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第74話 ★王女さまのお祓い隊(前編)

本日より3話連続で公開いたします。

 王様との謁見から数日後。

 

 

 僕らがダンジョン探索の準備をしていると、トパス姫からの呼び出しが入った。

 

 たぶん大好きなマイダに会いたいだけなのだろうが、一応「憑依術師が必須」の依頼案件らしい。


 さっそく翌日、指定の時間にみんなで王宮を訪問する。いつもより遅めの、そろそろ夕方の時間帯だ。夜間の悪魔祓いとかが必要なんだろうか。

 

 今日は王様との謁見がなく、憑依術がらみの依頼案件ということもあり、みんな動きやすい楽な格好だ。

 マイダなんかは肩にペットの手乗り九官鳥、キューちゃんまで乗せている。


 

 今回も正門前のダンジョンを避けて裏門から入るが、いつもと違う建物に案内された。案内者に聞くと、王族の私的スペースだそうだ。


 案内者は、王女様の付き人らしい女性騎士だ。そういえば、砂漠の砦への遠征の時も見たことがある。マイダを投石器(カタパルト)にくくりつけた人だ。


 

 建物の入口でトパス姫が待っていた。僕らは恐縮してかしこまる。


「皆さん、ダンジョン攻略の準備でお忙しいところ、本日はありがとうございます」


 トパス姫がそう言って僕らを立ち上がらせると、先頭にたって歩き始めた。歩きながら今日の用件の説明をする。


「これから皆さんをお連れするのは私の部屋なんですが、何年か前から付き人たちが、部屋の片隅からイヤな気配がすると言うんです。私は鈍感なのか何も感じないですし、しばらく憑依術師も不在だったので、ずっと放置していたんですが」


 王女様は振り返ると、苦笑いしながら言った。


「でも、彼女が……、レイナの霊感が強くて、一度倒れてしまって。さすがに対応しようかと思いまして、久々に出現した憑依術師であるレンレンさんと聖女の皆さんにお願いしたわけです」


 王女が付き人の騎士と視線を交わしながら言った。レイナさんという女性騎士が口を開く。


「護衛が倒れてしまい、お恥ずかしい限りなんですが、夜、姫様の部屋に入ると強烈な悪意を感じるのです。今までの傾向ですと、どうやら私のように剣を持っている者は特に強く影響されるようです」


 

 レイナさんがここまで話したところで、トパス姫が立ち止まった。

 そして、そこにある大きな白いドアを開きながら言う。


「ここが私室です。ちょっと恥ずかしいですが」



 

 僕らは姫について、部屋に入った。


 王族の私室らしい、バルコニーに面した大きな部屋だ。

 

 部屋の左側には机や本棚、応接セットがしつらえられている。一方、右手の奥にはイメージ通り?の天蓋がついた、立派なベッドがあった。


 壁には家族や先祖だろうか、豪華な額に入れられた肖像画がいくつも飾られている。

 

 

 僕が感想を言おうとみんなの方を見ると、聖女たちの視線が、ベッドのそばのやや薄暗い部屋の片隅に、一斉に注がれていた。


 

「何かいるな」

 

 カーリーが言った。


「いるわね、よく見えないけど」

 

 マイダも言った。


「でも何でしょう? 精霊では無さそうです。実体のない悪魔か霊でしょうか?」

 

 ディーナが言った。

 

 僕は3人が注視している方向を一緒になって見つめてみたが、全く何も見えない。


 一方、レイナさんは既に影響を受けているのか、ちょっと辛そうだ。同じく剣を帯びているカーリーもきついのかもしれない。

 


「いきなりレンレンへの憑依を試すというのも剣呑だし、まずは浄化魔法をぶつけてみようか? トパス姫様、お部屋で剣を失礼します」


 カーリーが、そう言って鞘から剣を引き抜いた。

 マイダとディーナも頷いて、それぞれ短い杖と指輪を構える。

 

 

「我、カーリーが神の御名(みな)において命ず……」

 

「ワタシ、マイダが神の御名において命じる……」

 

「わたくし、ディーナが神の御名において命じます……」

 

「「「汝、呪われし定めを持つものよ、この世の(ことわり)に従い、慈悲深き神の裁きを受けよ。浄化(ピュリフィケーション)!」」」


 

 3人の魔法道具から、それぞれ強い光が飛んだ。

 しかし、光は壁まで真っ直ぐに飛んでいき、何も起こらない。

 

 

 その状況を見てディーナが言った。

 

「悪魔などではなさそうですね」

 

「微かに手応えはあったが……。浄化が効かないということは、そう悪いものではないということか」


 カーリーも言う。


「それならワタシたちが対処するより、とりあえずレンレンに憑依させてみた方が、話が早そうね。じゃあレンレン、よろしく」

 

 マイダが軽い感じで僕に振った。相変わらず人使いの荒いやつだな。


 

 カーリーは少し迷ったようだが、他にできることも思いあたらなかったのか、最後は頷いて言った。


「まあ、そうしてみるか。姫、何が起こるかわかりませんので、後ろに下がっていてください。レイナさんは姫の護衛を。我々は浄化(ピュリフィケーション)解放(リベレーション)の魔法を準備しておこう。レンレン、任せたぞ」


 

 僕はあまり気乗りがしなかったが、少し前に出て、以前、自分から何かを憑依させた時のことを思い返した。


 

 あれは、僕が転生した直後に、ハンナさんと魔法適性を調べていた時のことだ。

 蘇生魔法にチャレンジしようとしたら、誤って蘇生対象だった変態貴族の霊に、自分の体を乗っ取られたのだった。


 ハンナさんが、これは蘇生魔法のコツだが、「できるだけリラックスして、心を開くようなイメージで。まず神の偉大なお力を、自分に導くように祈ります」って言っていた。


 僕は、なんとなくそんな感じで集中しながら、あの時のように手をかざした。


 

 早速、何か違和感のようなものを感じる。相変わらず取り憑かれやすいな。我ながらご愁傷様だ。

 

 あれ、そういえばハンナさんが、何だかわからないものを自分から憑依させるのは、危ないからやめろって言ってなかったっけ。これってヤバい?


 僕は慌てて自発的憑依を中止しようとしたが、その瞬間、体がビクンと大きく震え、硬直した。


 

 僕は何とか抵抗しようとしたが、残念ながらもう乗っ取られてしまったらしく、体の自由が効かない。

 しかも、普段?悪魔に憑依された時などと比べても、感じる違和感が半端なく強い。

 一体、何だろう?


 

 

 この違和感は、乗っ取った側も感じていたらしく、僕はしばらく体をモゾモゾとさせていたが、いきなり四つん這いになった。


 そしていかにも落ち着かないという感じで、四つん這いのまま、あたりの壁などの匂いを嗅ぎまわり始めた。


 これってもしかして……。


 

「ワン!」


 ()は小さく一度、鳴き声を上げた。


応援よろしくお願いいたします。

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