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ほのかなひかり  作者: 上条 樹
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フラストレーション

「どうぞ......」友伽里ゆかりに言われるがままにLサイズのコーラと自分用のMサイズのコーラを買って戻ってきた。


「ありがとう」少しぶっきら棒に言いながら友伽里ゆかりはコーラの入った容器を受け取るとストローを口にくわえ喉をうるおした。俺も彼女に同調するように、ストローを口にくわえた。

 

 俺達から少し離れた場所で、穂乃果ほのかとひなは、水のかけ合いをしてはしゃいでいる。俺は無意識のうちに、彼女達の姿を探していたようであった。水しぶきで輝く彼女の水着姿を見て俺は少し見惚みとれている。


「もしかして、あの人が渡辺さんの旦那だんなさんなのかな?」唐突に友伽里ゆかりが言葉を発した。彼女も俺と同じように穂乃果ほのか達の動向が気になっていたようで、遠くにいる穂乃果ほのか達の様子を目で追っていた。

 プールの水辺で水遊びをする穂乃果ほのかとひなの近くに三十代後半かと思われる男性がいる。パーカーを羽織っているが、遠目にも鍛えていると解かる引き締まった体に少し長めの髪。日光を避ける為なのか、濃い色のサングラスをかけている。その男性を見て、俺は、自分の中に微かな嫉妬心ジェラシーが芽生えている事を感じた。


「結構年上みたいだけれど、かっこいい人ね。でも、どこかで見たようなきがするのよね.......」友伽里ゆかりは、チラリと俺の表情を観察しながら言った。まるで、俺の心を読んでいるかのように。


「そうか.......、けっこういいオッサンじゃないか」俺は、なんだか悔しそうな顔を見せたようだ。彼女にはそれが気に入らないようであった。


「あんたねぇ、なに張り合ってんのよ。それに人妻に鼻の下伸ばして……」友伽里ゆかりは、俺の右腕の二の腕の辺りを思いっきりつねった。


「イテテテテテ!な、なにするんだよ!」俺は彼女の手を振り払うと真っ赤になった二の腕をさすった。


「知らない!」なかなか友伽里ゆかりの機嫌は治らないようであった。


 俺は、友伽里ゆかりの言葉を他所よそにもう一度、穂乃果ほのか達のいる辺りに目をやった。ひなが放った水しぶきを避けるように、彼女は夫と思われる男性の腕にしがみついた。その弾みで彼女の胸が男性の腕に触れた。二人とも、その事に関しては全く意識もせず自然のような仕草。それは夫婦であれば、普通の事なのであろう。その光景を見て俺の胸のモヤモヤは更に拍車をかけていたようであった。


「本当に、馬鹿じゃない........」とうとう、友伽里ゆかりも怒りを超えて呆れてしまったようであった。


 せっかくやってきたプールではあったが、二人ともフラストレーションを貯める結果となってしまったようであった。

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