表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/78

第73話 ★ちょっともう笑えない王宮

 再び王宮に呼び出された僕たちは、普段は使わない裏門から入った。

 

 正門は、目の前にダンジョンの入口ができたため封鎖され、厳重に警備されている。

 ダンジョンからは、数は少ないがときおり魔物が出現し、兵士と戦闘になったりしているらしい。

 

 ということで、初めて裏門からのルートで、謁見の間まで案内される。


 

 今回呼び出されたのは、表向きは沙漠の遠征のご褒美の受け取りだけど、ちょっと不安だ。


 というのも正門前のダンジョンの件に加えて、僕にはもうひとつ懸念があった。

 前回、謁見したときに、マイダの黄金の耳(ミダス・イヤー)の憑依魔法の暴走?で、コミカルなピンクのタコの形をした王冠にツッコミを入れ、王様と大臣に恥をかかせてしまっていた。


「ワタシたち、このあいだの謁見の時はいろいろあったけど、あの大臣あたりから仕返しされたりしないわよね?」


 同じことを考えていたらしいマイダが言った。


「大丈夫でしょう。私たちは、沙漠の砦でそれなりに頑張りましたし」

 

 ディーナが答えると、カーリーも(うなず)いて言った。

 

「ああ、それにマイダはトパス姫のお気に入りだしな。そう簡単には手出しできないだろう。……そう言えば、あのとき例の王冠は作り直すって王様が言っていたが、どうなったのかな」


 

 そんな会話をしているうちに、早くも謁見の間の入口についてしまった。


 いつものとおり扉が開くと、みんなで文武の百官が見守るなかを通りすぎ、まだ主が到着していない空の玉座の前にひざまづいて下を向く。ちょっと慣れてきたな。

 さっそく王様と王女様が入場し、席に着いたようだ。


「一同、面をあげよ」

 

 タコ八世の重々しい声がして、僕は頭を上げようとした。

 さて、どんな王冠になったかな?

 

 

「ひっ」

 

 一瞬早く頭を上げた隣のマイダが、小さく悲鳴を漏らして、あわてて口を押さえた。

 急いで王様を見ると、なんと頭の上に、グロテスクなタコそのものが()っている。

 ぬらぬらと光る、茶色とも紫ともつかない足を王様の頭に絡みつけ、猫のような黄色く細い瞳で僕らをにらんでいる。コワっ!

 

 だが、動かない。よくよく見直すと、ものすごくリアルにできた偽物らしい。

  前と違って全然失笑する心配はないが、正直キモチ悪い。

 

「驚かせたようだな。新たな王冠は、リアルなものにするよう指示を出したらこの有り様だ。そなたたちの反応を見るに、もう一度作り直した方が良いようだ」


 そう言ってそばの大臣の方を見る。大臣は(かしこま)って退出していった。



 

 王様はあらためて僕らの方に向き直ると、威儀を正して言った。


「聖女と憑依術師のパーティーよ。この度の沙漠の砦の攻略において、我が娘トパスをよく(たす)け、大功があったと聞いている」


 

 トパス姫が横から申し添える。


「はい。敵の砦に先陣を切って乗り込んだ軍師マイダ様を始め、皆さんのお力添えがなければ、こうはいきませんでした」


 まあマイダは先陣を切って乗り込んだというか、単に最初にイヤイヤ投石器で放り込まれただけだが。

 

「うむ。ついてはささやかだが褒美をとらせよう。本日は大儀であった」


 マイダが代表して、王様お付きの文官から金貨が入っているらしい革袋を押し頂いているが、すごく嬉しそうだ。

 

 まあ銭ゲバだしな。よかったよかった。周囲からも拍手が起きる。



 

 拍手がおさまったところで王様が言った。


「ところで憑依術師殿。ひとつ頼みがある」


 

 全然よくなかった。僕はやむを得ず返事をした。


「はい。何でございましょう?」


「他でもない、王宮前に出現したダンジョンの件だ」


 

 そうですよねー。


 王様は心労からか、ひとつ溜め息をついてから続けた。

 

「出現以降、騎士団等の実力者たちを何組か攻略に当たらせたのだが、いずれも音沙汰がない。全滅したと見るのが妥当だろう」


 ちょうどそのとき、大臣が急ぎ足で戻ってきて王様に何事か告げた。王様は少し驚いた顔をしたが、どうやら悪い話ではなさそうだ。


「たった今、ダンジョンからの生還者があり、かなり疲れているが大きなケガはないそうだ。よし、ちょうどよい。内部の状態について報告をさせよう。こちらに連れて参れ」


 王様が周囲に向かって言ったあと、大臣に命じた。


 

 

 しばらくして、両側から兵士に支えられ、騎士らしき人が謁見の間に入ってきた。

 王様とトパス姫の前でかしこまる僕らの横まで連れて来られて、どうにか(ひざまず)く姿勢をとった。

 

 相当消耗しているみたいだな。


 

 王様が質問をする。

 

「ご苦労であった。して、内部の様子はどうであった? パーティーの他の者はどうしたのか?」


「内部は、当初は分かれ道もなく、順調に進んでおりました……。しかし、仲間たちは……」


 途切れ途切れ話していた騎士は、ここで言いよどんだ。


「疲れているところすまぬが、一刻も早く情報が必要でな。パーティーの他のメンバーは、どうしたのか?」


 王様が穏やかに続きを促す。誰もが沈黙している静寂の中、騎士が小さな声で答えた。


 

「バラバラにされました……」


 謁見の間に動揺のざわめきが広がる。

 隣のマイダも僕に向かって(ささや)いた。

 

「バラバラって、ダンジョンにキャスパリーグでも出たのかしら?」


 僕は以前対戦した、大鎌のような鋭いツメをもった、巨大な化け猫みたいな魔物を思い出した。

 あの時は、危うくマイダが不意打ちを喰らいそうになり、ギリギリでカーリーが突き飛ばして難を逃れたのだった。



「バラバラ、とな」


 王様も戸惑って繰り返す。そのとき、不意に騎士が大声で叫んだ。


「……バラバラにされたのです! ああっ!」


 騎士は頭を抱えると、限界がきたのか床に倒れこむ。

 兵士たちが慌てて駆け寄って、半ば引きずるように謁見の間から退出させた。

 

 

 王様は、まだざわめいている謁見の間の人々を片手で制すと、周囲を見渡しながら言った。

 

「かの者も、これまで幾度も修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の騎士だ。それがあの状態……。やはり、ダンジョン内では敵の憑依術師が怪しげな術を使っているということだろう」


 王様が改めて僕らの方に向き直って言った。


「だからこそ、『憑依術師には憑依術師を』だ。そなたたちにはあのダンジョンの攻略を依頼したい。支度金と褒美は十分に出そう。どうだ、受けてくれるか?」


 

 僕たちは困って顔を見合わせた。


 

 ディーナが仲間たちだけに聞こえるように囁く。


「王都の皆さんも困っているようですし、お断りしにくいですね」

 

「そうね。ワタシちょっとダンジョンに興味もあるし、行ってみましょうか」


 マイダが小さな声で答えた。

 

 まあ僕も、せっかく異世界に来たんだし、ゲームでよく出てきたダンジョンを体験してみたい。だから(うなず)いてマイダの意見に賛同した。

 

 しかし、マイダは方向オンチだし、ダンジョンとは相性が悪そうな気もするが。



 僕らの反応を見たカーリーが、代表して王様に回答した。


「お受けいたします」

 

「そうか、行ってくれるか。ありがたい。危険な任務となると思うがよろしく頼む。教会本部にはこちらから連絡しておこう」

 

 王様が満足そうに言った。


 

 

「お父様、わたくしもマイダ様たちと一緒に参ります!」


 横からトパス姫が突然、はっきりとした口調で言った。


「えっ?」

 

 マイダ驚きの声をあげ、慌てて自分の口を押さえた。今日二度目だな。


 

 王様が即座に言った。

 

「ならぬ! そなたは余の一人娘でやがて王位を継承する身。何かあったら国の安定に関わると日頃から言っているだろう」


「お父様は『国の危機に、前面に立つのが王族の務め』とも私にいつもおっしゃっています。それに私はこれまで何度もマイダ様たちに助けられており、ご恩を返したいのです」


 トパス姫が言い返す。反抗期なんだろうか?

 そう言えば以前、海賊にさらわれた時も、前線の兵士の慰問のため勝手に城を抜け出したっていう話だったな。

 もともと意思が強いんだろう。


 

「ならぬものはならぬ‼」


 王様が怒った口調で言うと、トパス姫は立ち上がり、黙って広間から出て行った。

 

 


 そこで謁見は終わり、僕らは退出した。

 

 ダンジョン突入については、特に明確な日は定めず、僕らの準備が整い次第、攻略に挑むことになった。



間が空いてすみません。

感想等お待ちしております。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ