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イカれたヒーラー

回復術師。

それは怪我をしたものを回復する術を行使するもの。

それは状態異常を正常に治す為に術を行使するもの。


どんな怪我も重症患者でも諦めずに治すことが回復術師の役目。

つまりは回復術を使わなければそれはもう回復術師とは呼べない。


そしてこのユリファース国にある回復術師ギルド"天使の羽根"は国随一の回復術師が集まっており、王国騎士から農民までありとあらゆる者から依頼を受けて回復して回復して回復して回る。回復術に特化したヒーラーの集まりである。


「おい!グレスト山脈にクエストに行っていた冒険者達がドラゴンの襲撃にあったそうだ!!!!」

「マジかよ!?あの辺りのドラゴンは大人しくなったんじゃなかったのか!!?」

「突然襲いかかってきたそうだ。どうにか逃げ切ったようだが重症者が多い……」


そんな話がギルド内に広まった所でパン!パン!と手を叩く音が鳴り響いた。その音のなる方へ全員が視線を向けるとこのギルドの受付嬢であるアリシアが皆に聞こえるように声を上げた。


「重症者がいる。なら私達のやるべきことは一つです!!」


誰もがその言葉に頷き、アリシアのさらなる言葉に耳を傾ける。


「私達はヒーラーです!!怪我にがいるなら私達はそれを回復して治す!!

依頼がどうこうは関係ありません!!そんなものは後で請求書を回せばいいのです!!」


「そんなことしたらギルドが叩かれないか??」


誰かが茶々を入れた。

それに対してどう反応するかと誰もが見守っていると


「そんなの……ギルド長が怒られるだけです。気にしなくていいです!!」

「「「確かにッ!!!」」」

「「「よっしゃー!!行くぞーッ!!!」」」


皆がまとまり一斉にギルドから出ていく。

その姿をアリシアが見送って、全員がいなくなったところでカウンターの奥にある扉から


「お前らヒドイな……頭を下げるの俺なんだぞ……」

「それがトップに立つと言うことですよマーレスギルド長」


回復術師のトップであるギルド長、マーレス。

その風貌はまるで冒険者の中の冒険者。左目は大傷により失っており眼帯をしている。元に戻ろうと思えば出来るが戒めの為にそのままにしているという。


「ギルド長は止めろ。大体、お前がギルド長を止めなければ良かったんだがな……なぁアリシアよ??」

「嫌ですよ。私はカワイイ受付嬢で間に合ってます!」


「カワイイ……ねぇ……」

「なんですか??なにか言いたそうですね??」

「なんでもねぇよ!!だからテーブルを壊すなッ!!!」


マーレスの迂闊な発言によりカウンターテーブルがアリシアの握力で破壊されていた。

アリシア·ラザフォード。元ギルド長であり、いまは受付嬢をしている。

可愛らしい受付嬢の服を着てご機嫌なアリシアだが怒らせるととても怖いのだ……


「いいですよーまたタクト君にお願いしますか」

「お前な……というか。アイツには言ってないだろうな……」

「言ってませんよ!!言ったら絶対に行こうとしますから!!」


それならいいんだがと納得するマーレス。

二人しかいないこのギルドにもう一人回復術師がいるのだ。

このギルドの地下。そこは重症患者が収容される場所があるのだが、そこに二人が話していたタクトという人物がいる。


「いまアイツ、何してるんだ??」

「休ませようとしたんですけど………またこっそり()()したようで……」

「はあぁ!!?これで何日目だ!!!??」

「もう一週間近くになります……もう寝てほしいのに……」


頭を抱える二人。

このタクトというのは困った者である。

この一週間()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


それも自分を痛めつけ、それを回復させる。

それをずっと、ずっと、ずっと、繰り返しやり続けている。

そんな姿を見せないようにタクトを地下に入れているのだ。

他の回復術師にされたら本当に大変なことになる……


「いくら回復術の効率と速度向上のためにやっているとはいえ……そのうち死んじまうぞ」


「分かってますよ!!でもこの状況で重症患者がいるって教えたら止めてくれると思いますけど、タクト君のあの状態で現場に行ってしまうと倒れてしまうかもしれないんですよ!!」


「だよな……ったく、どうすればいいんだ……」


異常な回復行為を止めるためには他の事をやられるのが一番いい。

しかしいまのタクトはもう一週間近くに寝てないのだ。これで重症患者を回復させていたらきっと現場で倒れてしまう。


どうにかして安全にタクトを寝かせることは出来ないか……

悩む二人。そう簡単に思いつくわけもないがそんな二人に声が後ろから聞こえてきた。


「あれ??皆さんはどこに行ってるんですか??」

「「ッッ!!!!??」」


その声のする方へ視線を向けると目の下にクマがある青年が立っていた。

歳は20歳前後。黒髪で身長は高い方。体型もよく、第一印象は好青年と思うだろう。


しかしこの青年こそ、さっきまで噂していたタクトである。

タクト·ラージェス。イカれた回復術師(ヒーラー)である。

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