429 報告へ
いつの間にか眠ってしまい、起きたら五時を過ぎていた。
……がっつり眠ってしまったな……。
毛布がかけてあり、起こされなかったところをみると、砦は切羽詰まった状況にはなっていないようだ。
「おはよう。シャワーを浴びてきたら」
ぼんやりとしてたらミサロが中央ルームの出入口から顔を出した。
「……ああ、そうするよ……」
もう出番もなさそうだし、ゆっくりシャワーでも浴びるとしようかね。
いつでも出れるよう装備は玄関に置いておき、腰回りだけにしてユニットバスに向かった。
熱いシャワーを浴び、水鉄砲をやっていたらドアが叩かれた。どした?
「タカト。アシッカから報告で男爵領にロースランが出たそうよ」
やはり地下から地上に通じる穴があったか。まったく、地殻変動で崩れてくれて欲しいよ。
「今出る」
仕方がないと急いでユニットバスから出た。
報告にきたのはミリエルのようで、なんかちょっとくたびれていた。戦い終わってそのまま眠ってしまった、って感じだな。
「ご苦労さん。誰が伝えにきた?」
「奴隷傭兵団の方です」
伯爵、専門の伝令兵も持ってなかったのか? 奴隷傭兵団に頼り切りだな。
すぐに装備を纏い、ダストシュートから外に出してもらった。
現れた場所は司令部に使っていた小屋の前で、奴隷傭兵団の男が椅子に座っていた。
「ご苦労さん。様子を聞かしてくれ」
伝えにきた男によればエビル男爵領のオードブルの森とのことだった。またあそこか。あの周辺に地下と続く穴があるのか?
「伯爵の命で奴隷傭兵団の一隊を出させましたが、まだ状況がわかっておりませんのでマスターに報告して欲しいとのことでした」
「わかった。一度、アシッカに向かうか。名前、なんだっけ?」
顔はなんとなく覚えているが、七十人もの奴隷傭兵の顔と名前なんて覚えられないよ。
「ダバンです」
今度、写真を撮ってファイルを作らないとな。
ホームからスコーピオンと三連ポーチを持ってきて装備させた。
「グロックだけじゃ不足だからな、それを装備しておけ」
「あ、ありがとうございます! 大切にします」
「調子が悪くなったら交換させるよ」
別に褒賞品でもないんだから調子が悪くなったら新しいのを渡すよ。
「ミリエル。一緒にアシッカにきてくれ。ラダリオンは駆除を続けてくれ。サイルスさん。ここで解散します。あとはそれぞれの判断で動いてください」
オレのマイセンズでのゴブリン駆除は終わり。あとは砦にいるエルフにお任せだ。自分たちの力で発展してくださいだ。
「ああ、わかった。おれは一度アシッカにいくよ。伯爵に挨拶もしたいしな」
「伯爵に伝えておきます。ロズたちもサイルスさんと一緒にコラウスに戻れ。一度、家族に顔を見せてやれ」
もう長いこと家族から離れているんだ、安心させるためにも一度戻ったほうがいいだろうよ。
「わかりました。一度戻ります」
ダバンとミリエルをパイオニア二号に乗せ、アシッカに向かった。
「雪が解けているな」
道には完全に雪はなく、左右に積もった雪も三十センチはないんじゃなかろうか? 気温も心なしか暖かくなっている気がするよ。
「そうですね。エルフたちによれば少しずつ暖かくなっていくだろうと言ってました」
そう言えば去年もそんな感じだったっけ。いや、細かくは覚えてないけど!
「……二度目の春か……」
これと言った感慨もないな。と言うか、オレ、三十一歳になってないか? 二月一日生まれなんだけど、確実に過ぎているよな?
今さら誕生日を祝って欲しいってこともないので口にすることもない。これと言った会話もなくアシッカに到着した。
「かなり発展してきたな」
巨人がいるので建造速度が尋常ではない。と言うか、また人が増えてないか? どこから集まってきてるんだ?
城壁内に入ると、中も人の往来が増えており、毛皮を纏った者がちらほらと見えた。
「アシッカが復興していると聞いて、周辺の領からきているみたいですよ」
通信か発達してないのにウワサが回るのは速いよな。そんなに人の移動ってあるものなのか?
ギルドの前に到着すると、隣に冒険者ギルドができており、冒険者らしき者たちもいた。
「変わるときのスピードってのは凄いものだ」
一月半くらいでこうも変わるんだから人って生き物の凄さを痛感させられるよ。
「マスター!」
パイオニアから降りると、シエイラやサイルたちが出てきた。
「長いこと留守にして悪かった。ありがとな」
オレも苦労したが、シエイラたちも苦労したはず。その働きは労っておかないとな。
「いえ。マスターが無事でなによりです。怪我はありませんでしたか?」
「疲労困憊はたくさんしたが、怪我はしてないよ」
災害級のと戦って怪我一つしてないんだから奇跡としか言いようがない。まあ、したところで回復薬大があるのだから怪我なんて治しちゃうんだけど。
「オレは伯爵に報告してくる。ミリエルはシエイラたちにわかっていることを報告してくれ」
いろいろ問題が山積しているだろうし、ロースランのこともある。ストレス抱えて倒れられたらすべてのことがご破算だ。オレたちがコラウスに帰るまでにはしっかり育ってもらわないとな。
「わかりました。終わればわたしもいきますので」
「助かる。シエイラ。また頼むよ」
パイオニア二号はギルドに置いて、ダバンを連れて館に向かった。




