることを控えるようにという達しが出ていたが、あれから1年間何もなかったので外出禁止令は解除された。しかしその期間も公務は普通にあるので、僕がアズラエルの代理(”パシリ”と読む)で国中を駆け回っていた。さすがにレイヴンも皇太子直々の命令を覆すことはできず僕も振り回されっぱなしだったが、本人が僕を信頼してくれているからこその職務なので悪い気は全くしなかった。
「おめでとう、イズ。あなたはやっぱり強いわね」
リリーも執事を従えながらやってきた。最近はあまり会っていなかったが、元気そうだ。
残りの学園祭の期間も終わり、また通常授業が始まった。穏やかな日常だった。そんなときだった。
「赤いリボン…!」
学校の窓に、足に赤いリボンを巻いたカラスが泊まっていた。その瞳はまっすぐ僕を見つめている。これはレイヴン本部からの緊急連絡だ。赤いリボンはその中でも最上位、その意味は「遂行中の任務及び実行中の作戦をすべて放棄し本部に集結せよ」という意味だ。国家崩壊レベルの危機でもない限り、まず発令されることはない。最重要任務であるはずの皇太子護衛を放棄させてまで僕を呼び出すとは、このアスターテで何が起こっているんだ?急いで量に戻って胸にバッジを付けて軍服に着替え、タンスの下に隠していた本部への転送ポータルを起動する。いつものように一瞬落下するような感覚のあと、いつもとは似ても似つかないほど騒がしい本部についた。
「レラティビティ三等魔術将校が本部に」
誰かがそう声をかけたあと、全員が一瞬で列を整えて敬礼をした。
「皆、緊急招集をかけられたのか。何が起きているのか説明できるものは?」
「は。恐れながら、ルッツ・プロイセン二等前衛士官が報告いたします」
位置番前に居た大柄な男が話し始めた。
「現在、我が国は侵略を受けております。既に北の国境付近のオルレアン、シャプール、エル=マスリの3つの要塞が陥落したとの報告が入っております。このままでは3ヶ月以内に王都アル・イスカンダリーヤに到達する見込みです」
「敵は?」
「それが...魔物なのです」
「…は?」
「歴史上確認はおろかその存在が噂されたこともないような数の魔物の群れが、まるで有能な将の命令に従っているかのような動きを見せながら侵略を開始したのです。オルレアン要塞を落とした一群は総数推定2万、シャプール要塞とエル=マスリ要塞を落としたものは3万と推定されております。歩兵に当たると思われるのはヴェンタス・ライガー、その他陸上系の魔物で構成されております。そしてそれらを使役していると思われる個体がいくつか。いずれも...悪魔です。国民にもすぐに知らされ、周辺住民の避難が呼びかけられています」
「うん…正規のアスターテ軍の手に負える代物じゃないな。まともにやり合っても無駄に犠牲者を出し続けるだけだ。レイヴンが出るべきだ。アルマロス将軍は?」
「何分前例のない事件ですので、大隊長自らが既に前線で偵察や解析などの指揮を取っておられます。「何かあればレラティビティ三等将校を頼れ」と。したがって、現在王都周辺の各戦力はあなたの指揮下に入ります。ご命令をください」
「では私達も周りを調べてみよう。多少ヘビのいる藪をつついてしまっても構わない。詳細な情報がいる。近くに伏兵が潜んでいるかも知れないから、魔力探索だけでなく目視によって王城から半径10キロ圏内を虱潰しに探索するんだ。一本でも針が紛れ込んだ干し草では、恐ろしくてまともに寝れやしないからな。調査が終わったら、何があってもいいように国王陛下のお近くで待機だ」
「は!」
一瞬で全員が散り散りになった。
「さてと...」
僕は全速力で王城内にあるシルベライセン将軍府へ向かった。少し、準備することがある。
「シルベライセン将軍はおられるかい」
「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「イスラフェル・フォン・レラティビティ三等将校だ」
「わかりました。少々お待ちください」
そう言って受付係は席を外し、しばらくして帰ってきた。
「将軍がお会いになられるようです」
「ああ、ありがとう」
案内してくれるというので、そのまま受付係についていった。セキュリティと受付係が交代して僕をコルネリア・フォン・シルベライセン魔術将軍の執務室に付いた。僕はノックして中からの返事を待った。
「イスラフェル・フォン・レラティビティ三等将校です」
「いいだろう。入れ」
少し高めの女性の声だ。
「失礼します」
そこに居たのは普通の大人とはかけ離れた…ロリだった。




