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回復のためなら

「タ、タクト君ッ!!?もう回復は終わったの??」

「はい。流石にご飯食べないといけないなーと思ったので」


「お前……何日食ってないんだ??」

「えっ??…………これを始める前ですかね……」

「何してんだお前はッッ!!!」


思わず大声をだすマーレス。

隣のアリシアは両耳を塞いでいるがタクトはなんとも平然な表情でいる。

平然、というか感情がないのかと思うぐらいに表情が変わらない。


「でも食べなくても自分を回復させれば一週間はいけますよね??」

「んな"当たり前"みたいな感じでいうな……それはお前だから出来るんだよ……」


そうなんですか??とマーレスの言葉に対して全くと言っていいほどに気にしていないタクト。

このタクト、"回復"ということ以外に興味がない。

回復させることが生きがいであり、あとは二の次三の次。

だから睡眠も食事も後回しにしてしまい、倒れそうになれば自分の身体を回復させて、また回復の技術をあげようとなにかしらを回復させようとするのだ。


この回復の連鎖、確かに回復術師として底力をあげるには持ってこい。

しかしそれは人としてやってはいけないこと。

第一、こんな風に回復を行えるのはタクトだけ。

それだけ回復術師として一流なのだが、外に出しては、いや、身内でもあまり会わせられない。


タクトのような回復術をするものはいないだろう。

しかし真似てしまったとき、そしてそれが正しいと勘違いしたとき、きっとこのギルドは魔の巣窟になってしまいそうで怖いのである。


「とにかくご飯ね。ちょっと待ってて用意するわ」

「ありがとうございます」


普通は受付嬢であるアリシアがタクトの食事の用意する必要はない。

しかし誰かがタクトの為に作らないとタクトは偏ったものを食べると知っている。

この前なんて栄養さえ取れればいいといって生野菜をそのまま食べていた。いや、確かに栄養は必要だがもうそれでは家畜が餌を食べているしか見えない。本当に回復以外あまりにも興味を持たないタクトに周りの皆も苦労をしているのだ。


食事の用意といってもアリシアが今日お昼に食べるつもりだったサンドイッチをタクトの為に出したのだった。


「いいんですかコレ??」

「いいわよ。その代わり後でアレを直してくれない??」


そういって指差す方を見るとカウンター一部が壊れているのを見えた。

あぁ。と納得するタクト。またアリシアが壊したのだと。


「分かりました。でもあまり壊さないほうがいいですよ??」

「分かっているけどね………今回はギルド長が悪いのよ……」


「なるほど。だめですよマーレスさん」

「お前はギルド長と呼べタクト……こっちにも威厳というのがあるんだぞ……」


へぇーと、特に興味を持たないタクトはサンドイッチを手に取り食べ進める。こうなったら何を言っても聞かないと分かっているマーレスもこれ以上は無駄だと分かり深くため息をつく。


「少人数しかいないこの場合で、それもマーレスさんをマーレスさんと言うなんて………拷問ですよ」

「オイコラ。お前も俺をギルド長に勧めた原因の一つだろうがッッ!!!

ってか、拷問ってなんだオマエッッ!!!!!」


「うるさいですね。いくら権力を握ろうが同じ師匠を持ち、僕が兄弟子である限り、マーレスさんをマーレスさんと呼ぶタイミングは僕が決めます」


「こ、この野郎………アリシアアァァァッッ!!!!!!」

「いや、私に振られても……私がいくら姉弟子でも、技術も実力も私やギルド長よりタクト君の方が上だから……ねぇ??」


アリシア、タクト、マーレスの順である師匠の弟子である3人。

しかしこの中でもタクトの実力はトップ、そしてアリシアの中ではいくら弟弟子であるタクトでも実力があるなら上に立つことに対して問題はない。


ただ人格的に本当に上に立つと危ないのでそうはしないが、この3人だけがいる時に限っては一番上はタクトであると感じているのだ。


そしてマーレスは社会的な立場を優先するために、ギルド長であるマーレス、受付嬢であるアリシア、そして団員のタクトという順番をつけている。


タクトに至ってはマーレスが実際上でも、アリシアが上でも、それが師匠でも、名前呼びを変える気はないので立場とか全く気にしていない。


「うるさいですね。アリシアさん、ごちそうさまでした」

「はい。お粗末さまでした。ちゃんと食べてねタクト君」

「気をつける気はあるんですが、ついつい」


「お前……本当に女には優しいよな……」

「当たり前なこと言わないでください。それが紳士、僕ですから」

「誰が紳士だ。誰が……」


バカなやり取りをしているがそれでもこうして3人で集まるのはいい。

マーレスもアリシアも楽しそうな表情をする中、タクトが凍りつくようなことを言い出した。


「それで他の皆さんはどこに行ったんですか??」

「「ッッ!!!」」



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