表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1278/1282

1279 女神を表したかのような星

 肉の味を知ったからにはあとには戻れない。ってな感じでニゴ捕獲隊が結成された。


 ここは山で小川くらしかないが、それでも探すとそれなりにいるものである。たまに熱源センサーに小さく反応してたのはニゴだったんだな。ゴブリンばかりに目がいって気にもしなかったよ。


 一日で五十匹は生け捕りしてきた。あまり俊敏な生き物じゃないようだ。外敵がいなかったか?


 変な病気があるのかもしれないので、まず飯場村の外に繁殖場を作るとする。


 柵を齧るわけでもなく、ばら撒いたカロリーバーを我先に齧っている。外敵はいない分、食うものも少ない、ってことなんだろうか? この世界の食物連鎖、どうなってんのよ?


「命が多いようでそんなに循環できるほど少ないのかもな」


 まあ、何度も滅んでいたら命の数も減るか。よくここまで命が復活したことを驚くべきだろうよ。


 ……地球が奇跡と言われるのも納得だわ……。


「女神を表したかのような星だぜ」


 アンバランス。まさにそうとしか表現できねーよ。


「サイ。カロリーバーが以外にもニゴが食うものを探しておいてくれ。エサで肉の味が変わる。ここだけのニゴを育てれば他にも売ることができるからな。ここだけのニゴがあれば故郷の味にもなるはずだ」


「……故郷の味……」


「ここはもうサイたちの故郷だ。なら、故郷の味が一つでもあったほうがいいだろう」


 食は文化。アイデンティティーだ。そんなものがあったっていいじゃないか、だ。


「もうお前たちを苦しめる者はいない。いたらセフティーブレットが駆けつける。大いに栄え、子を増やしたらいい。でも、自然も大切にしろよ。自らの手で自らの故郷を守るんだ」


 そうすればゴブリンの生息域は減る。どこかに隔離してしまえば駆除も楽になるってものだ。


「ありがとうございます」


 全員が平伏してしまった。


「もうそんなことをするな! 礼が言いたいなら立ってしろ! お前らはもう奴隷でもなければ家畜でもないんだぞ! 二度とするな!」


 ドワーフたちを叱りつけた。すぐには無理でも奴隷根性は捨てろ。なんか女神に服従しているように見えてイライラする。


「神に祈る前に自分の力で挑め! 仲間を頼れ! 誇りを持て! お前らの先祖は奴隷や家畜になるために子を残してきたんじゃない。繁栄するためにがんばってきたんだ。矜持と誇りは絶対に忘れるな」


 女神が救わなかった理由はそこだろう。知的生命体以外はどうなってもいいのだ。


「だからって驕るなよ。命には敬意を払え。特に自分を生かしてくれる命にはだ。感謝を忘れたら人としての大切なものを失ったと思え」


 これはオレ自身にも言えることだ。今を当たり前とは思うな。オレはたくさんの命に支えられている。それを忘れたとき、オレはすべてを失うだろうよ。


 ドワーフたちがノロノロと立ち上がった。


「そうだ。お前たちはそうやって立ち上がった。仲間や子を守った。だから今があるんだ。これからをともに生きる仲間として、ドワーフを尊敬するよ。じゃあ、またくるからな」


 パイオニア六号に乗り込み、次はマーダ村を目指した。


「皆、手を振ってるよ」


「代わりに振り返しておいてくれ」


 オレは運転中なので。


「またタカトが神格化しちゃったね」


「困ったもんだよ。オレは皆の支えがあってこそ生きられているのにな」


 オレ一人ではここまではこれなかった。たくさんの仲間と家族を得られたから先に進めるのだ。


「まあ、ドワーフががんばってくれるならなんでもいいさ。コラウスとランティアック間の道は守られる。さらに距離が縮まるんだからな」


 オレにとって重要なのはそれ。陰で祈られようが知ったこっちゃない。利用し利用されお互いウィンウィンになれたらオールオッケーだ。


 途中で道を整備してくれている巨人たちと遭遇。ワインを差し入れする。


「いい道だよ。ありがとな。今後ともよろしく」


 そう言葉を残して先を進み、夕方にはマーダ村に到着できた。


「ここも発展著しいな」


 ロースト村との道ができたから人と物の流れができつつあるのだろう。さらに増えてくれたら一日で横断できそうだ。


 オレたちがきたことはすぐに村中に広まり、支部(発着場)に着いたらカガリと嫁の……アリャ? コリャ? ──あ、マリャだ!


「問題なく過ごせているようだな」


「ああ。平和だけど、目まぐるしい日々だよ。ロースト村から麦が流れてきて毎日パンが食えるようになった」


 小麦が流れてきている? コラウスにそんなにあったか?


「それはなによりだ。肉はどうだ?」


「猪を増やしているところだ。お陰でカロリーバーがなくなりそうだよ」


 カロリーバー、大人気だな。こりゃ、運ぶ方法を考えないといかんぞ。


「わかった。あるだけ出すよ」


 もうガレージに入れられている。ここでもすべて出していくとしよう。


「なんか村が広がってないか?」


「畑を作ろうと思ってな。今、伐っているところだ」


 仕方がないとは言え、無制限に伐られても困るので、点在するようにお願いした。そういや、この世界でも連作障害とか起こるんだろうか? 肥料とかはどうなんだ?


 農業はさっぱりなので、コラウスから農業に詳しい者を派遣してもらうか。人口増加する前に食糧危機になったら困るからな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ