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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
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19/51

JUST LIKE TWO SWORDS

 今週もよろしくお願いします。

 * * *


「見つけたぞ」

 地面に点々と落ちている小さなビーズを見て、アズラエル・フォン・アスターテは呟いた。このビーズは連れ去られたダゴン王国王女・クリスタ・フォン・ダゴンがつけていたネックレスのものだ。

雷鳴の腕輪(ドラウプニル)

 周りに纏わりついていたダンダリオンの分身を範囲攻撃で薙ぎ払い、ビーズをたどる。おそらくこれは罠でもあるのだろう。アズラエルとイスラフェルを引き離すための罠だ。そのためクリスタが痕跡を残していることを知っていながらあえて見逃したのではなかろうか。彼自身、その事に気づいていながらも追跡を続けていた。

「イズを巻き込むわけにはいかないからね。これで、僕も本気を出せる」

 アズラエルはそうつぶやきながら、自分の走るスピードを上げた。彼を殺すのならダンダリオンはどこで迎え撃つべきか、アズラエルも大体検討はつけていた。ダンダリオンの固有魔法は分身。さっきまでは数体しか出てこなかったが、おそらくもっと大量の分身を作り出せるはずだ。それなら広い空間のほうが能力を発揮しやすい。このオウル要塞の中でそんな大きな空間がある部屋はただ一つ、大広間だ。

 アズラエルはビーズを辿って中央の玄関に出て、大広間へとつながる眼の前のとてつもなく大きな扉と対峙した。おそらく、ダンダリオンはこの向こうに居る。

 慎重に扉を少し開け、不自然なほど人気のない大広間の様子を隙間から確認する。誰もいない。彼は両手の剣を強く握り締め、足音を消し、ゆっくりと大広間に足を踏み入れた。広間の中ほどでビーズが途切れている。


___どこに行った?


 アズラエルはかがんで、途切れる直前の最後のビーズを拾おうと手を近づけた。


___なるほどね。


 そこで少し考えて、何かを思いついたかのようにビーズを手に取った。刹那、左手の剣を首を守るように後ろに回す。激しい金属音とともに魔剣とアンドロマリウスのレイピアが火花を散らしてぶつかった。

「ハハハ、全て気づいていたのですか!流石です!それでこそ殺し甲斐がある!」

「僕だってようやく本気が出せるんだ」

雷帝の槍(グングニル)

「…貴方だって、もうわかってるでしょう。私は分身を無限に作り出せる!」

 そういってダンダリオンの分身が5人、レイピアを構えて全方向からアズラエルに飛びかかった。

「もうわかってるよ。アンタ、分身に効果範囲の限界があるだろ」

「…!」

雷帝の槌(ミョルニル)

 自らに雷を落とし、周囲にいる分身を全て片付ける。

「まだまだ、私の魔力が尽きるまで分身は増え続ける!」

 アズラエルは一瞬息を整え、剣に魔力を集中させた。

断界の稲光(カラドボルグ)

 そう唱えた直後、刃が激しい稲妻を帯び始めた。アズラエルは全身の力を込め、上下に潰れたX字の軌道を描くように剣を振り抜いた。切っ先の軌道をなぞるように雷の斬撃が一つずつ生み出され、大量のダンダリオンの分身を切り裂きながらアズラエルを中心に広がっていく。

「僕だって強くなってるんだよ。イズに負けてから一日たりとも鍛錬を怠ったことはない。彼を、超えるために」

「それがどうした…!」

 少し焦った様子のダンダリオンがさらに分身を生み出す。

「範囲に限界がないなら本体はクリスタ殿を連れてとっくに要塞を出てるはずだ。たとえ目的がクリスタ殿ではなく僕だったとしても、万が一に備えて本体は要塞の外に居るんじゃないか?」

 分身からの剣戟をすべていなし、適切にカウンターを入れて撃破していく。

「そこの柱の陰、一つだけやけに魔力量が大きい個体」

「馬鹿な、人間ごときがここまで正確に魔力を感じられるわけ無い!」

 一歩ずつ分身を切り裂きながら確実に本体に近づいて、追い詰めていく。

「鍛錬を重ねるうちにいつの間にか身についたんだ。サバーニャ王家の家系能力”弦廻眼(げんかいがん)だ。”僕には“魂“が()()()…!」

 柱の陰からアズラエルの重圧に耐えかねたダンダリオンが飛び出てきた。脇には、もともと人質にするつもりだったクリスタが気絶した状態で抱えられている。

「不味い…ここは戦術的転身と行こう…!」

 広間の上の方にある採光用の窓を割り、逃げようとするダンダリオン。アズラエルはそれを走って追いかけようとはせず、この程度の悪魔ごときまるでいつでも討てると言わんばかりの威圧感を放ちながら、渾身の魔法の構築を始める。雷帝の槌(ミョルニル)なんかとは比べ物にならない、雷帝の槍(グングニル)を発展させた現時点での彼の最強の魔法だ。

「敵に背中を向けるなと、教わらなかったか?!」

 巨大な魔法陣を前方に展開し中心の一点に魔力を集中させる。金色の稲妻がほとばしり、周りのカーペットを引き裂いた。

雷神の大聖剣(エクスカリバー)

 ダンダリオンは分身を盾にして攻撃をしのごうとしたが、もう遅かった。余波だけで数十の分身を焼いた巨大な稲妻がいとも簡単に無敵とも言われる悪魔の防御魔法をを粉々にした。稲妻が刹那の余裕すら与えず本体に迫る。死に際の捨て台詞すら残すことも叶わずダンダリオンが稲妻に切り裂かれる。稲妻は尚も止まらず大広間の壁を打ち抜き、空を覆っていた雨雲さえ吹き飛ばした。最後には、焼け焦げた死体だけが残った。

 ダンダリオンが倒され、彼女を支えるものがなくなったクリスタが天井近くから落ちてくる。アズラエルは最後の力を振り絞り、クリスタと床との間に滑り込みクッションとなって彼女がけがをするのを防いだ。


 * * *


「ねえ、()()

 しばらくして目を覚ましたクリスタが、アズラエルに話しかけた。

「昔も何度かこういう事があったよね」

「ああ、君は昔から巻き込まれ体質と言うか不幸体質と言うか…。城の庭園で迷子になったり、猫を助けようとして川に落ちて溺れかけたり」

「やめてよ、恥ずかしい」

 クリスタは顔を赤らめながら応えた。

「でも、そのたびにあなたが助けてくれた。今だってそうよ」

 彼女の手がまだ小刻みに震えていた。

「本当に、ありがとう」

 アズラエルを抱きしめる腕に込める力が、少し強くなる。

「アスターテとダゴンの関係が修復されたら、また前みたいに一緒に過ごせるのかな」

 そこでクリスタは決心をするかのように一息置いた。

「アズ、ずっと前から、大好きよ」

「クリスタ…それって」

 アズラエルが言い切る前に、クリスタの唇が彼の唇を閉じさせた。まるで彼らを祝福するかのように、壊れた壁から暖かい光が差し込んでいた。

「僕も、キミが好きだ」

 アズラエルもクリスタを絶対に離すまいと言うように彼女の細い体を抱きしめた。そして、愛を確かめ合うようにもう一度キスを交わした。

 読んでくださり、ありがとうございました。


 今週は結構頑張ったんですけど、いかがだったでしょうか。戦闘シーンを書くのが楽しすぎて、本当はこの半分でおさめるつもりだったんですがこれだけで1話分になっちゃいました。もうちょっとバトルは続く予定ですんで、これからも頑張ります。

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