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第3話 イベント開始

「ルーファス王子(隣国)」「アベル公爵令息」「スコット伯爵令息」「幼馴染のトム」


アリスの記憶だとこの4人がこれまでイベントをクリアして攻略対象になっている。


どこから行こうか……

どういう順番でクリアだっただろう?

真理の時は失敗してもまたやり直せたけど、これが現実世界になっている以上失敗は許されない! 



そうだ!最初は「アベル公爵令息」のところだ!


この初めてのイベントでは、落馬して怪我を負ったアベル様の治療を治癒魔法で行うというものだった。

クリア条件は女神様の出題するクイズに10問正解することだった。そうすると治癒魔法を使えるようになる。


「サリーシャ様、最初にアベル様のところに参りましょう」

「アベル様のお屋敷ね!わたくしの従兄なのよ。お母様の妹様が嫁がれているの。お優しい方たちだから」

そうだった。優しい人たちだった。遠い昔のことのようで懐かしい。


逃亡5日目の昼 予定通り結界に侵入者が感知されたので王都への最後のテレポートをした。



 逃亡生活5日目(パーティーから4日後)


アベル様と公爵夫妻は逃げてきた私たちを匿ってくれた。

夫妻は卒業パーティーでのことを知って、姪であるサリーシャを気にかけてくれていたらしい。

サリーシャはギュッと夫人に抱きしめられ涙していた。


夕食は料理人の作ってくれた料理!さすが美味しい!

別荘では私が料理をしていたけど、プロと比べたらねぇ!

この牛肉のステーキなんで絶妙な焼き加減。



食後、サロンで紅茶をいただいていると

「アリス嬢。君の治癒魔法で僕の身体も心も癒やされたんだ」

と、うっとりした顔でアベル様が私を見ている。 


「アベル様!アリスが引いておりますわよ。締まりのない顔を引き締めて下さる?」

サリーシャが冷めた顔でアベル様を見ている。


「サリーシャは相変わらずだね。しっかりしている君だからこそあの王子の婚約者には相応しいよ。君たちが卒園パーティーから消えたあと王子は狂ったように君の名前を言ってフラフラと支えられて帰っていったからね。なんだか様子がおかしかったな。あんな人じゃなかったのに」


「アルト様が!そんな……」

サリーシャが青い顔をしている。アルト様の姿を想像したのだろうか。


「もちろんアリスのことも探しているよ。アルト様の目が怖かったよ。もちろん、僕がアリスを守ってあげる。

アルト様は最近は変なんだよね。()()()()からアルト様は1人になりたがるんだ」


「アベル様は今も側近として仕えていないのですか?

アリスの記憶ではアリスがアルト様に拉致(連れて行かれる)時はアベルもそばに控えていたはず。


「アリスと共に過ごす時だけだよ。それ以外は1人が多いかな。でも、アリス!君が我慢してアベル様のお側にいたのはわかっているから安心して!」


「アリガトウゴザイマス」

つい真顔で棒読みしてしまった。アベル様のちょいちょいアピールがウザいです。


 

明日、また移動しなければならない。

公爵夫妻は引き止めて匿ってくださるというが、血縁があるということで一度捜査を受けマークされているはずなので長居は出来ない。迷惑はかけたくないのはサリーシャも私も一緒だ。


次はどこにしよう。ここからは未知の世界だ。 

たしか、アベル様の次の順番で試していないのは隣国から留学している「ルーファス王子」だけだったはず。

ルーファス王子は王都内の広いお屋敷を貸し与えられているのだ。




 逃亡生活6日目(パーティーから5日後)

「アリス♡僕の天使、いや僕の聖女様!僕と一緒に隣国に来てくれる気になったのかな?」

ルーファス様は満面の笑みで私たちを迎えてくれた。


ルーファス王子のイベントでは、学問と魔物対策を学びに留学したルーファス王子と結界が使えるようになりたいアリスが特訓と言う名のミニゲームを4個ほどクリアし結界を習得するのである。元々隣国の王族や高位貴族は魔法が使えるらしいので、ルーファス王子の習得は早かった。


結界はサリーシャの別荘で使ったやつね!

魔物の侵入は拒むけど、人間の侵入は拒めない結界だ。ただ、侵入者の感知は可能なので色々使える。


「匿っていただきありがとうございます。ルーファス様、私は隣国には行きませんよ」

ツンとした態度でルーファス様に伝える。


「ルーファス殿下……」

サリーシャが驚いた顔でルーファス王子を凝視している。


「げげっ!?おっほん。サリーシャ嬢もいらしたのか。いや、そのアリス嬢とは親交があってだね」

ルーファス王子は慌てているが、サリーシャにバッチリ見られて幻滅されかけている。


「サリーシャ嬢も災難だったね。アリスとともに我が国に来るかい?僕の正妃はアリスだから、妃に迎えることは出来ないけれど君のような聡明な女性なら歓迎するよ」

王子スマイルをサリーシャに振りまきつつ、私にも優しい王子アピールもわすれない。


「ルーファス殿下のお気遣いに感謝いたします」

サリーシャは淑女の笑みだが、後ろにはブリザードが見えるようだ。


「だから、隣国には行きませんよ。正妃だなんて勝手に決めないで下さいよ!もう!」

勝手に話を進めないでほしい。


「ふふふ。アリスのそういうところがいいんだ。

そういえばアルトはあんなに乳母にベッタリだったのかな?この歳で乳母に世話を焼いてもらうようではね」


「えっ?!アルト様の乳母ですか?」

サリーシャも私も驚きを隠しきれない。


「ああ。君たちが消えた会場で、アルトに乳母手づからワインを飲めせてアルトを支えて会場を後にしていたよ」



だってアルト様の乳母は………


「ルーファス殿下!アルト様の乳母をご存知なのですか?」

サリーシャが堪らずルーファス王子に詰め寄った。


「私がこの国にやって来て学園に入学する時にちょっとトラブルがあってね。その時にアルトの乳母がうまく立ち回ってくれたのだよ。珍しい髪の色だから間違えないだろう?」



その日の夜も私たちは同室にしてもらっていた。

「アリス様はご存知ないかと思うのですが………アルト様の乳母は、半年前に亡くなられているんですよ。ちょっと事情があってあまり公にはされていませんが。もちろん、ルーファス殿下にも知らされていません」


「そうだったんですね」

知ってる!元サリーシャだったからね。

半年前アルト様が暗殺未遂にあった。その時アルト様を庇って亡くなったのが乳母なのだ。乳母の遺言で死は公にされていない。


「だから卒業パーティーにアルト様の乳母が現れたというのはおかしいのです。ここ最近、アルト様の様子がおかしかったことに何か関わりがあるのでしょうか」


「そうですね。以前は(聖女)にも一般の生徒と隔たりなく接してくれていましたが、最近は執着されていた感じがありました。その分、サリーシャ様には……」

冷たく接していたのだ。


私がサリーシャだったとき、ある日からアルト様が急にサリーシャに冷たくなった。そしてアリスに執着を見せ始めた。

アリスが何かしてアルト様を虜にしていたと思っていたが、

アリスの記憶を思い出すと、アルト様に好意は抱いていない。むしろ不気味に思っていたけど、王子様には逆らえなかったみたいだ。


あ、サリーシャの時に処刑された日がもう過ぎている。

私はちょっとだけホッとした。






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