STRAFE
今回もよろしくお願いします。
「じゃあ、また明日」
「うん」
僕はラミィの寮の部屋の窓までラミィを送り、別れの言葉をかけた。するとラミィは窓から乗り出して、僕の唇に軽くキスをした。
「おやすみなさい」
彼女は少し恥じらいながらも、幸福と充足感に満たされた満面の笑顔でそう言った。僕はラミィにもう一度笑顔を向け、寮の壁を蹴って空中に飛び出し自室に戻った。
「すごい1日だったなあ、色々と」
そう独り言をつぶやき、寝間着に着替えてベッドに潜り込んだ。
今は前世に戻ってやりたいこととか関係なく、ただこの国を、大切な人を守りたい。そのためにはまだまだ僕も力不足だ。もっと強くならなければ。
* * *
「イスラフェル・フォン・レラティビティ子爵のご入場です!!」
王城の大広間に大きな案内がかかり、豪華な扉が開いた。侯爵杖の授与式と勲章の授与式を兼ねた式典だ。玉座には、前に会ったときからは想像もつかないほどいかつい顔をしたヴァサーゴが座っている。やはり仕事モードというやつだ。その脇にはピカピカの勲章のバッジを付けたアズラエルとリリー、王妃カトリーナが座っている。入口で一度礼をして広間の中ほどまで歩き、跪いて礼をする。
「この度、卿は王国に仇なす悪魔セーレ、並びにデカラヴィアを討伐しこの国を救った。その功を称え、国王陛下が侯爵杖と一等勲章を賜られる」
「ありがたき幸せ、身に余る光栄です」
事前に打ち合わせられたやり取りを行う。ヴァサーゴと、杖とバッジが乗った豪華な盆を持った付き人が近づいてくる。
「表をあげよ」
「は」
ヴァサーゴにそう言われ、僕は立ち上がった。ヴァサーゴは僕に近づいて礼服の胸にバッジを付ける。そして杖を僕に手渡した。
「10代の少年にバッジを付けたのはこれで2つ目だ。これからも頼んだぞ」
そう耳打ちされ、僕も一言コメントした。
「私なんてまだまだ若輩者です。ですが、皆様のお目に叶う魔術士になれるよう努力します」
ヴァサーゴは一歩下がり、僕は最敬礼をした。
その後、僕らは別の広間に通された。そこでは既に宴の準備ができていた。
「さて皆様ご一緒に、この度の悪魔討伐を祝しまして乾杯!」
酒の音頭を取るのは宮内庁長官のオリヴァー・フォン・ブラウン侯爵。二言三言話したことがあるが、なかなか気さくでいい人だった。今回も「まだ若いのに、頑張ったなあ!」と声をかけてもらった。しかし、国王のそばにいるだけあって武の道でもなかなかに名の知れた人らしい。
「私のほうが緊張しちゃったよ、イズ!」
一通りの社交辞令を済ませたあと、ラミィが話しかけてきた。
「僕だって内心とてつもなく緊張していたさ。なんてったって国王陛下の御前だからね」
「それもそうね」
その後僕らは手を繋いで軽食を取りに行った。その姿を危うい目で見ているものが居るとも知らずに。
* * *
「さてと...」
僕はベッドから起きて、大きく伸びをした。今日は護衛任務が非番で、何より休日だ。
「…やるか」
やることといえば、吹雪の強化だ。前回のセーレ・デカラヴィア戦で、スーツに関して致命的というか大きな弱点を見つけた。僕は本来の戦闘スタイルがスピードを活かした一撃離脱というのもあって、デカラヴィアの分身攻撃を受けた時は実際かなりやばかった。即興の魔法でなんとか対処できたから良かったが、あのまま物量で押し切られたら持久戦ではおそらく僕が先にダウンしていただろう。
とにかく、今僕に足りないのは広範囲制圧能力と中距離射撃戦能力だ。それも僕自身の魔法に頼らない武器だ。推進剤を作りながら旋回機関光弾まで起動するのは流石に辛い。正直一個人としては僕は今でもアスターテ最強レベルなのだと思うが、相手は人智を超えた魔法を使う悪魔たちだ。なにか備えていても足りないということはない。
部屋の真ん中に魔法陣を展開してホログラム映像を投影する。最近開発した魔法、幻影だ。いちいち紙に書くのもめんどくさいので、ある程度の強度を持つ物質、例えば金属片のようなものに立体映像を封入する魔法を作ってみた。流石に完全に実物と見分けがつかないというわけではなく、多少は向こう側が透過してしまったりして「あ、映像だ」とわかりやすいので戦闘時にデコイに使うことはできないが、何かを設計したりするときの補助には十分使いやすい。
吹雪の映像を投影してターンテーブルのように回してみる。
「まずは…ここだな」
前腕部、肘の付け根に近い部分。回転機構のあるリングを追加する。そこに旋回機関光弾の術式を組み込んだ魔力鉱を取り付ける。後でヘルメットの内側に追加する音声認識機能を通してこのリングを起動すると、内部構造が展開して魔力鉱が露出される。そこに魔力が通って術式が起動し、魔力光弾を打ち出す仕組みだ。
あとは、背中の装備だ。とりあえずホログラムから既存のハイパーソニック・ブースターを取り払う。そして腰のあたりに出力を落として小型化したブースターを取り付ける。仮に自重を100kgとした時にギリギリ音速を超えるか超えないかの出力だが、飛行するには十分だ。そして今回の装備の要、ミサイルランチャーと増槽タンクだ。
ミサイルは、平たく言うと内部が空洞になった魔力光弾だ。魔力光弾そのものに爆発などの機能はないため、破壊力を出すために空洞にニトログリセリンを充填する。推進剤を生成するブースター基部でニトログリセリンを生成し、流出経路を変えてランチャーに回して魔力光弾に充填する。その間推進剤が作れないが、そこをあらかじめ推進剤で満たされた増槽タンクから推進剤を回して補填するのだ。正直このブースターは尋常じゃないほど燃費が悪いので、このタンクの容量では数十秒も持たない。そこで、ブースターを低出力化したため通常時に余剰になる推進剤を常にタンクに補充し続けることにした。この機能のせいでパージして軽量化できるという増槽タンクの長所は潰れてしまったが、元から機動力を突き詰めた装備ではないので良しとしよう。
ランチャーは長辺が60センチほどの直方体の設計だったが、両肩にこれが載っかるとなると流石に空力抵抗が気になってくる。その点に関しては、外装を新幹線用車両のノーズのようなデザインにして抵抗を減らした。
ランチャーの根本と元来装備していた大きなブースターの根本にアタッチメントを付けて、転送魔法でそれぞれの装備をその場で換装して使い分けられるようにしよう。一応差別化のために従来の装備をラディウス装備、新しい装備をストレイフ装備としよう。それぞれラテン語で「光線」と英語で「掃射」を表す単語だ。もうここまで改造したら、完全に別物だな。吹雪マーク2に改名しよう。
さて、あとは転送装置とスーツの本体があるナハト・クリーフェン城で本物のスーツに改造を施すだけだ。
呼んでくださりありがとうございました。
白状します。ガンダムSEEDのストライカーパックをパk...オマージュしました。まあ、普通に考えてもストライカーパックってめっちゃ合理的なシステムではあるんですよね。いつかは必然的に似ちゃうからまあ大丈夫かと思って「〇〇パック」という呼び方を(勝手に)使わせてもらいました。




