OUR TEAM
ご愛読ありがとうございます。
次々とクラス内でチームが決まっていく。それもそのはず、人に話しかけることが苦手なので、寄ってくる女性はいても目立った友達がいない。その寄ってくる女性も、最近はほとんどいなくなってしまった。アズラエルに聞いてみたが、「自分の戦績と鏡を見れば、何となくわかるんじゃないか?」だと。わからないから聞いとんじゃ。
そのアズラエルには、「君が強すぎて、同じチームじゃあまり燃えないからパス」と断られてしまった。ラミィさんも、もうすでにチームが決まっている。じゃあ、ダメじゃん。僕、チーム組めないじゃん!小学生の頃の「おともだちで二人組作ってね~→じゃあ、先生と組もうか~」のトラウマが、脳裏によみがえってくる。
「…イスラフェル君、僕のチームに入らないか?」
「!」
ジブリル・フォン・ルシフェルとクリスティーン・シュミットのチームだ。
「僕らじゃ、役者不足だったかな…?」
「!!…イヤイヤ、そんなことないですよ!ぜひ、よろしくお願いします!」
よかった…誘ってくれる人がいて、よかった…!!本当に…!!
「それじゃあ、早くチーム編成しに行きません?すぐに実技練習場も埋まっちゃうし」
「ですね。」
初めてクリスティーンと会話したかもしれない。それぐらいクラスの女の子とまともに話したことがないのだ。
実技練習場とは、とどのつまり作りが固い体育館だ。壁に魔法が当たっても結界で強度を確保してある。第1から第10練習場までと数は限られているが、生徒たちは届け出さえすれば自由に使うことができる。今回、クリスティーンは最も広い第10練習場を押さえてきたらしい。さすが大商家の娘、取引がうまい。
「じゃあ、まず手札の確認だな。それによって先鋒、副将、主将を決めよう」
「そうですね。じゃあ、僕からでいいかな?」
この場合、単純に強さの順に決めるのもありだが、チームの勝利条件は先に2勝を奪うことだ。つまり、主将戦を捨てて先鋒戦、副将戦で確実に2勝をとることでもチームとしては勝ちになる。どこに主戦力を入れるか決める順番決めの時点から、もう心理戦が始まっているのだ。
『加速』
僕は適当に壁を走ってみる。実はこの加速、対人戦でも相当強かったりする。攻撃魔法は、当てる対象があってこその攻撃だ。しかし、その攻撃を当てるターゲットが定まらないとなれば、ただの魔法の空撃ちに過ぎなくなる。つまり、相手の刃は自らに届かずとも、自らの刃は相手に届くようになるのだ。もちろん範囲攻撃で一気につぶされれば終わりだけどね。
「ふむ…次は僕だな」
ジブリルの魔法は、大自然だ。あらゆるところから好きな植物を強化して生やせる。
『パルテノキッソス』
なるほど、ツタか。壁、天井、床、あらゆるところから太い緑色のツタが生えている。待てよ、どんな植物でも…?
…イッヒッヒ、こりゃあ使えそうだ…!
「ちょっと、この植物生やせませんか?」
僕は収納魔法から植物図鑑を取り出し、いくつかの植物を指定した。
「ほう、イスラフェル君、これは…これはいけるぞ!」
「やっぱり、僕の思った通りだ」
ジブリル君の能力は、本人が思ってる数倍凶悪で強い。個人でも優勝できそうなくらいだ。
「じゃあ、次は私ですね」
クリスの固有魔法障壁は、簡単に言えばより柔軟性の高い結界魔法だ。自分の肉体の表面に結界を張り、四肢の可動範囲を狭めないまま甲冑を上回る防御力を手に入れることができる。
「時間制限はありますけど、こんなこともできちゃうんですよ」
僕らの表面が紫色に光った。なるほど、他人に効果を付与することもできるらしい。
戦闘面でも想像の通り万能で、鉄壁の防御力をもつ。相手の攻撃を読まずとも簡単に間合いの内側に入り込める、一般的に近距離の格闘戦に弱い魔術師とっては正にキラーと言える能力だ
。
「あとはもう、戦闘の練習をするしかないな」
「ですね」
僕らは、毎日放課後に練習した。メンバー同士の交流戦、基礎体力の向上のためのランニング(これが一番きつい)、新たな技の考案etc...
そして迎えた学園祭初日、大会本番。
先鋒:ジブリル・フォン・ルシフェル
副将:クリスティーン・シュミット
主将:イスラフェル・フォン・レラティビティ
すべての対戦で勝つことを目標にした構成の、僕らのチームだ。
「団体戦Aブロック1回戦第3試合、1年Aクラス・イスラフェル班対3年Aクラス・セツロ班!」
大きなアナウンスとともに、練習場に観客の歓声が響き渡る。僕らの最初の対戦相手は、いきなりAクラスの上級生だ。
対戦相手は幻術を操る先鋒エドワード・フェル、視力を強化して常人の5倍の認知能力を持つ事ができる副将イナンナ・フォン・トリリオン、そして紙人形を自在に操る主将ナタリア・スルガノヴァ・セツロのチーム。楽な相手ではないが、今の僕たちなら勝てる。
「先鋒戦!両者前へ」
試合開始前のアナウンス。ジブリルの顔に、緊張の冷や汗が流れる。
「ジブ、気張ってけ!」
「うん、クリス」
チームを組んでからこの方、この二人の距離がやけに近い。物理的にも、精神的にも。おそらく、大会が終わったらどっちかが告白しちゃうパターンだ。ほら、今だってお互いを愛称で呼び合ってたし、肩がくっついてる。
「構え」
試合開始前、選手には自分の魔法をチャージする時間が10秒与えられる。そこでいいスタートダッシュを切れるかどうかが重要だ。
「はじめ!」
『ギルティ・イリュージョン』
『柴胡』
両者、同時に呪文を唱える。
呪文を唱えた直後、ギルティ・イリュージョンの対象となった者は悪夢のような幻覚に苛まれ、周りが見えなくなる…ならない。ジブリルは問題なく剣を抜き、エドワードの懐に入り込む。
計算通りだ。相手の能力は幻覚。もしやと思い、漢方では柴胡と呼ばれる植物、セリ科のミシマサイコをジブリルの肉体に投与するようにさせた。ミシマサイコには中枢抑制作用があり、幻覚や鬱を改善する効果があるのだ。
もちろん、全く幻覚の効果がないとは言えないだろう。しかし、ジブリルは自らの精神力で幻覚効果の残滓を抑えているのだ。
ジブリルに遅れてエドワードも剣を抜いたが、剣筋がワンテンポ遅れている。ジブリルは太いツタをムチのように使いこなし、持ち前の剣技と合わせてトリッキーに相手を攻め落としていく。しかし幻覚とも戦うジブリルのほうが精神的なスタミナの面で劣り、次第に剣筋が歪んでくる。相手はそれを見抜き、大きく剣を振りかぶる。しかし、こんなこともあろうかと僕と彼は奥の手を用意していた。
『ミクロカルパ』
ジブリルが呪文を唱えた瞬間、木の幹がガラ空きだったエドワードの足元から生え、瞬く間にエドワードを空中で縛り付けてしまった。
クワ科イチジク属の常緑高木ガジュマルには、興味深い性質がある。この木は周りの木に巻き付き、最終的に絞め殺してしまうのだ。
審判によるカウントが始まる。10秒経てば戦闘不能と判断されるが、それまでに動き出せば試合続行だ。しかし、今回は相手が先にダウンした。
「こ、降参する!」
「勝者、ジブリル・フォン・ルシフェル!!」
大きなアナウンスとともに、観客が大きく沸いた。
special thanks:友人A




