第5話 集まる情報
逃亡7日目
スコット伯爵令息のところを訪れた。
スコット様のお父様は騎士団長を務めている。
「アリス嬢!サリーシャ嬢!ようこそ我が家にいらっしゃった!アリス嬢にはあの時は世話になった。今こそご恩を返すときですな!ガハハ!」
迎えてくれたのはスコット様ではなくお父上の伯爵様だった。
「もう!父上!アリス嬢、サリーシャ嬢、ようこそいらっしゃいました。ここにいる間は、僕と父上でしっかりお守りするのでゆっくり休んで下さいね」
スコット様は筋肉バキバキの伯爵様と違い、物腰の柔らかい線の細いお方なのだが、見た目と違って未来の剣聖と言われるほど実力があるのだ。
「伯爵様、スコット様ありがとうございます。伯爵様もアリスと面識がおありなのですね」
「サリーシャ嬢!よくぞ聞いてくれた!あれは王都の外れに魔物が現れた時のこと………」
つまりイベントがあったのだ。
王都の外れに魔物が現れ騎士団が向かうことになった。急きょだったので、若いながらも実力者であるスコット様も一緒に向かった。
ところが想定より魔物の数が多く苦戦しているところへ聖女アリスも参加し、使用回数がそれぞれ決められたテレポート・結界・治癒魔法を駆使し戦況を変えていった。
騎士団によって魔物が殲滅されイベントクリアしたのだった。ここではなぜだか新たな力は手に入らなかった。
「なるほど!あの戦いにはアリスが関わっていたのですね!」
サリーシャが尊敬の眼差しでこっちを見ている。元自分に見つめられるなんて変な気分だ。
「アリス嬢は自分が活躍したことは言わないでくれと。そんな奥ゆかしいところも素晴らしいのだ!ぜひスコットの嫁に来てほしいのだか、なかなか色よい返事がもらえなくてな」
攻略対象になったのは伯爵様かと思うくらいに好感度が高い。スコット様は空気になってますよ〜。
「騎士団の方にもサリーシャ嬢の捕縛依頼が来ていてな。納得が出来ないから、王命以外では動かんと蹴散らしてやったわ!サリーシャ嬢も災難だったな」
「父上は納得出来ないことはやりませんからね。王子は一体どうしたのでしょう。この間王城に行ったときには2人の側妃様の実家の者たちが我物顔で練り歩き、アルト王子の乳母とも親密そうにをしていましたよ」
「陛下が不在の間にけしからんな!」
今まで以上に警備が整っている伯爵家のお屋敷で久々に個室で就寝することになった。
簡単な法則にのっとって3人目のスコット様まできた。どうやら順番を間違えないでストーリーが進むとアルト王子の情報が入手出来るようだ。謎解きのようになっているみたい。
整理すると………
コンコン
部屋を誰かをノックしている。
「サリーシャです。少しお話しできるかしら?」
サリーシャを招き入れるとソファーに向かい合い座った。
「サリーシャ様どうしました?」
「ちょっと聞いてくれるかしら?私、最近みんなに聞いた話を考えてみたの。アルト様のことよ」
わたしたちは2人で今までのことを整理した。
アリスに執着しサリーシャを敵視しているアルト王子、そのアルト王子の側には亡くなったはずの乳母が側にいる。王城には我が物顔で歩く側妃の実家の者たちと接触するアルト王子の乳母。
「アルト様のお側にいる乳母が何者かしら?誰であろうとアルト様のお側にいるものが側妃の実家の者たちと親密に接触するのはおかしいわ」
「そもそも亡くなったはずなのにおかしいですよね!本物でしょうか?」
私たちは目を合わせた。
――――――――
逃亡8日目 昼
今日は陛下とランドマーク公爵夫妻が帰国する。
王城に向かえばイベントクリアのはず!!
「アリス!さあ、王城に行きましょう!あなたの先読みでは8日逃げ切れば陛下とお父様たちが帰ってくるのよね!」
「そうね!」
でも、攻略対象はもう1人残っている………
「サリーシャ様、ちょっと待ってください。もう1人行かなければならない人がいるんです」
「どういうことかしら?もう潜伏する必要はなくなったじゃない?今日のこの日が来たのよ」
サリーシャの言うとおり、もう匿ってもらう必要はないけど、でも………なんだか嫌な予感がする。決め手にかけるというか何かが足りない気が。
「サリーシャ様!私を信じて!もう1人会わなければならない気がするんです!」
サリーシャは困ったような顔をしたあと、ニッコリ笑った。
「アリス!私、あなたを信じるわ。聖女だからじゃなく、今まで私を連れて逃げてくれたアリスを信じるわ!」
「サリーシャ様、ありがとうございます!」
「ずっと言おうと思っていたのだけれどサリーシャ様じゃなくて、サリーと呼んでもいいのよ。だから、サリーと呼んでくれるなら行くわ」
サリーシャが微笑んでいる。
サリーシャは仲がいい友達にサリーと呼んでほしかったのよね。
「わかりました、サリー!」
私もとびっきりの笑顔で答えた。
――――――――
私たちは町外れのトムのところへ急いだ。
トムは私の幼馴染みだ。
トムのイベントは、「トムの救出」だった。
下町育ちのトムは身軽という特技を生かして情報屋の真似事をやっていた。子供だから通れる場所、隠れられる場所などにうってつけだったのだ。
そんなトムがある貴族の屋敷に忍び込んだとき、部屋に閉じ込められてしまった。顔は見られていないものの逃げることが出来なかった。そこにアリスが登場しパズルゲームをクリアすることで、テレポートを取得しトムを救出するのだ。
「アリス!久しぶりじゃん!なんだよ〜!すっかり貴族様になっちまって。何?こっちの世界が懐かしくなった〜?」
人懐っこい笑顔でトムは出迎えてくれた。
「トム!あんたは変わんないわね。安心した」
昔と変わらないトムになんだかホッとした。
それから昔ばなしに花を咲かせて楽しい時間を過ごした。最初は遠慮していたサリーシャも話に加わった。
トムなんていつの間にか「サリーシャちゃん」なんて呼んでいる。
トムの笑顔に癒されてから王城へ行くってこと?
それともトムのところに来なくてもストーリーは進んだ?
日が暮れてきた。そろそろ王城に向かわなくては。
「トム。そろそろ私たち戻らないと」
「ちょっと待って。サリーシャちゃんの名前を聞いて思いだしたんだけど、お前に助けてもらったときのこと覚えてる?あの時侵入した貴族の家なんだけど……………」
トムが語った内容こそ、私とサリーシャが必要としていた情報だ!やはり、トムのところまで来なければならなかった!
そして、私の新たな力「浄化」が発現された!
トムからもとある物を預かった。
これ力は色々使える!!
私たちは急いで王城に向かった。