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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

元下級貴族の異世界無双

作者: 黒色の猫

 僕は、子爵家の第2夫人の子供として生をうけた。

 もともと体の弱かった母上は、僕が生まれたと同時に亡くなったそうだ。その際で、僕は母上の愛を知らずに育った。

 だけど、僕は不貞腐れる事なく、逆に母上への恩に対する為に、勉強や剣術を精一杯やって生きた。それが、唯一の孝行と信じて。そのおかげで、神童などと言われている。


 僕の家族は、父上、第1夫人のユーベル様、そして同い歳の弟がいる。第1夫人のユーベル様の子供だ。僕たちは偶然にも、同じ日に生まれた。僕の方が少し早かったのようで、僕が兄となった。だけら、弟と言っても、同じ時間を過ごしたせいか、弟と言うよりどちらかと言うと、幼馴染みと言った方が、しっくり来る。まぁ、ちゃんとした幼馴染みもいたので、その関係で、弟も幼馴染みの方がしっくり来るのかもしれない。



 ◇



 僕と弟…イディオも今日で、8歳になった。


「おめでとう、ディーオ、イディオ。」


「「ありがとうございます、父上。」」


 そんな言葉で、朝食が始まった。

 今日はこの後、幼馴染みのシャルルが遊びにやって来る予定だ。

 朝食を食べ終えると、父上は、


「それじゃあ、私は仕事に戻る。後は、任せたぞユーベル。」


「はい、あなた。」


 そう言って、父上は、執務室に戻っていった。


「イディオちゃんついでにディーオさん、こっちにいらっしゃい。」


「はい。」


 僕たちは、ユーベル様に呼ばれ、席をたつ。


「はい、イディオちゃん。欲しがっていた魔法書よ。」


「ありがとう、母さん。」


 イディオは、どうやら魔法書を貰ったようだ。


「ディーオさん、こちらが貴方の分よ。」


 僕は、小さな小袋を貰った。


「ありがとうございます、ユーベル様。」


 中身は、いつも通り、お金だろう。

 ユーベル様は、僕の事があまり気に入らないようだ。

 自分で言うのもあれだが、僕はイディオより、能力が高い。

 僕の方が賢く、イディオとの模擬戦も全戦全勝。唯一負けているいうなら、僕はまだ魔法は使えないが、イディオは、威力は弱いがすでに風の魔法を扱う事が出来る。

 それに、一応僕が領主後継者なのも理由の1つだろう。実のところ、僕は余り領主に興味はない。イディオが継いでも良いさえ思っているくらいだ。


 そんな事を考えていると、メイドが慌ててやって来た。


「シャルル様がおいでになられました。」


「分かりました。」


 僕はシャルルが来る前に、イディオ後ろに並ぶ。そうしないと、ユーベル様が良い顔をしないからだ。

 少しして、シャルルを連れてメイドがやって来た。

 シャルルは部屋に来た瞬間、イディオの後ろにいた僕にむかって走ってくる。


「誕生日おめでとう、ディーオ様。」


 とびきりの笑顔で、祝ってくれる。


「ありがとう、シャルル。」


 返事を返しながら、だ僕は、喜んでくれているシャルルを目で促す。


「!? イディオ様も、おめでとう。」


 察してくれたようで、すぐに振り返りイディオにも、お祝いの言葉を言う。


「ありがとう、シャルルさん。」


 すると、ユーベル様も話に加わってくる。


「いらっしゃいませ、シャルル様。ここでは何ですし、別室にご案内します。イディオ、ご案内しなさい。」


「分かりました、母上。」


 僕は、チラッとシャルルをみると、皆に気づかせないように少し頬を膨らませていた。


「それじゃあ、兄さん、シャルルさん行こうか。」


「あぁ。」 「はい。」


 イディオに連れられ、食堂を後にする。

 イディオは、客間にむかわず、何故か僕の部屋にむかっている。


「なぁ、イディオ、こっちは客間じゃなくて、僕の部屋の方向だよ。」


「えっ!! で…ディーオ様のお部屋…いってみたい…」


 ん、シャルルが何か言っているようだが、良く聞き取れない。


「そうだよ、兄さん。悪いんだけど、魔法書を読みたいので、シャルルさんの相手をお願いしても良いかな?」


「それは、別に良いけど、何で僕の部屋? それにいいのか?」


 僕は、知っている。イディオがシャルルに引かれている事を。


「あぁ、大丈夫だよ兄さん。それに、そっちの方が良いと思ってね。」


「どういう事だ? シャルルも客間の方がいいよね?」


「ぜひ、ディーオ様のお部屋でお願いします!!」


「えっ!! まぁ、シャルルがそれで、いいのなら。」


 すぐに、僕の部屋にたどり着いた。


「それじゃあ、兄さん悪いけどお願いね。飲み物は、僕が兄さんの部屋に持ってきてくれるように、頼んどくよ。」


「あぁ。ありがとう、イディオ。」


 そう言って、イディオは、戻っていった。


「それじゃあ、シャルル散らかってるけど、どうぞ。」


 部屋を開けると、シャルルは、凄い勢いで部屋の中に駆けていった。

 僕も部屋に入ると、シャルルはベッドで横になっていた。


「どうかしたの、シャルル?」


 少し顔を赤くしながら、シャルルは、起き上がる。


「す…すみませんディーオ様… 少し疲れていまして…」


「大丈夫? 誰か呼ぼうか?」


「だ…大丈夫です!! 少し横になってれば、良くなると思いますので…」


「そう? なら、僕なんかのベッドで悪いけど横になっててもいいよ。」


「ありがとうございます!!」


 そう言って、再びベッドに横になる。

 横になるのはいいけど、枕に顔をうずめるのは何か恥ずかしいのでやめて欲しい。


 コンッコンッ


 ドアをノックする音が聞こえる。


「お飲み物をお持ちしました。」


「今取りいきます。」


 メイドからティーセット一式を受け取る。

 これでも、紅茶をいれるのもお手のものだ。手早く、準備を済まし、紅茶を入れる。


「紅茶が入ったよ、シャルル。」


 シャルルは、ベッドから起き上がり、こっちにやって来る。


「ディーオ様の紅茶は久しぶりですね!!」


 紅茶を飲みながら、談笑を始める。



 ◇



 コンッコンッ


「俺です、母さん。」


「入りなさい。」


 部屋には、母さんしかいなかった。


「イディオちゃん、こっちに座りなさい。」


「はい、母さん。」


 俺は、椅子に座る。


「それで、彼は?」


「はい、なんの疑いもなく、今は、シャルルと話をしている筈です。」


「そう。それで、計画は?」


「はい、しっかり行う予定です。この後、俺は、屋敷を出ますので、後の事は、頼むよ母さん。」


「えぇ、分かってるわ。イディオちゃんを領主にする為、失敗は許されないわよ。」


「はい。では、いってきます。」


 母さんの部屋を出て、計画を実行するために、俺は動き出す。



 ◇



 シャルルとの談話は大抵がシャルルの話を聞くだけだ。


「そういえば、シャルル、今日はいつまでこっちにいられるの?」


「今日は、この街に止まる許可をお父様から頂いたので、夕方くらいまでなら大丈夫です!!」


「そ…そうか。」


 シャルルは、僕の家、子爵家より爵位の高い、侯爵家のご令嬢だ。シャルルの父上が僕の父上と王都の学校で仲良くしていた関係でしかも、領地も近いこともあり、良くシャルルは遊びに来ていた。


「それで、どこまで話しましたっけ…」


 コンッコンッ


 ドアがノックさせる。


「どうぞ。」


 入室許可を出すと、何と入ってきたのは、ユーベル様だった。


「どうかされましたか、ユーベル様?」


「イディオちゃんが、こっちに来てないかと思って。」


「イディオ? イディオなら、魔法書を読むと言っていましたが?」


「屋敷を探させたのだけど、どこにもいないので、もしかしてここかと…」


「そうですが。来てないですね。」


「そう…」


 すると、再びノック音がする。


「お…奥様大変です。」


「どうぞ。」


 ユーベル様が入室許可を出す。一応、ここは僕の部屋なのだけど…

 次に入ってきたのは、ユーベル様側仕えのメイドだった。


「イディオ様のお部屋にこれが…」


 ユーベル様は、メイドから紙を受けとる。それを読んだユーベル様は、紙を落とす。紙は僕の足元まで舞ってきた。

 僕はそれを拾い、シャルルと一緒に読んでみる。



 魔法の練習をするため、近くの森に行ってきます。

 そんなに、遅くならないように帰ってきますので、心配しないで下さい。 イディオ


 僕たちは、息を飲んだ。

 近くの森と言うと、たぶんあそこの事だ。


「すぐに、調査隊を派遣しなさい。」


「はい、かしこまりました。」


 ユーベル様は、落ち着いた口調で、指示を出す。

 僕も、イディオの事が心配だ。


「ユーベル様。僕も調査隊に加わっても宜しいでしょうか。」


 一瞬、ユーベル様の口角が上がったように見えた。


「そう。ぜひ、お願いするわ、ディーオさん。私は、この事を、あの人に伝えてくるわ。先に、森の方へむかって貰える。」


「? 分かりました。そう言う事だから、シャルル悪いけど待ってて貰える。」


「わ…分かりました… 気を付けて下さい、ディーオ様…」


「あぁ、それじゃあ行ってくる。」


 僕は自分で買った、皮鎧と剣を持ち、一足先に森へむかう。



 ◇



「近くの森と言うと、やっぱりここだよな。」


 僕は近くの森、通称魔の森の前にやって来た。魔の森関連の本を前に読んだ事がある。確か、ここは低級クラスのモンスターが生息しているみたいだ。更に奥には、崖がある。崖の高さは300メトル、崖の底の森は半径5キロメトル。崖で周囲を覆われており、外界から遮断された魔の森の最奥、通称深淵(アビス)。この深淵アビスには、最上級のモンスターが跋扈し、更に最上級のダンジョンがあると言われている。なぜ、言われていると曖昧なのは、深淵アビスから、帰って来た人がいないからだ。


「調査隊を待つべきか…」


 すると、3人組の冒険者らしき集団が森から出てきた。

 僕は彼らに話を聞くために、話しかける。


「すみません、ちょっと良いですか?」


「ん、どうしたの坊や? ここは危ないよ。」


 後ろにいた、女性が返答してくれる。


「少し、お聞きしたい事があるのですが、お時間大丈夫ですか?」


「聞きたい事? 私たちも今帰る所だから大丈夫よ。それで、どうしたの?」


 僕は、イディオの事を聞いてみる。


「うーん、私は見てないかな? あんたたちはどう?」


「俺も見てないな。」 「あ、僕見たよ。」


「本当ですか!!」


「あぁ。確か僕たちがゴブリンの討伐中に、それらしき子供が奥に入っていってたよ。声をかけようかと思ったけど、すぐ見えなくなったから、声をかけそびれたんだよ。」


「そうですか… 情報ありがとうございます。」


「いいよ、気にしないで。」 「それじゃあ、坊やも森に入っちゃダメよ。」 「俺たちも帰るぞ。それじゃあな、坊主。」


「はい。気を付けます。」


 冒険者たちは、街へと帰っていった。

 イディオが、森の奥へ… 何でだ?

 それにしても、調査隊もまだ、来ないな…

 更に心配になった僕は、1人で先に森に入ることに来た。



 ◇



 彼が屋敷を出発したのを確認して、私は自分の部屋に戻り、通信を行う。


「イディオちゃん、今彼がそっちにむかったわ。」


「了解、母さん。それにしても、あいつは森に入ってくるかな?」


「彼は、お人好しだから大丈夫よ。それに、冒険者に扮した使いにイディオちゃんが森の奥へ進んだことも伝えさせるから、なおさらね。」


「了解。気長に待ってるよ。」


「それよりも、イディオちゃん、モンスターに襲われていない?」


「あぁ、一応、魔除けの香を焚いてあるから、大丈夫だよ。」


「そう、それじゃあ気を付けてね。成功を祈ってるわ。」


「良い報告を持って帰れるようにするよ。」


 そう言って、俺は通信を切る。

 今俺は、木の上に登ってあいつが来るのを待っている。

 ふと、昔の事を思い出す。

 あれは、3年前、突然の発熱の後、俺は地球で生活していた頃のの記憶を取り戻した。取り戻したと言っても、前世での名前や普段の高校での思い出ぐらいだ。


「それにしても、何だよこのステータス。せっかく異世界に転生したってのに、チートも糞もありゃしねぇ。せいぜいショボい風魔法が使えるくらいだ。この歳で魔法が使えること事態凄いみてぇだが、あいつがいるせいで、霞んでしまいやがる。」


 怒りを募らせた俺は、その怒りをぶつけるように、木を殴る。

 殴って、少しは気分がはれたのか、あいつがいなくなった後の事を考える。


「まぁ、いい。あいつは今日でいなくなる。シャルルの奴も俺のものにしてやる。」


 そんな欲望を口にしながら、あいつが来るのを、待った。



 ◇



「やっぱり、広いな…」


 かなり奥までやって来た。途中スライムや単体のゴブリンと戦闘したが、それらを倒し、奥へと進んできた。複数体のゴブリンやオークとの遭遇時は、即逃げ出したので、今のところ怪我を追っていない。

 イディオを呼びながら、進めばもう少し探しやすいが、ここで大声をあげるなら、モンスターを呼び出すだけなので、していない。


「イディオ、どれだけ奥に進んだのやら…」


 僕は、更に警戒心を強めながら、奥へ進んでいく。

 少しして、森を抜けた。どうやら、深淵アビスの周りの崖の上は、木ははえていないみたいだ。その崖の上で、ボロボロの装備を纏った倒れているイディオを発見する。


 僕は、急いでイディオのもとに駆け寄る。


「大丈夫か、イディオ。」


「に…兄さん…」


「良かった… 帰ったら説教だからな…」


「ごめんね、兄さん…」


「たてるか、イディオ。」


「大丈夫だよ。」


 イディオは、スッと立ち上がる。


「? なら、帰ろうか。」


「それよりも兄さん、あそこの崖の少し下の所に珍しい花が生えているけど、手が届かないんだ。。」


「珍しい花? それがどうかしたのか?」


「シャルルに持って帰ってやろうかと思って…」


「はぁ、分かった。今とってやるから場所を教えてくれ。」


 イディオは、顔を伏せたまま、崖を指差す。

 少し不思議に思いながら、崖の方へむかう。


「ここか?」


 イディオに確認しようと、振り替える。

 すると、イディオは、笑っていた。その顔はとても醜く歪んで見えた。


「ど…どうしたイディオ?」


「お前、本当に馬鹿だよな!!」


「!?」


 突然のイディオの豹変に僕は声をつまらせる。

 イディオは、笑いながら、僕に今まで思っていたことをぶつけてくる。


「そっか、今まで悪かったなイディオ…」


「謝らなくても良いぜ。何て言ったって、今日は俺にとって最高の日になるからな!!」


「?」


 最高の日? なんの事だ。イディオは、今までより更に醜悪に笑う。


「風よ 集まりて 敵を吹き飛ばせ "ウィンドボール"」


 圧縮された風が僕に襲いかかる。

 躱そうとするも、魔法の方が早く、僕のお腹にヒットする。

 そのまま、僕は宙を舞い、崖下へと落ちていく。



 ◇



「くくく、あーはっはっはっは。」


 俺はついにやった。あの野郎を殺ってやった。

 通信の道具を起動し、母さんに連絡する。


「母さん、手はず通り、あいつは崖下に落ちていったよ。」


「良くやったわ、イディオちゃん。もうそろそろ、調査隊が到着する筈だから、一緒に帰ってきなさい。


「了解。」


 通信を切り、俺は調査隊と合流するため、森へ入っていく。



 ◇



 目を開けると、木を見上げていた。

 助かったのか…


「!!」


 激痛が体を襲う。体を動かそうにも言うことを効かない。

 すると、突然頭が割れそうな程の痛みを覚える。

 なんだ、頭が割れそうだ。

 すると、左側の茂みから、音が聞こえた。

 朦朧とする意識の中で、左目のみ動かし見てみる。

 すると、茂みから、体の大きなモンスターが這い出てきた。

 手には、僕よりも大きな木を握っている。

 頭の痛みがひいていき、僕の意識はそこで途絶えた。



 ◇



「シャルル様、調査隊が帰ってきました…」


 客間で待っていた私の元に、私の側仕えのメイド…メイがその知らせ持ってきてくれた。


「本当ですか!!」


 私は、すぐに立ち上がり、玄関へむかう。

 そこには、ボロボロの装備を纏っていたイディオがいた。


「い…イディオ様、無事だったのですね… それで、で…ディーオ様は…」


 嫌な予感がして、私の声は震えていた。


「心配かけて、すみませんシャルルさん。兄さんは…」


「お…お怪我をされたのですか!!」


「いや、怪我ではなく…」


「な…なら何が…」


「兄さんは、僕をモンスターから庇って、崖下に落ちたんだ…」


「!!」


 私は、その言葉の意味が一瞬分からなかった…


「で…ディーオ様が、落ちた… が…崖の下に…」


「はい。」


 私は、瞳に涙をためながら、走り出そうとすると、後ろから手を捕まれる。振りむくとそこには、メイがいた。


「手を離し下さい、メイ!!」


「なりません、シャルル様。」


「で…ディーオ様が… ディーオ様が待ってるんです!! 話して下さい!!」


「なりません、シャルル様。辛いようですが、シャルル様がむかっても何も変わりません。」


 その言葉で私は、膝の力がぬけ声を殺し泣いた。



 気づいたら、私は客間にいた。どうやら、メイに連れてこられたみたいだ。


「落ち着きましたか、シャルル様。」


「め…メイ… 先程はごめんなさい…」


「いえ、私の方も口が過ぎました。お許しください。」


「大丈夫です。メイは私の事を思って言ってくれたのですから…」


「メイ… 私、今後どうしたらいいかな…」


「1度、お屋敷に戻るべきです。」


「!? ディーオ様を見捨てると言うことですか!!」


 私は、立ち上がり声を荒げていた。


「違います。侯爵様に報告してみてはと、言うことです。」


「お父様に…」


「はい。侯爵様のお力をお借りするべきです。」


「お父様の知り合いの冒険者様に頼んでみると言うことですか?」


「はい。魔の森の最奥、深淵アビスは、並の冒険者では、帰ってくることも出来ません。ですが、侯爵様のお知り合いのS級の冒険者なら、探索も可能かと。」


「…分かりました。すぐに家に戻ります。メイ準備をお願いします。」


「分かりました。」


 メイは準備をするため、客間を後にする。

 待ってて、ディーオ様。必ずあなたを探してみせます。



 ◇



「こ…ここは…」


 そこは見知らぬ、天井だった。


「あら、起きたのね。体は大丈夫?」


 すると、突然声をかけられる。

 俺は、体を起こしながら、声のした方向をむいてみると、体が固まった。


「あら、本当に大丈夫?」


「は…はい。大丈夫です。」


「そう良かったわ。」


 ぐ~~

 俺のお腹がなった。


「ふふ、ちょっと待ってて、ご飯持ってくるから。」


「す…すみません…」


 彼女…エルフの女性は、部屋を出ていく。

 俺は、周りを見渡す。

 やっぱり、むこうでもこっちでもない知らない部屋だ。

 とりあえず、俺は現状を確認するため、今までの事を振り替える。


 俺の名は、司 晴明(つかさ せいめい)いや、今は子爵家のディーオか。あの時の、頭痛のせいか、前世の記憶が甦っていた。

 弟に裏切られて、崖下に落ちたのだ。上手くやっていると思ったんだがな… それは、俺だけだったようだ。

 それにしても、体の痛みが無くなっている。体を見てみるも、傷すらない。異世界のこれが力か…

 俺はとじている右目を開けてみる。

 やっぱり、見えないか…

 崖から落ちたときに、失明したのだろう。


「ご飯持ってきたわよ。」


 エルフの女性が湯気のたっている食べ物を持ってきてくれる。


「熱いから、気を付けてね。」


「ありがとうございます。」


 どうやら、シチューのようなものだ。

 木のスプーンですくい、食べる。


「美味しい…」


「そう、お口にあって良かったわ。」


 シチューは、すぐに食べ終わる。


「本当に美味しかったです。えっと…」


「あぁ、私の名前は、リンダよ。」


「リンダさんですね。俺は、ディーオです。」


 今の名前を名乗っておく。


「ディーオ君ね。それで、貴方みたいな子供が血まみれで、あんなところに、倒れていた理由を聞いても良いかしら?」


 俺は、今まであったことを伝える。


「そ…そう。大変だったわね。これから、どうするディーオ君。私はここにいてくれても、構わないけど…」


「ありがとうございます。出来れば、お願いしたいです。」


「分かったわ。それじゃあこれから宜しくね。先に言っておくけど、私はたまにいなくなるけど、気にしないでね。」


「はい、お願いします。たまにいなくなる? そういえば、どうして、リンダさんはこんなところに? ここは深淵アビスですよね?」


「そ…それは…」


「それは?」


「お酒が好きだから…」


「? すみません、良く聞こえないのですが。」


「だーかーら、お酒が好きだからよ!!」


「!! お酒ですか…」


「そ…そうよ、悪い。」


「いや、そう言うわけでは… それにしても、お酒ってこんなところにあるんですか?」


「えぇ、ここのダンジョンの中にお酒の入った宝箱があるのよ。そのお酒が本当に美味しいの!!」


「そ…そうなんですか。」


「そうよ。 あ!! ちょっと待ってて。」


 リンダさんは、慌てて部屋を出て言った。お酒でも取りに行ったのだろうか?

 リンダさんはすぐ戻ってきた。日本で見たことのある酒瓶のようなものを持ってきて。


「これよこれ。これが本当に最高なの!!」


 酒瓶を受けとる。受け取ったのはいいが、さすがに今はまだ、8歳なので、味を確かめる訳にもいかず、少し見た後、お返しする。

 リンダさんは、受け取った酒瓶を隣に置き、ポケットから何かを取り出す。


「お酒はついで、これを取りに行ってたの?」


 リンダさんの手の上には、目玉が乗っていた。


「そ…それは?」


「これも、ダンジョンの宝箱に入っていたアイテムの鑑定眼よ。」


「鑑定眼? 何ですかそれ?」


 名前の響き的に、鑑定が使える眼ってことだよな。


「なんと、鑑定のスキルを使えるようになるアイテムです。」


「そ…そうですか。それで、それをどうするんですか?」


「とりあえず、これを右目に当ててみて。」


「? 右目ですか?」


 俺は、鑑定眼を受け取り、言われた通り右目に当てる。

 すると、失明した右目が熱を帯びてくる。

 少しして、鑑定眼が俺の手から消えてしまった。


「目を開けてみて、ディーオ君。」


 リンダさんの言うとおりに、目を開けてみる。


「み…見える… 見えますよリンダさん!!」


「良かったわね、ディーオ君。」


「はい、ありがとうございます。」


 俺は早速鑑定眼を使ってみる。使い方は、目が見えるようになったと同時に、頭の中に、入ってきた。魔力を目に流すと、目の前にいた、リンダさんのステータスが見えてきた。


 名前:リンダ・ヴァン・シルフィード

 Lv:370 種族:ハイ・エルフ 年齢:3865

 生命力:185000

 魔力:296000

 スキル:弓術LvMAX 魔弓術Lv8 精霊魔法Lv6 風魔法Lv5 水魔法Lv3 身体強化Lv5 鑑定Lv4 格闘術Lv2 投擲Lv4

 称号:魔弓術師 エルフ族の元女王


「!?」


「ん、どうかした…の… あ!! 今鑑定使ってね。」


「す…すみません!!」


「もう、気を付けてよ。」


「はい、気を付けます。それにしても、良くお気づきになりましたね。」


「突然、そんな驚いた顔されたら!誰だって気づくわよ。で、何に驚いたのかしら?」


 無言の圧を受ける。


「れ…レベルが高かったので驚きました。」


「…本当ね。」


「はい!!」


「長く生きていれば、レベルも当然高くなるわ。」


「そうなんですね。」


「そうよ。それにしても、少し長く話すぎたわね。怪我は治っても血はもとに戻っていないから、しっかり休むのよ。私は扉のむこうに居ておくので、何かあったら呼んでね。」


 そう言って、リンダさんは、部屋を出ていった。

 俺も、言われた通り、横になる。

 そういえば、今の俺のステータスってどうなっているんだろうか?記憶を取り戻して、何か変わっているのだろうか。気になって眠れなくなったので、確認してから、寝ることにした。


「ステータス」


 名前:ディーオ・フォン・ドレーク

 Lv:10 種族:人間 年齢:8

 生命力:2000

 魔力:10000

 スキル:剣術Lv2 身体強化Lv2 妖魔一体Lv1 偽装Lv1

 アイテムスキル:鑑定

 称号:子爵家嫡男 神童 異世界転生者


 お、道中ゴブリン何かを倒したから、この前よりレベルが上がってる。それにしても、見知らぬスキルと称号が増えている。


 妖魔一体 ・・・ ユニークスキル。スキル保持者の知識にある妖怪、悪魔、魔物などの力を自身の体と一体化することによって行使できる。レベル数に応じて、同時一体化可能。


 偽装 ・・・ 自身のステータスの見た目を変更できる。


 異世界転生者 ・・・ 異世界に転生した者に与えられる称号。


 ユニークスキルが増えていた。しかも、前世で水◯し◯るの著者を愛読書にしていた俺にとっては、とても有難いスキルだ。

 確認も終えたので、寝ることにした。

 眠気は、すぐに襲ってきて、眠りについた。



 ◇



 ディーオが、崖から落ちて、数日後。


「冒険者様たちが帰って来たのは、本当ですかメイ!!」


「はい。今から冒険者たちから報告を聞くそうです。場所は、応接室です。」


 私は、すぐに、立ち上がり、応接室にむかう。

 扉の前で呼吸を整え、ノックする。


「誰だ!!」


「シャルルです、お父様。」


「そうか… 入りなさい。」


「失礼します。」


 そこには、みしいった冒険者様がいた。


「あら、久しぶりね、シャルルちゃん。」


「お久しぶりです、クラリス様。今日はお一人ですか。」


「メンバーは、宿屋で休んでるよ。ゾロゾロと来るのも失礼だからね。」


「シャルル、そこまでにしなさい。」


「すみません、お父様。」


 私は、お父様の隣に腰かける。


「それじゃあ、クラリス。報告を頼む。」


「分かりました。まず私たちパーティーは、魔の森の周辺の調査から始めました。その後、落ちたと報告に受けている崖から下に降り、こちらを発見しました。」


「!!」


 それは先日、私がディーオ様にお渡しした首飾りでした。


「発見場所には、大量の出血後がありました。良くて即死、生きていても、あの出血量では、生存は厳しいと思います。もし、生きていても、あの深淵アビスのモンスターに襲われて終わりです。」


「そうか…」


 私は、言葉が出せなかった。ディーオなら、必ず生きていると思っていても、心の底では、その可能性も捨てきれなかった。


「報告は以上になります。」


「ありがとうクラリス。報酬はいつも通り振り込んでおく。」


「了解しました。それでは失礼します。」


 私は、挨拶もせずその場に伏せていた。


「シャルル、シャルル!!」


「!! は…はいお父様。」


「報告通りだ… ディーオ君はもう…」


 私は立ち上がり、部屋を出ていこうとする。


「お父様… お部屋に戻らせていただきます。」


「あぁ、ゆっくり休みなさい。」


「失礼します…」


 その後、どう自分の部屋に、戻ったのかわからない。

 気づいたときには、ベッドに横になっていた。


「ディーオ様、ディーオ様、ディーオ様…」


 私は、その日ご飯も食べずに自室で泣き続けた。



 ◇



「おはようございます、リンダさん!! 朝御飯は出来てますよ。」


「ふぁぁ、おはよう、ディーオ君。今日も早いわね。」


「一応、居候のみなので。」


「気にしなくても、良いのに…」


「それじゃあ、先に食堂に行ってますね。」


「了解。顔洗ってからいくね。」


 俺がここに来て、はや数日がたった。

 どうやら、ここは特殊な結界アイテムに守られているリンダさんの家だ。

 リンダさんは、美味しいお酒を求めてエルフの皆を振り切って旅を初め、ここに行きついたそうだ。

 そして、現在俺は、自分を成長させるため、リンダさんに弟子入りした。最初は拒んでいたリンダさんもお酒に合うおつまみを作ると、二つ返事で了承来てくれた。


「おまたせ~。」


 俺が席について、少しして、リンダさんがやって来た。


「それじゃあ、いただきます。」 「いただきます。」


 パクパクの食べ始める。


「ん~、美味しい。やっぱりディーオ君は料理が上手だね。」


「ありがとうございます。」


 前世では、早い段階で両親は亡くなっていたし、1人暮らしもしていたので、料理にはかなりやって来た。まぁ、趣味の1つと言っても良いくらいだ。


「それじゃあ、今日もご飯食べた後、体を動かそうかディーオ君。」


「はい、リンダさん。」


 こうして俺は、リンダさんのもとで、記憶を取り戻す以上に、努力してきた。



 ◇



 ~3年後~


「ディーオ君、お話があります。」


「改まってどうしました、リンダさん?」


 俺は、リンダさんの前に座る。


「ここを出ていかない?」


「えっ!! 俺なんかしましたか?」


「違う違う。学校なんかにいかないのって意味よ。」


「学校ですか? 興味はありますけど、俺はリンダさんの弟子ですし…」


「弟子って言うけど、ディーオ君、君私よりもう強いよね。」


「え、そうですか? レベルもまだまだですけど?」


「はぁー。そりゃ、私のレベルは3000年以上生きてきて、たどり着いたレベルだし。まぁ、うち1500年くらいはぐうたらしていたけど… それでも2年やそこらで追い抜かれたら、私はもう、泣くしかないわ。しかも、もう殆ど私と同じくらいのレベルでしょ。」


「それはそうですけど… 本当に大丈夫ですか?」


「な…何がよ?」


「だってリンダさん… 料理は本当に焼くだけだし、洗濯物はためるし、片付けはしないし、放っておいたら、ずっと寝てるし…」


「で…ディーオ君!!」


 顔を赤らめるリンダさん。


「何でしょう。」


「い…今、それは横に置いておきましょう。」


 俺がいなくなったら、完全に何もしないやつだこれ。


「はぁー。分かりました。」


「本当!! それじゃあ…」


「正し条件があります。」


「じ…条件?」


「はい。週末には1度ここに顔を出します。」


「な…何でよ?」


「心配だからです。」


「わ…私の事、信用出来ないの?」


「信用できません。信頼はしていますけど。」


「!! わ…分かったわ。それで、手でうちましょう。」


「理解してくれて、良かったです。それで、いつ出発すれば良いですか?」


「そうね… ここから、王都まで確か本来なら2週間ほどかかるけど、ディーオ君なら、5日位で着くとして… 明後日にはここを出て、早めに着いといた方がいいと思うわ。」


 場所事態は、把握しているが、どんな所かまでは知らない。


「明後日ですか、分かりました。準備しときます。」


「私の知り合いが運営しているから、後で一筆書いときますね。」


「リンダさん、そんな知り合いが、いたんですね。」


「これでも、だてに長く生きてないわ。」


「あれ? でも、学校は、確か10歳からじゃあ無かったですか?」


「そう、だから編入ってかたちになるわね。」


「編入ですか? 俺、大丈夫ですかね?」


「ディーオ君なら問題ないわ、てか知識だけなら、学校事態いかなくても、大丈夫よ。」


「それじゃあ、俺は何しに、学校へ行くんですか?」


「友達よ、友達よ。」


「友達ですか?」


「そう、友達。だって、ディーオ君、殆ど友達とかいないでしょ?」


「まぁ、幼馴染みが1人だけで、後はいませんけど…」


 前世でも、殆どいなかった…


「だから、学校に行って、友達を作ってきなさい!!」


 リンダさんは、言い出したら何を言っても殆ど聞き入れない。


「分かりました。では、早速準備してきますね。」


 そう言って、俺は準備をするため、自分の部屋に戻る。



 ◇



「シャルル様、それじゃあ王都にむけて、出発します。」


「分かりました。」


 シャルル様は、前までは、毎日笑っていた。だけど、3年前のあの日から一切笑わなくなった。それと同時に、勉強にのめり込んでいった。あの日の弱い自分を責めるかのように…

 王都の学校へ入学してもそれは変わらず、人を寄り付けさせない態度をとり続け、学校内では、冷淡の氷魔女とまで言われる始末。


「では、出して下さい。」


 シャルル様をのせた馬車は王都へむけて出発した。

 私は、少し用事があり数日遅れで、シャルル様を追う形で出発する予定だ。

 私は、馬車が見えなくなるまで、その場で馬車を眺めていた。



 ◇


「それじゃあ、リンダさん行ってきます。」


「いってらっしゃい、ディーオ君。」


 リンダさんとの、別れを済まし、俺は王都にむけて、出発する。

 俺は、深淵アビスの崖を越えるため、この3年間で成長したスキルを発動する。


「妖魔一体"大天狗だいてんぐ"」


 体に力がみなぎってくる。

 もう一度、リンダさんに挨拶し、俺は空を飛ぶ。

 崖を越え、魔の森を抜け、王都へむけてかなりのスピードで飛んでいく。

 途中街に降りて、宿に止まりながら、王都へむかっていく。

 今日中には、王都につくかなって所で、誰かが襲われているのが、目に入った。

 俺は、その人たちを助けるため、今にも女の子に襲いかかりそうな、賊を蹴り飛ばしながら、着地する。



 ◇



 数日中には、王都へつきそうな時、それは起こった。

 突然馬車が止まり、辺りが、喧騒に包まれた。


「何事ですか?」


 私は、御者に尋ねる。


「し…シャルル様、賊です!!」


「!?」


 私はすぐさま、窓から身をのりだし、状況を確認する。

 武器を携えた数十人の男たちが、馬車の前を塞いでいた。

 状況を理解した私は、御者に引き返すように命じようとする前に、馬の悲鳴があがる。

 どうやら、賊たちは、私たちが引き返さないように、機動力を奪ってきた。

 私も、戦おうと馬車を降りた際には、すでに戦闘は始まっていた。今は善処しているみたいだが、人数はむこうの方が多い。

 こんな時に、メイがいれくれれば… 今はいない、メイドの事を思いながら、賊にむかって魔法を詠唱する。


「水よ 氷となり その雨を降らせ "アイスレイン" 」


 氷の礫が雨の如く勢いで、護衛たちに当てないように、賊たちに降り注ぐ。

 次の詠唱に移ろうとした際、私めがけて、矢が飛んできた。

 詠唱を一時中断し、躱そうとすると横から突風が吹き、矢を弾いてくれる。


「大丈夫ですか、シャルルさん!!」


 そこには、いる筈のないイディオ様がたっていた。

 イディオ様は、すぐに、私の方へ寄ってくる。


「ご無事でしたか、シャルルさん。」


「え… えぇ、助かりました、イディオ様。それにしても、何故ここに?」


「今は、そんなことより賊をどうにかしましょう。」


「わ… 分かりました。」


 不思議に思いながらも、賊に意識をむけ、再度詠唱準備に入る。

 そのせいで、イディオ様の行動に対処できなかった。


 ガチャンッ


 突然、左手首に何かを装着される。それをつけた本人に抗議しようとする前に、体の力がぬけ、私は膝をついてしまう。


「い…イディオ様、何をさせるのですか!!」


 つけた本人… イディオ様を睨み付けながら、何をしたのか問いただす。

 彼は、私の質問に答えることなく、顔を下げ、肩を小刻みに揺らしていた。

 そして、堪えきれなくなったかのように声をあげて、笑いだし、自分がした行為について、説明しだす。


「俺が何をしたのかだって… みた通りさ、シャルル。君に、奪魔の腕輪をつけたのさ!!」


「!?」


 奪魔の腕輪とは、確か装着者の魔力を奪い取るアイテムのはず。


「何故その様なことを!!」


「簡単さ、それはシャルル、お前を手に入れる予定だからだよ。」


「!? どいうことですか!!」


「そのまんまの意味さ。本当は、奪魔の腕輪じゃなくて、隷属の首輪を用意するはずだったんだけど、予定より、君が早く王都に戻るために、急遽用意した奪魔の腕輪を使うことにしたんだよ。」


「!? まさか、この賊たちも…」


「正解だよ、シャルル。俺が用意したものだ。これで、お前は、もう俺の物だ!!」


「わ…私は、貴方の物なんかにはなりません!!」


 彼は、一瞬顔を歪ませるも、すぐに醜悪な笑顔に戻る。


「そうだ、シャルル。君に、面白い話を教えてあげるよ。」


 私は、返事を返すことなく、今の状況を打破する手を考える。

 だが、彼の一言で、思考を中断せざる終えなくなった。


「3年前の真実さ。」


「さ…3年前の真実…」


 私は、無意識のうちに、首飾りを握っていた。


「何故あの日、俺が魔の森にいたのか疑問に思わなかったか?」


 確か、あの日は魔法の練習のため森に…


「!?」


「気づいたみたいだな。そう、魔法の練習なら、庭に練習用のスペースがある。なのに何故あの日は、森にむかったのは、簡単な話さ、あいつを殺すためだよ。」


「!?」


「だけど、あいつが来るかどうかは五分五分だったが、馬鹿あいつはやって来たよ。罠とも知らずにな。」


「で…でも、ディーオ様が貴方に負けるはずかない!!」


「チッ あぁ、その通りだ。だから、落としてやったんだよ深淵アビスになぁ。」


「!?」


「どうだ、笑える話だろ。さて、話も終わった事だから、着いてきて貰うぞ、シャルル。」


 そう言って、彼は手を伸ばしてくる。

 私は、力を振り絞り、その手を払いのける。


「チッ 優しくしてりゃあ、調子に乗り上がって!!」


 払いのけられた事に、怒ったようで、私に殴りかかってくる。

 それを躱す力もない私は、ギュッと目を瞑った。

 だが、いくら待っても、衝撃がやってこない。

 逆に、何かが、飛んでいくような音が聞こえてきた。

 私は、瞑っていた目を開け、何が起こったのか確かめる。

 そこには、黒いフードつきのローブをきた誰かの背中があった。

 この人が、助けてくれたのだろうか…

 そのローブの人は、振り返り私を見てくる。その視線は、私の首飾りで止まる。


「無くしてたと思ったけど、シャルルが持ってくれていたのか…」


 ドクンッ


 顔は、良く見えないのに、鼓動が早くなるのを感じる…

 顔が徐々に熱くなるのを感じる…

 懐かしいその声に、癒されていくのを感じる…

 あの日を境に、凍っていた私の心がジワジワ溶けていくように、心の底から暖かくなっていくのを感じる…


 その人は、フードを脱ぎ、私に笑いかけてくれる。


「あ… あぁ… 」


 私の目から次第に涙がこぼれてきた。


「ただいま、シャルル。」


 私は、最後の力を振り絞り、愛する彼の胸の中に飛び込んだ。


「お…お゛がえりなさい、ディーオ様!!」



 ◇



 襲われている女の子を助ける際、どこかで見たことなるよう感じがしたため、鑑定を使うと、何とその女の子は、シャルルだった。

 シャルルを見ると、首にはあの日無くしたと思っていた首飾りをつけていた。


「無くしてたと思ったけど、シャルルが持ってくれていたのか…」


 俺は、フードを脱ぎ、シャルルに笑いかける。


「あ… あぁ… 」


 シャルルは、突然泣き出した。

 慌てた俺は、とりあえずその事には触れずに、


「ただいま、シャルル。」


 帰ってきたことを伝える。

 シャルルは、立ち上がり飛び付いてきた。


「お…お゛がえりなさい、ディーオ様!!」


 俺は、飛び込んできたシャルルの頭を優しく撫でる。

 すると、涙を流しながらも、笑顔になってくれた。


「誰だ!! 俺を蹴ったやつは!!」


 聞き覚えのある声のする方を見てみる。

 鑑定を使うと、そいつは、イディオだった。

 不思議がっている俺に、抱きついているシャルルが、大まかな説明をしてくれる。


「ありがとう、シャルル。危ないから少し下がってて。」


 シャルルは、名残惜しそうに、後ろに下がってくれる。


 下がったのを確認して、喚いている、イディオに声をかける。


「久しぶりだな、イディオ。」


「久しぶりだとっ!! 貴様なんか知ら…な…い…」


 その顔は、驚愕に染まっていた。


「な…ぜ…生きている。お前はあのとき、崖から落ちて死んだはず…だ!!」


「あぁ、落ちたな。だけど、しぶとく生き残ったよ。」


「く…くそ!! やれお前ら!!」


 賊のいる方に逃げながら、残っていた賊を俺にけしかける。


「ディーオ様!!」


「大丈夫だよ、シャルル。」


 少し振り返り、安心させる笑みを浮かべ、すぐに顔を戻す。


羽団扇はねうちわ


 すると、俺の手に、11枚の羽で作られた、団扇が出現する。


火炎旋風かえんせんぷう


 羽団扇を一振りするだけで、火を纏った竜巻が賊たちを襲う。


「何だ、これは!! ぐぁーーー!!」


「ギャーーーー!!」


 火炎旋風を消すと、そこには、死にはしないものの、かなりの怪我をおった賊たちが転がっていた。

 それを確認して、羽団扇から手を離すと、下に落ちきる前に、消えてなくなった。


「後は、お前だけだぞ、イディオ!!」


 後ろに隠して、なんを逃れた、イディオに話しかける。


「くそくそくそ!! どいつもこいつも、役に立たねぇな!!だが、時間稼ぎには、十分だ。」


 そう言って、いつの間にか、握っていた変な模様の玉を地面に投げつける。


「出てこい、悪魔よ!!」


 玉が割れ黒い煙が吹き出し、次第に煙が形作る。


「我を呼んだのはお前か。」


 そこには、3メートルを越える巨体の悪魔が現れた。


「あぁ、呼んだのは俺だ。そこに転がっているカス共を喰ってあいつを殺せ!!」


「よかろう。」


 すると、転がっている賊たちが悲鳴をあげながら、崩れ落ちていく。

 その変わりか、悪魔はどんどん体を大きくしていく。

 巨大化が止まると、その巨体は5メートルを越えていた。


「これで、お前も終わりだ!!」


 イディオを、無視して、鑑定を使う。


 名前:ー

 Lv:100 種族:悪魔デーモン 年齢:ー

 生命力:38500

 魔力:57000

 スキル:闇魔法Lv5 洗脳Lv3 眷属召喚 身体強化Lv6

 称号:ー


「召喚。」


 名の無い悪魔は、眷属を召喚する。

 悪魔の周りには、レベル30ほどのモンスターがわき出てくる。

 俺は、妖魔一体を使い、もう一体、体に取り込む。


雷獣らいじゅう


 俺の周りに、ビリビリと雷を纏う。

 俺は、手を前にだす。


万雷ばんらい


 周りのモンスターが雷に打たれ、一瞬で消し炭になる。


「「「!?」」」


 悪魔やイディオだけでなく、シャルルを驚いていた。


「次はお前だよ、名も無き悪魔。」


雷化いかずちか


 纏う、雷の量が増え、1歩踏み出すと、既に悪魔の懐にいた。

 俺は体に纏っていた雷を右腕に集束させ、殴り付ける。


紫電撃滅しでんげきめつ


 血すら蒸発するほどの雷を受け、悪魔も一撃で消滅する。

 イディオを見ると、呆然としていた。

 俺は、そのままイディオの後ろに回り込み、かなり手加減した手刀を首裏にあてる。

 そのまま、勢いよく前のめりに倒れる。


「反省しろ、イディオ。」


 雷獣を解除し、シャルルの元に戻る。



「怪我はないかい、シャルル?」


 座り込んでいる、シャルルに尋ねる。


「はい、ディーオ様、ですが腕輪のせいで力が…」


 俺はシャルルの腕輪に触れ、


「神通力」


 すると、腕輪は、ボロボロと崩れ落ちていく。


「これで、大丈夫か?」


「!? は…はい。ですが、まだ、やはり力が入りません… きゃ!!」


 いつまでも、地面に座らせとくのも、あれなんで、お姫様だっこで抱える。


「で…で…ディーオ様!!」


「嫌だと思うけど、我慢してくれ。」


「い…嫌という訳では無くて… は…恥ずかしいと言うか…なんと言うか…」


 ん、声が小さくて聞こえないけど、今はまぁいいか。


 すると、賊がいた反対方向から、メイド服姿の女性を乗せた馬がやって来た。


「シャルル様!!」


 女性は、すぐに馬から飛び降り、どこからか取り出した短刀を俺めがけて、振り下ろす。


「!?」 「神通力」


 女性は、宙に浮いたままの姿勢で止まる。


「!?」


 女性はすぐに、気を取り戻し、体を動かそうとするも、動か無い事にさらに驚く。


「メイ、やめなさい。」


「シャルル様?」


 メイ? …確か、シャルルのメイドだった人だ。

 もう攻撃してこないかなと思い、神通力を解除する。

 メイさんは、すぐに近寄ってきて、シャルルの心配をする。


「大丈夫ですか、シャルル様!! 一体何があったんですか!!」


 俺たちは、かいつまんで、今の状況を説明する。


「ディーオ様、生きていたんですか!!」


 一番驚いたのは、俺が生存していたことだった。

 どうやら、メイさんは胸騒ぎを覚え、用件を早めに済まし、シャルルを追ってきたんだと言うらしい。


「それにしても、これからどうしましょうディーオ様?」


 今この場には、俺とシャルル、メイさんと気絶しているイディオしかいない。シャルルの護衛たちも悪魔の生け贄にされていた。

 馬車は壊れていないが、馬車を引いていた馬は死んでいる。


「それじゃあ、少し休んだあと、メイさんの乗ってきた馬に、馬車を引いてもらうのはどうかな?」


「そうですね、今はそれが最善だと思いますシャルル様。」


「分かりました。では、そうしましょうディーオ様。」


 そうして、俺たちは、馬を休ませたあと、馬車に繋ぎ、イディオを屋根にくくりつけ、御者をメイさんにして貰い、王都にむけて、出発した。

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