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今週もよろしくお願いします。
「ごきげんよう。アスターテの皆様」
ダゴン側の使節団の代表は、「可憐」という表現がよく似合う小柄な美少女だった。ダゴン王国第一王女クリスタ・フォン・ダゴン。16歳にして既にダゴンにおける外交を一任されているほどの才女だ。
「私達の呼びかけに応えてくださり、感謝いたします」
「こちらこそ、わざわざお越しいただきありがとうございます」
アズラエルと少し会話を交わしたあと、彼らは荷解きにかかった。雲行きが怪しいし彼らも早く仕事を済ませたいのだろう。会議は明日からだが、今日はもう武器をすべて持ち出さないといけない。だが保険はかけておこう。
「殿下、少しよろしいでしょうか」
「ああ、イズ」
「こちらを剣につけておいてください」
そう言って僕は紫色の宝石がついたリボンを収納魔法から取り出し、手渡した。
「ほんのお守りです」
「…ああ、わかった。大事にするよ」
少し考えたあとに、アズラエルは魔剣の鍔にリボンを結びつけた。これでちょっとだけ安心できる。それから僕らはそれぞれ武器を従者に渡して、要塞の中に戻った。
「軍隊なんて愚かなものは即位したらすぐにでも廃止したいくらいだよ。何ゆえ国家間の争いごとを血で解決しなきゃいけないんだ?」
その後アズラエルの部屋に呼び出され、ちょっとした雑談の最中にそんな話題が出た。
「…お気持はわかりますが、本当にそうでしょうか?」
「と、言うと…」
「片田舎の小国と大陸を股にかける大国、両者の間には決して覆せない決定的な差があります」
「経済力…いや、軍事力かい?」
「そうです。外交における力の差というのは国力の差、その直接的なバロメーターは軍事力です。そこで、すべての国の保有する軍事力を等しく均すのです。そうしたらお互いに手も足も出せなくなる。国境や貿易など、権益の取り合いもなくなります」
「でもそれは見せかけの平和だ。それなら世界を統一して、一つの政府が全体を支配した方が良いのではないかと思うよ」
「天下統一は修羅の道です。下手したら数百万人の被害者が出る。いっそ見せかけの平和でもできる限り維持していくのが一番良いですよ。そもそも本物の平和だって永遠じゃない。いつか必ず限界が来ます」
「確かにな…。それはそうと、君はたまにすごく大人びて見えるな。60歳くらいの老練な軍師のような…」
「あはは…そうですか?」
60歳は言い過ぎだが、そりゃあ精神年齢は実質35歳だからなあ。
「明日は頼むよ。もし僕がヘマしたら君がフォローしてくれ」
「殿下はヘマなんてなされませんよ」
「まあ、公平な停戦条件にするためにベストを尽くすさ」
「それでは、講和会議を始めさせていただきます」
マルクスを司会として会議が始まった。
「まず未確定区域の国境ですが、お手元の資料にあるとおり、アスターテ、ダゴン両者の主張されている国境の間の地域を面積で二等分し…」
もともと、事前の準備で両国の外交官たちが話をつけていた部分だ。僕らの仕事は決定した条約の内容についての最終確認をし、代表の名で調印をすることだけ。
〘こちらサヴォイア一等兵、現状異常なし〙
〘こちらエルメンライヒ二等兵、現状異常なし〙
隊員からの報告が逐次流れてくる。このまま何も無く終われば良いが…
…?
左側3メートル、魔力の歪み?まるでこれは…
「転送魔法…?!」
その瞬間空間が大きく歪み、赤い魔力とともに二人の人影が現れた。
「嘘だろ…?!こんな正確に、それも有機物を転送できるのか…?!」
「どうしたイズ!」
アズラエルが叫ぶ声が聞こえる。
「…敵です」
〘敵襲、敵襲!誰でもいい、すぐに要塞の本丸に来い!〙
赤い魔力の稲妻が飛び散る。
「皆様すみません、魔法の使用許可を!」
「ああ、僕が全責任を負う。頼んだぞ、イズ!」
押しつぶされるような高密度の魔力。というかその前に、圧倒的な生物の威圧感が襲ってくる。アンドロマリウスとは比べ物にならない。
「まず名乗り口上と行こうか。私はダンタリオンだ、短い間だがよろしく頼む」
中年の紳士の姿の悪魔が話し出す。
「セーレだ。お前がイスラフェルってやつか?一人だけ神みたいな魔力を出してたから、わかりやすかったぜ♪」
美男子の姿をした悪魔だ。
「…イスラフェル・フォン・レラティビティ子爵だ」
「まあ、少しは殺り甲斐がありそうだな。とりあえず死んでもらおう」
来る。まずはダンダリオンだ。
『転送魔法 ”瞬間移動”』
急いでSTVSを呼び寄せる。
「いざ…!!」
ダンダリオンが来る…!
それと同時にSTVSが転送されて来た。僕はその柄を掴み、無我夢中で水平に斬り伏せた。熱くなった刃がダンダリオンの心臓を正確に切り裂いた。
「甘い!」
後ろにもダンダリオンがいる。幻影魔法…いや、実体を持つ分身か?!僕はそのまま後ろにSTVSを振り抜き、ダンダリオンと距離を取る。
待て、クリスタを攫おうとしてるダンダリオンがいる。
「させない…!!」
脚力強化を100%開放し、すれ違いざまに三人目のダンダリオンの首をはねる。
「俺もいるぜ…!」
そのセーレの声とともに、突然体の自由が効かなくなった。と思った次の瞬間僕の体が天井、床、左右の壁に勢いよく叩きつけられた。
「ぐっ…念力の類か」
全身を強打して呼吸ができなくなり、一瞬息が詰まった。頭から血が垂れてくるのを感じる。
「殿下、これを…」
僕はすぐさまもう一度転送魔法を発動し、アズラエルの魔剣を呼び寄せる。まだ一回きりしか使えないが、あのリボンに付いた紫色の宝石は転送魔法のためのビーコンになっているのだ。
「わかった。僕は分身する方をやる。イズは念力の方をやってくれ」
アズラエルは魔剣を受け取るとすぐさま二振りとも抜き放ち、二刀流の構えを取った。
「わかりました」
「二人で仲良くお話かよぉ!」
セーレがそう言いながらまわりに飛び散った瓦礫を操り、僕らの方へ飛ばしてきた。僕はSTVSですべて切り刻んで、その間に詠唱を終わらせていた炎魔法を牽制として放ちセーレの懐に潜り込む。STVSを大きく振りかぶり、袈裟斬りをねじ込む。
「おっと、こりゃまずい♪」
まるでふざけているかのようにセーレが後ろへ飛び退いた。
〘隊長、到着しました〙
無線で連絡が入る。
〘よし。僕と殿下以外のすべての人を連れて、できる限りここから遠いところに逃がすんだ〙
〘了解〙
隊員たちの連携は的確だった。僕とアズラエルが敵を抑え込んでいる間に、素早く皆を逃がしてくれた。サヴォイアがゴレムを盾にしている間に、リュトビッツが姿をくらましつつ皆を連れ出す。よく練られたいい戦略だ。
〘隊長、まずいです。クリスタ殿下がいらっしゃいません〙
「はぁ?!」
リアルに声が出た。いないってどういうこと?彼女がこんな大事なところで一人脱走だなんて、そんな柄じゃないはずだ。考えられるとすれば、分身の一人を使ってこっそり脱出できるダンダリオンしかない。あいつはさっきもクリスタを誘拐しようとしていた。
「おそらく分身する方がクリスタ殿下を誘拐した!彼女なら、なにか痕跡を残しているはずだ。どうにか探してみる!」
「ああ、お願いします!」
アズラエルもその事に気づいて、僕に指示を飛ばした。クリスタがアスターテの領内で行方不明になったといえば真っ先に疑われるのはアスターテ王国だ。何としてでも助け出さなければ。
〘手の空いているものは、全員アズラエル殿下についていくこと〙
〘サヴォイア一等兵以下7名、了解しました〙
しかし、アズラエルならダンダリオンを倒せるかもしれない。事の顛末を見守っていたいが、僕もセーレの相手をしなければ。
読んでいただきありがとうございました。
ジークアクスの話ですが、マチュがハマーン様でニャアンがララアという考察を見て震えました。確かに時系列的にも登場人物の年齢的にも辻褄が合うし、ファイナルアンサーこれじゃね?と思ってまじで感動しました。そうすると、二人の間でシャアの取り合いが始まるのかな?僕もアニメのガチ考察ができるくらいの限界オタクを目指したいですね。
あと最初ジークアクスの立ち絵を見た時に個人的には「ちょっと無いかなあ」と思ってたんですが、エアリアルのときと同じくアニメで動き出すと急にかっこよく見えちゃうんですよね。今になってガンプラ買っとけばよかったと後悔してます。




