トリくんの話
トリくんの話をしようと思う。
トリくんというのはあだ名で、もちろん彼にも本名がある。しかし、彼のことはずっと「トリくん」と呼ぶのが習慣になってしまっているので、時々本名が思い出せなくなってしまう。実を言うと、今も彼の名前を度忘れしている。だから、大変申し訳ないのだが、今からする僕の話の中でも、彼のことはトリくんと呼ばせてほしい。
彼とは小学校、中学校と同じ学校に通っていた。それからはずっと会う機会がなかったのだが、最近になって会う機会を得た。僕らはもうお互い大人だ。
きっかけは今年の夏、僕が数年ぶりに里帰りしたときのことだ。僕が実家に向かう途中、中学生時代の同級生だった男が話しかけてきたのだ。彼はどこか大人らしい雰囲気にはなっていたが、全体的な印象は昔のままだった。
「懐かしいなあ」僕は言った。
「懐かしいね」彼もそう言った。「今は里帰り中? せっかくだしお茶でも飲んでいかないか。今は暇かい?」
「急いではいないから、大丈夫だよ」僕はそう答えた。
それで近くの喫茶店で彼と話をした。その喫茶店は、僕がここに住んでいた頃から良く言えばアンティーク、悪く言えば古臭い内装の店だったが、久しぶりに入った店内はなんというか、あの頃より数段アンティークな感じが増していた。店主は当時からだいぶアンティークが入った年齢だったが、恐ろしいことにまだ存命であの頃よりさらにアンティーク味が増していた。
彼と話した内容は、数年ぶりに同級生に会ったときにする会話と言って、だいたい皆が思いつくような話だ。誰それはもう結婚して子供がいるとか、別の誰それは今母校で教師をしているとか、また別の誰それは事業に失敗して借金で大変なことになっているらしいとか、さらに別の誰それはSNSのフォロワーが数万人いるらしいとか、その手の話だ。
そんな話をしている中で、彼が言った。
「そういえば、トリくんを覚えてるか?」
「もちろん。トリくんがどうかしたのか?」
「彼、今いろいろあってちょっと落ち込んでるんだよ。君、トリくんとは割と仲良かっただろ。時間があれば会ってやってくれないか。きっと彼も喜ぶと思うよ」
僕はちょっと考えてから言った。「ちょっと落ち込んでるってどういうことだ? 鬱とかそういうのなら、カウンセラーとかと話した方が良い気がするけど」
「どうだろうな。あの感じだとたぶんもうカウンセラーとも話してるんじゃないか? でもトリくんには君みたいなやつと話すのも必要な気がするんだよな」
「ふぅん」僕はなんとなく納得がいかなかったが、トリくんの現状には興味があった。「分かった。今の連絡先とか分かるなら教えてよ」
「よし来た」
そう言うと彼は、ボールペンで紙ナプキンにトリくんの住所と連絡先を書き、僕に渡した。住所を見る限り、トリくんはまだこの市内に住んでいるらしかった。
「とにかく会ってやってよ、トリくん喜ぶからさ」
「そうするよ」
その後、彼とまたしばらくたわいもない話をして別れた。しかし、トリくんのことがなんとなく頭に引っかかって、彼の話はうまく頭に入ってこなかった。
トリくんがどうしてそんなあだ名で呼ばれているのか、その話をまだしていなかった。
彼には生まれつき背中に翼が生えていた。そう、鳥に生えているあの翼だ。人間に翼が生えているというと、天使のような立派な白翼を想像するかもしれないが、彼に生えている羽は茶色い地味な色をした翼だった。それも、ワシやタカのような力強く逞しい羽ではない。何の鳥に似ているのかは分からないが、素朴な野鳥の羽という表現が一番合っているのではないかと思う。
彼が生まれたときはそれなりに大きなニュースになったらしい。何しろ、こんなことは前例がない。すぐにDNA検査が行われたが、彼は間違いなく彼の両親の息子ではあるらしかった。そして翼はもちろん作り物ではなく、彼の体の一部だった。どうしてこんなことが起こったのか、現代の科学では正確にその理由を知ることはできない。突然変異だとか、人間の新たな進化の可能性だとか、先祖の誰かが鳥と交わりそれが隔世遺伝したのだとか、そんな説があるそうだ。先祖の誰かが鳥と交わった? そんなことが本当にあり得るのだろうか。僕には何とも言えない。
彼の両親は、世界初の有翼の息子がどのように育つか不安もあっただろうが、彼はそんなことはお構いなしにすくすくと育ち、小学校に入学して僕と同じクラスになった。もちろん、翼の生えた小学生がクラスメイトになれば、彼は必然的に人気者になる。そうして当然のように、鳥の翼が生えているのでトリくんと呼ばれるようになった。
「その羽、本当に飛べるの?」かつての僕はそう聞いた。
「今は飛べない」と彼は答える。しかし、小さい子供ながら、そこにはどこか「いつかは飛べるようになる」という確信に満ちた語調があった。
そしてその通りに彼は小学四年生の春に飛べるようになった。天使のように優雅な飛び方ではない。まずは全力で助走をつけ、頭から地面に突っ込むようにして跳ぶ。一見すると転倒したかのように見えるが、彼はそこで翼を数度はためかせる。すると、頭から地面に飛び込みそうだった軌道は上を向くのだ。それからは、揚力が重力に負けそうになるたび、数度羽ばたくことで空中に居続けることができるらしい。
初めて見たときの興奮は忘れられない。友人数人を校庭に集めて、彼は飛行を初披露した。もちろんそれを見た僕たちは喝采した。それどころか、校庭中の視線はいつしかトリくんに集まり、校内の窓からも好奇のまなざしが降り注いだ。この日の主役は間違いなく彼だったと言っていい。学校中の歓声を彼は独り占めにしていた。
「こんなのどこで覚えたんだ?」僕は彼に聞いた。
「分からないけど、こうやったら飛べるようになるっていうのが、なんとなく体の中で分かった」
僕は感心した。彼の中にはどうやったら飛べるかということが、本能で備わっているらしかった。それが分かる時期に来たから、ひとりでに飛行の能力が開眼したのだ。まだ子供の頃なので、ここまで理路整然としたことを考えたわけではなかったが、なんとなくトリくんが僕らより一歩大人に近づいたのだという気がした。
「久しぶりだね」
そう言って現れたトリくんは、最後に会ったときより大人らしく、Vネックのシャツの上に、薄手のジャケットを羽織った姿はなかなか品がよくハンサムに見える。しかし、わずかに不健康な痩せ方をしているような気がした。声はあのころと比べると低くなり、落ち着きを感じさせる。そしてやはり背中には大きな翼が生えていた。
僕は喫茶店でトリくんの話を聞いた日の夜、彼に電話をした。久々に話したトリくんは、もう10年以上ぶりになる僕からの連絡に驚き、また喜んでくれた。せっかくだから、彼と会って話せないかと言うと、彼は喜んで僕の提案を受け入れ、数日後に隣町のデパートの屋上で会おうということになった。
「今の時期はビアガーデンをやってるんだ」
「ビアガーデンか、いいね」
そんなやり取りをしていると、中学以来に会う相手が、お互いもうお酒の飲める年齢になっていることを実感する。そして、落ち込んでいるという彼も、案外明るい口調をしている。僕にトリくんの話をした元同級生が、トリくんが落ち込んでいるという話をしたのは何かの間違いではないかという気がした。
先に場所を取っていた僕は、トリくんに席を勧める。どうも、と言ってトリくんは僕の向かいに座った。
「君は変わらないね」トリくんが言う。
「君もあまり変わらなさそうに見える」と僕は答える。
「そうかな」と彼は答える。少しだけ複雑な表情を浮かべた気がした。
僕たちはとりあえずウェイターを呼び、生ビールと唐揚げ、枝豆を注文する。トリくんは注文を取るウェイターの方を見て、ほんの少し眉をひそめた。注文した品はすぐに運ばれてくる。
「とりあえず乾杯しようか」トリくんが言った。
そうして僕らは乾杯し、冷えたビールを喉に流し込んだ。暑気で熱された身体の奥まで冷えた液体が伝っていくのが分かり、気持ちがいい。
トリくんは料理に目をやっている。そうしてしばらくして口を開いた。
「あのウェイター、俺が唐揚げを注文した時ちょっと口の端で笑ったよな」
ああなるほど。彼が少し眉をひそめたのはそのせいか。
「気にしない方が良いよ」
「まあね。小学生くらいの時はよくあったよな。給食で鶏肉が出ると誰かが、トリ君お前共食いするのかって言ってさ。それでそいつと殴り合いの喧嘩をしたこともあったよな」
「そう言われれば、そんなこともあったかもしれない」
「昔は単純だったよな。そういうことがあったら、喧嘩してぽこぽこ殴り合って、それで先生が仲裁に入ってごめんなさいって言わせて。でも翌日になったら平気でまたそいつと遊んでるんだよな。でも、今になるとちょっと今のウェイターに喧嘩を吹っ掛けてみるわけにもいかない」
「しょうがないよ。大人になると面倒が多いんだ」
トリくんは割りばしで唐揚げを掴み、口に運ぶ。
「俺は哺乳類なんだから、鳥類のことなんてどうでもいいんだがなあ」
「哺乳類だって哺乳類を食べるよ。ウシだってブタだってライオンゴールデンタマリンだって食べても平気だろう」
ライオンゴールデンタマリン? とトリくんは聞き返して笑ったが、少ししてまた表情が曇る。
「大人になると面倒が多い、か。確かにそうだよな。俺もいろいろあるんだ。いきなり愚痴っぽくなってすまないけど、聞いてくれるか?」
僕は、実はこの間中学時代の同級生(トリくんとも同級生だ)に会い、トリくんが近頃落ち込んでいるようだから話を聞いてやってくれないかと言われたのだと彼に説明する。愚痴を聞くのが今回の目的のようなものなのだから、差し支えないなら話してほしいと。トリくんは、なるほどね、それじゃあ遠慮なく話そうかと言って、話を始めた。
君とは中学時代以来会ってなかったよな。だから高校生の頃の話から始めるよ。
中学生までは地元の公立学校に通ってたから、俺の羽のことは説明しなくても、だいたい皆が知ってたよな。羽の生えた子供がいるっていうのは、地元ではある程度有名な話だったし、知らない奴がいても周りの奴が説明してくれていた。だから、俺自身から何かを説明するということはあまりなかったし、それが普通と思い込んでいたんだよな。
でも、俺が進学した高校には、俺と同じ市内から通ってる奴はいなかったんだ。もし一人でもいれば、もう少し状況が違ったのかもしれないな。しばらくは、羽のことについて毎日説明し通しだったね。作り物じゃないのかとか、生まれつきなのかとか、それで飛べるのかとか、君たちにはもう説明するまでもないけど、毎日変な目を向けられて大変だったよ。実際に飛んで見せたのが何回になったか、もう分からないね。
さっきの唐揚げの話じゃないけど、鶏肉と絡めてネタにされたのも1回や2回じゃないな。地元じゃ小学校くらいで皆飽きてくれたし、俺はその手のジョークは嫌いだって皆知ってる話なんだけど、高校で初めて会った奴らはそんなの知らないからね。その時ももしかしたら殴り合いの喧嘩でもした方がすっきりしたのかもしれない。でも高校生が殴り合いの喧嘩なんてしたら結構な大ごとだし、我慢したよ。
でも、高校の中のことはまだ良かった。3年間もすれば皆そういうものなんだということは分かってくれたよ。もっと問題だったのは、高校の外の話だったんだ。
俺は高校で初めて電車通学になった。朝の混みあった時間帯に、でかい羽を背負った人間が満員電車に乗り込むというのは、君にも想像がつくと思うが、ちょっとばかり場所を取りすぎて面倒なんだ。毎日、朝の通学は気が重かったね。俺は人に迷惑をかけているというのが分かったから。雨の日なんかは、羽が濡れてるからさらに迷惑をかけてしまう。雨の日は親に頭痛がするとか適当な嘘を言って休んだこともあった。
トラブルが起きたことも少なくなかった。朝の電車の中というのは苛立っている人が多い。突然電車の中で、「この狭い中、そんなふざけた作り物の羽を背中につけて電車に乗るな」なんて怒鳴られることは日常茶飯事だった。そういう時は、俺の羽は生来のものなんだということを説明して、実際に触ってもらったこともある。そうすると、大抵相手は気味悪がって黙ってしまうんだが、時々は、羽が本物だろうが偽物だろうが、迷惑は迷惑だと、なおも突っかかってくる人もいる。ひどい時は、他の乗客の中にもそれに同調してしまう人が出てくることもある。そういう場合は、諦めて途中の駅で電車を降りるよ。遅刻は確定だけどね。
ただ、俺は高校時代の電車通学で学んだんだ。学校という狭い中でなら、俺のことを理解してもらえるように説明し続ければ、いつかは「そういうものだ」と分かってもらえる。でも、社会に出たらどうなるんだ? 広い社会に出たら、毎日のように知らない人に出会い、常に不特定多数の人間と何らかの形で関わり続けることになる。そしてその人達に毎日、自分のことを理解してもらえるまで説明するということはできない。そんなことは物理的に不可能だ。電車に乗るたび、この羽は生まれつきです、だから許してくださいなんて毎回叫ぶわけにもいかない。だから、大人になったら俺のことをおかしな目で見る人間が常にいる世界で生きなければならない。そう思うと絶望的な気分になったな。
大学にしても同じようなものだ。また一から俺のことを説明したよ。でも実際に飛んで見せはしなかったな。なんとなくその頃になると人前で飛ぶのが恥ずかしくなった。翼が生えているということに誇りを持てないというか、むしろマイナスのものを感じていたからかもしれない。
そうやって説明しているうちに、一人の女の子と仲良くなった。俺の話を聞いてくれているうちに俺に興味を持って、やがて恋人になった。お互い真剣だったと思う。俺は、いずれこの子と結婚出来たら素敵だろうなあと思ったし、相手もそう思っていただろうと思うよ。だからこそ、ああいうことになったんだろうな。ある時を境に、彼女は俺に「その羽は遺伝するのか」とやたら聞いてくるようになった。俺には分からなかった。何しろ翼を持って生まれてきたのは俺が初めてで、その後も他に同じような例は聞いたことがない。はっきりしたことは言えないが、もしかしたら遺伝するのかもしれない。そう答えているうちに別れることになった。相手の方から言われたよ、いろいろ考えたけど、ごめんなさいってね。
卒業して、俺はそこそこ大きい企業の営業職になった。俺としては悪くない会社に入ったと思ったし、周りもすごいと言ってくれるようなレベルの企業だったよ。もちろん、翼の件についてはまた一から説明することになったけどな。入社して、営業の研修を受けている間の成績は一番だった。社員同士のロールプレイとか、そういう研修ではね。そこまでは順調だった。ここからいろいろうまくいくことを期待したね。でもダメだった。本番の営業では、成績をどんどん他の奴らに抜かれていった。なんでだと思う?
俺が営業に行った先の奴が言うんだってよ。「背中に羽が生えた人とお取引するのはちょっと……」って。それで、その後で他の奴が行くとうまくいくんだ。羽が生えていようがいまいが、営業自体には何にも関係ないと思うんだが、日本の保守的な会社の多くは、羽の生えた人とは商取引をしたがらないらしい。中には、俺が帰った後で「ふざけるな、背中に羽の生えたような奴を営業に寄越すな」なんてクレームの電話を入れる会社もあったらしい。そんなことがあって、会社ではその後も何一つうまくいかなかったから、じきに辞めてしまった。今は実家でいい加減な暮らしをしてるよ。
もしかしたら、俺の翼を羨ましいと思うやつも世の中にはいるのかもしれない。だが、残念なことに俺は、皆と同じことをするのに幸せを感じるタイプだったんだな。人と違うことをするのに幸せを感じるのなら、この羽を活かして何かをしていたのかもしれない。だが、俺は普通の生活というのがしたかった。羽なんか関係ない、俺の能力で仕事をして、恋人なりを作って、平和に暮らせればそれでよかったんだ。でもどうやら、俺にこの忌々しい羽が生えていやがる限りそうはならないらしい。
時々、手術なりなんなりをしてこの羽を取ってしまえないかと思うことがある。そうすれば、俺の生活もマシになるんじゃないかってな。でも、羽の生えた人間から羽を取る手術なんていうのは世界に前例がないし、一体どこでそんなことができるのか見当もつかない。それに、なんだかんだ言っても俺が一緒に一生を過ごしてきた体の一部だからな。羽なんか生えていない普通の人間でも、あなたの腕を片方手術で取れば、その後一生うまくいきますよなんて言われて、簡単にはオーケーできないだろう? あるいは金に困って腎臓を売るとかさ。
考えてみれば、俺はずいぶん長い間飛んでないな。見た目では分からないかもしれないけど、しばらく使っていないから、羽の筋肉が落ちているのが分かるんだ。もしかしたらもう、飛ぶことはできないのかもしれない。じゃあなんでこんなもの生やしてるんだろうな。何の意味もないじゃないか。
そこまで話すと、トリくんは黙ってしまった。
彼は僕の次の言葉に期待しているのかもしれない。だが、僕は彼に一体何を言えばいいのか分からなかった。
僕はそのとき思った。彼のことを「トリくん」と呼ぶのは、もしかしたら彼を傷つけているのかもしれない。そう思い、彼を本当の名前で呼ぼうと思ったが、僕の頭の中にはどうしても、昔から呼び習わしたあだ名しか出てこなかった。目の前にいる彼に、これ以上ないほど申し訳ない気分になる。
彼に羽が生えていることでついたあだ名しか思いつかないということは、僕自身も翼があること抜きでは彼を見ていなかったのかもしれない。記憶を手繰り、必死で思い出そうとしたが、彼の名前は不思議と浮かんでこなかった。
そのとき、急に強い風が吹いた。少し離れた場所を歩いている女性の帽子が飛ばされ、僕たちのいる席の方向に飛んでくる。
「すいません、取ってください!」
トリくんは立ち上がり手を伸ばしたが、帽子はその手をすり抜けてはるかに飛ばされ、小さくなっていき、やがて夏の夕空に消えてしまった。僕たちはそれを見送ることしかできない。
「ちょっと! なんで羽の人、飛んで取ってくれないんですか!」
帽子を飛ばされた女性が怒鳴る。トリくんはそちらを見ずに苦笑して、再び腰を下ろす。そして憂いを含んだ表情でこちらを見ながら、もう泡の消えてしまったぬるいビールを一口飲んだ。
「飲酒しての飛行は法律で禁止されているんだ」トリくんは小さな声で僕に言う。
「そうなのか?」
「嘘だよ。羽の生えた人間なんて俺しかいないんだから、一人のために法律を作ったりしないよ」
トリ君はそう言うと穏やかな表情で僕の目を見た。
僕は彼の目に見られると、心を突き刺されるような感覚がし、思わず目を逸らす。そして必死で頭の中で考えた。
トリくんの本当の名前は何だっただろうか。トリくんの本当の名前は何だっただろうか。