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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
STAND UP

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25/51

HALE-BOPP

 今週もよろしくお願いします。

 * * *


「彼は予想以上だったよ、アルマロス三等将校」

 夕暮れの国王執務室で、男女の人影が話し合っている。ヴァサーゴ・フォン・アスターテとレーレライ・アルマロスだ。

「ええ。私もそう思っています、陛下。彼には強大な力があります。それも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もしも世界中の国々が戦争を始めたら、最後に勝つのはレラティビティ一等士官を従えた国だと思います」

「まあ彼自身の実力もそうだが、真に恐ろしいのはその中身だと思うね。私がここ15年で初めてチェスで負けたよ。私は絶対に彼を敵に回したくはない」

「まさか…」

「本当さ。神のような手を指してきたよ」

「…陛下は、彼をどうなさるおつもりなのですか」

「そうだねえ…とりあえず今は、彼を自由にしておきたい。貴重な10代の時期を軍務だけに溶かしてほしくないからね。ただ、彼ほどの人材をみすみす他国に流すわけにもいかない。今回の三等将校位授与は、レラティビティをアスターテに繋ぎ止めておくための鎖みたいなものだ。レラティビティには引き続きアズラエルの護衛を任せておいてほしい」

「了解しました」

 レーレライは部屋を出ていった。

アスターテ(このくに)も、そろそろ新世代の星たちに託すべきかな。なあ、アルジェナー」

 部屋で一人になったあと、ヴァサーゴは夕日に向かってそう呟いた。


 * * *

「ねえ、彼とはどうなったのよ」

 授業の合間にクリスティーンが目を輝かせながらラミィに迫ってきた。

「へ?!か、彼って?!」

「イスラフェルよ、イスラフェル。あなた、イスラフェルが好きなんでしょ」

「な、なんで知ってるんですか?!」

「周りから見ればバレバレよ。ラミィ、いつもイスラフェルと話すときだけはすごい笑顔だもの」

 ラミィは返す言葉が見つからず、目を泳がせている。

「ほら、なに悶々としてんの。早くしないと誰かに取られちゃうかもよ」

 そう行ってクリスティーンはイスラフェルを指した。いつにもまして、それも様々な学年の女性に囲まれたイスラフェルの姿があった。

「私の見る限り、多分イスラフェルの気持ちも間違いないとは思うんだけどなあ。イスラフェルは感情があまり行動に出ないタイプだからね」

「…もし断られたら、私はどうすれば良いんでしょうか」

「誰が断られること前提で告白しに行くのよ!早くくっついちゃいなさい!善は急げって言うでしょ!」

 少し強引なキューピッドが、ラミィの背中を力強く押した。


 * * *


「ちょっと、夜の散歩をしませんか?今日は今来てる彗星が最接近すると言われている日ですし。王城の裏の山、意外と穴場なんですよ」

 夜8時過ぎ、突然ラミィが僕の部屋を訪ねてきた。

「こんな時間に外出したのが見つかったら大目玉ですね」

「大丈夫です。私の固有魔法、忘れたんですか?」

「…そうですね」

 ラミィが彼女自身と僕に蜃気楼(ミラージュ・オーラ)を発動し、姿を消した。どうやら、透明化している同士なら認識できるらしい。

「裏山でしたよね。少し僕に掴まっててください」

 僕はラミィの細い肢体を抱え上げ、窓を開けて飛び出した。

加速(ブースト)

 身体強化を起動し、建物の屋根の間を空を飛ぶように駆け抜けて裏山を目指す。

「す、すごい!すごく速い!」

 これほどのスピードで移動することなんてない。ラミィも興奮しているようだ。

「あそこですか?」

 王城を少し通り過ぎたところに、古い城壁の一部が残る丘が見えた。

「は、はい!」

 僕はその城壁の遺構の内もっとも崩れにくそうな部分を選び、ラミィとともに降り立った。

「…きれいだ」

 今夜は月が出ていない。街明かりの中から外れ、周りに街灯もないこの場所は絶好の星空観察スポットだ。僕もそう呟いてしまうほどの満天の星空が、そこにはあった。

「あれがドラゴン座、あれが聖剣座、あれがうみへび座ですね!」

 ラミィが楽しそうに星座を探している。もちろん僕の知っているものとは全く違う。しかし僕が見ていたのは星座ではなく、()()だった。

「今日の彗星は魔導書座の方角なので、あっちから登りますね」

 ラミイが東北東の空を指した。

「あともう少しで、彗星が顔を出すと思いますよ」

 持ってきた星図と格闘しながらラミィがそう言った。

「少し待ちましょうか」

 僕はラミィに近づき、その隣に立って夜空を眺めていた。


「はじめは、一目惚れでした」

 しばらく経った頃、ラミィが話し始めた。

「でも、だんだんイスラフェルくんの人柄に惹かれていきました」

 声が少し震えている。

「すごく合理的だけどその根っこはどこまでも他人に優しくて、自分の強さに自惚れること無くその力を全く知らない誰かのために使おうとする、みたいな」

 ラミィは息を整えるために深呼吸していた。

「そ、その、なんというか…」

 みなまで言わせるほど僕も野暮じゃない。最後の一言は、僕が補うかのように囁いた。

「愛してる」

 そう行って僕はラミィを抱きしめた。ちょうど、彗星の尾が顔をのぞかせ始めていた。ラミィは一瞬驚いた後に僕の首に腕を回した。

「私も、愛してる」

 そのまま見つめ合い、やがて二人の顔が近づいた。そして、まるで静かに雪が積もるかのように優しく唇が重なった。流星群は最高潮に達し、夜空は僕達を祝福するかのように明るく大きなほうき星を流していた。少し不慣れで不器用な、刹那であり永遠のようなそれは、決して違われることのない誓いのキスだった。

 呼んでくださりありがとうございました。


 今週はどうしてもこの部分で終わらせたかったので、少し少なめになっています。やっぱりイスラフェルのキスシーンの描写には悩みました。主人公に合うような美しい景色を色々考えて、今年1月に最接近したアトラス彗星がとても強く浮かんだので星空をバックにすることにしました。


 今回の解説は、アスターテ王国軍の階級制度についてです。


 まずアスターテ軍では兵士を前衛科、弓術科、魔術科、情報科の4つの兵科に分けています。

 前衛科は剣、斧、槍などを使って最前線で戦う兵科です。弓術科は文字通り弓の扱いに長けた弓兵で、魔術科は魔法攻撃を主な戦法としたオールレンジ・アタッカーといったところでしょうか。情報科は敵地の偵察や情報工作など、諜報活動をメインの任務に据えています。それぞれの兵士の得意分野で兵科を分けているだけなので、作戦内容が特殊な情報科を除いて一つの小隊に様々な兵科の隊員が居ることがほとんどです。


 階級は次のとおりです。

①前衛科 三〜一等前衛兵、三〜一等前衛士官、前衛将校補、三〜一等前衛将校、前衛将軍

②弓術科 三〜一等弓兵、三〜一等弓術士官、弓術将校補、三〜一等弓術将校、弓術将軍

③魔術科 三〜一等魔術兵、三〜一等魔術士官、魔術将校補、三〜一等魔術将校、魔術将軍

④情報科 三〜一等諜報員、三〜一等情報士官、情報将校補、三〜一等情報将校、情報将軍


 この全ての兵科のすべての兵士を束ねるのが、王国軍総帥たる大将軍です。イスラフェルは現在一等魔術士官で、これから三等魔術将校に上がるところですね。


 次回もよろしくお願いします。

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