297 プラグ
東拠点を築いてから三日。日に日に雪が積もり、寒さも増していた。へっくしゅっ!
「──雪で隠れていたが、まず間違いなく洞窟がある」
戻ってくるなりそう断言するマリットさん。びっくりしたー!
「熱反応もあった。出入口付近で詰まっている感じだな」
ゴブリンがそこから現れるのを確信したので、索敵のプロに見にいってもらったのだ。
「……やはりか……」
オレも気配からそんな予想はしていたが、マルダ洞窟(ライダンド伯爵領)のトラウマがそれを拒否していたのだ。
オートマップを返してもらい、地図を開いてみるも、雪に覆われてよくわからん。ストリートビューに切り替えてみるが、やはりよくわからない。
「アルズライズ……は、出ているか」
じっとしているのが嫌と、洞窟から出たゴブリンを駆除しにいってたっけ。
「じゃあ、ロンダリオさん。ロンダリオさんのチームで洞窟の周辺の雪を溶かして、出入口のゴブリンを駆除してください。片付けたら拠点を洞窟の前に移しますんで」
マイセンズの砦と東拠点を繋ぐ道をエルフとドワーフにお願いしている。いつでも逃げれるように、な。
「了解。任せろ」
「奥には入らないでくださいね。出てきたら殺しても構いませんので」
オレの察知範囲外に違う出入口があるかもしれない。塞いでみて様子を見る。
「わかっているさ。皆、いくぞ」
用意はしてたようで、ヒートソードを渡すとすぐに東拠点を出ていった。
「マイセンズの砦にいってくる。見張りを頼む」
アリサと二人のエルフに伝え、スノーモービルでマイセンズの砦に向かった。
途中で道を整備しているドワーフにはマイセンズの砦に。エルフには東拠点に向かうように伝えた。
マイセンズの砦はカインゼルさんとガドーの二人に守ってもらっていて、雪が落ち着いたら町からエルフを呼び寄せる段取りだ。
長老が町の外で暮らせないかとミリエルに相談してきたので、マイセンズの砦をエルフたちで管理してもらうようにしたのだ。だが、ちょっと前倒しするとしよう。
「カインゼルさん。申し訳ありませんが、町にいってくるので東拠点で指揮を取ってください。ゴブリンが出入りする洞窟を制圧して、洞窟前拠点を築きます」
「わかった。一人でいくのか?」
「ええ。ヒートソードを使いながら戻ります」
マルチシールドとヒートソードを使った除雪──いや、溶雪? まあ、雪を溶かしながら戻っていくので一人のほうが都合がいいのだ。疲れたらホームに戻ればいいんだしな。
「戻ってくるまで六日くらいかかると思うんで、万が一のときは逃げてくださいね」
「安全第一、命大事に、じゃろう?」
「ええ、安全確実がゴブリン駆除ギルドですからね。では、お願いします」
ホームにいき、濡れても大丈夫な格好に着替えてきたら町に向かった。
マルチシールドにヒートソードを取りつけ、槍のように伸ばして雪の中を進んでいく。
二千度にしているので電池交換が面倒で仕方がない。てか、腕を伸ばしたままだからつってきた。
電池が切れる毎に交換休憩し、夜になったらホームへ。二日かかって町に到着できた。ふぅー。
「タカトさん、お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
三時間前にホームにいたが、お帰りなさいと言ってもらえるのは嬉しいものだ。
「伯爵のところにいってくるからエルフをマイセンズの砦まで届けてくれ」
パイオニアが走れる幅は溶かした。トレーラーに乗せたら四往復でエルフを運べるはずだ。メビも運転できるしな。
「はい。任せてください。メビ。さっそくいくわよ!」
「了ー解!」
やる気満々なミリエルとメビ。町に閉じ籠っていたから鬱屈してたのかな?
「ビシャ。護衛を頼むな」
姉のほうにも役目を与えないと拗ねられるからな。オレの護衛を任せよう。
「うん! 任せて!」
やる気満々なビシャに護衛されて館に向かい、伯爵に報告と、アシッカの状況を伯爵の口から説明してもらった。
その日は館に泊まり、伯爵と酒を酌み交わす。飲みニケーションは大切だからな。あー酒が美味い!
二人して潰れてしまったが、これも息抜き。二日酔いになるのもストレス発散になるんだよ。
「伯爵。オレは支部にいって説明してきますね」
昼になってやっと二日酔いが消えてくれた。ちょっと飲みすぎました。ごめんなさい。
「タカトは働き者だな」
「マイセンズのことが終わればゆっくり休みますよ」
「それ、死亡フラグと言うんじゃなかったか?」
オレ、そんなことまで教えたっけ?
「あはは。そうならないよう気をつけますよ。伯爵こそ働きすぎて奥方に怒られないように」
「ほどほどに、だろう。無理せず任せられる仕事は任せる。教えられたことは実践していくさ」
すっかり砕けた伯爵様。オレが考える以上に抑圧されてたんだな。
館から支部に移動し、職員から報告してもらった。
「周辺の男爵領から結構きているんだな」
伯爵も言っていたが、この雪でよくくるものだ。行商奴隷団が置いていった品はそれほど多くないのにな。
まあ、塩はオレらが供給しているから買いにきても不思議ではないが、百人規模の人がやってきてるとなると首を傾げるしかないよ。
「仕事があると噂されてきたようです」
「仕事か。ギルドにくるようなら巨人砦に向かわせて道を造らせてくれ」
マイヤー男爵領までの道を築いてくれたら移動が楽になる。一日大銅貨一枚で雇い入れよう。てか、こちらの金も稼がないとダメだった。どこかに金になる魔物はいないだろうか?
「わかりました。もう戻るので?」
「ああ。ギルドを維持するためにもゴブリンを駆除しないといけないからな」
なんか急に報酬が入り始めた。どうやら洞窟の奥から大量のゴブリンが出てきたようだ。ハァー。
「じゃあ、アシッカを頼む」
KLX230を引っ張り出してきてマイセンズの砦に向かった。




