一方、日本では
セリアこと藍那が死んだ後の話です。
藍那の幼馴染目線の話になっています。
その頃セリアこと藍那が死んだ日本では……
「えっ?藍那が死んだ?なんで?どうして…」
藍那の恋人であった白藤智は突然の愛する人の訃報を受け入れられない様子であった。
それはそうだろう。
ここ、日本において、殺人事件というものに縁がある人の方が少ない。
ほとんどの人が殺人事件に巻き込まれることなく生命を全うする。
だがなんの巡り合わせだろうか。
平和な日本においても事故で死ぬのではなく、殺されて亡くなるとは…。
おそらく呪いをかけた張本人であるリアーナもビックリであろう。
智は藍那の幼馴染であり、そして心から藍那を愛している数少ない人であった。
藍那の両親は優しく、気立ての良い人であったが藍那の幼い頃に不慮の事故で亡くなっている。その後藍那は祖母の家で暮らすようになり、祖母の隣の家の子が智であった。
セリアは何万回も転生しているとはいえ、見返りのない愛に触れたのが久しくなかったためか、ひどく落ち込んでいた。
そんな彼女を見て元気づけてくれたのが智であった。
藍那にとって智は命の恩人である。感謝してもしきれないと思うのは当然だろう。
ちなみに、藍那には知る由もなかったが、智もまた藍那に幾度も救われている。
そういうことがあって2人の絆は強固になっていき、恋人になった…ばかりであった。
自分といると不幸になると思って踏み出せないでいた藍那と自分では藍那に釣り合わないとずっと思っていた智がお互いに何十年も自分の気持ちを告白できずにいたのも無理はない。
智が就職した時、やっと自分の恋心を藍那に伝えられたのである。
そこから1週間もしないうちに藍那は殺された。
藍那は運悪く家に入った泥棒と鉢合わせてしまったのだった。そして、その泥棒に殺された。
そして事件があって1週間が過ぎようとしていた。
「くそ…俺が……俺があの時…少しでも引き止めていれば……」
「いや違う…もっと早く……もっと早く俺が自分の気持ちを伝えられていたら……藍那は…藍那は死ななかったのかもしれない…」
智は藍那が死んでから1週間たったいまでもずっと後悔し続けている。
智にとって一番大切な人を失ったのだから無理はない。後悔してもしきれないのだろう。
しかしふと、智は自分の恋心を藍那に伝えた時き藍那が話してくれた呪いを思い出した。
「もしかして…藍那は……俺に呪いについて話したから殺されたのか?」
藍那は断片的に智に呪いのことを話していた。
藍那は昔犯した罪によってかならず不幸になる運命にあると。
それでも構いませんか?と聞かれた時には暗に拒絶されたのかと焦った。
しかし、冷静になって思い返してみると、年の割に落ち着いていて、大学生だというのにまるで色んな場所で色んな体験をしたかのような器用さがあった。
そしてきわめつけは藍那がマルチリンガルであったことだ。
もし普通の帰国子女でない大学生なら日本語と少しばかりの英語しか話せないだろう。
しかし藍那は、他の科目では抜きん出た才能はなかったものの、言語に関しては普通の人よりはるかに多く、そして流暢に話せていた。
そして、智は藍那が話せる言葉の種類のおかげで妙に納得してしまい、本当のような気がしたので今まで深く考えることなかったのである。
「呪いが本当なら…神様は存在するということか…。」
そこで智はふと考えた。
もし呪いのせいで藍那が殺されたのかならば、神様は存在することになる。
「もしかして自殺すれば運良く…いいや、藍那を巻き込んだ神の手によって藍那の近くに転生できるのでは…?」
智は少しばかり落ち着きのない…思い立ったら即行動するタイプの人間である。
しかも、愛してやまない藍那に会うためとはいえ、この結論が藍那も望んでいないであろう冷静さに欠ける結論であることは間違いない。
が、今の智は恋人が殺されたせいで判断力がものすごく低下している。
つまり……
「そうならば…ぐずぐずしていられない!ええっと自殺ってどうすればいいのかなぁ…?」
つまり、誰にも止められない………。
智は、台所にあった包丁を研いで、そして必死に調べてネットで先ほど知った頸動脈のあたりに包丁を持って、自分の首を切ろうとしたその瞬間のことであった。
「いやちょっと待て待て、早まるな貴様」
突然声がどこからともなく聞こえてきた。
「へっ…?だ、誰?ってう、う、浮いてる!!こっち来るな!ち、ちかづくな!」
「いやちょっと待て貴様、その包丁を置いてくれ。お願いだ。」
「な、な、何もしません。お願いです…死ぬのでもう何もしないで…」
智はてっきり呪いが具現化されたものだと思い込んでいる。
「いや待て、違う自殺を止めに来たのだ。神の国から来た。ええっと…まぁ神のようなものなんだけどさ…。」
「へっ?」
智は驚いた。まぁ誰だって驚くであろう。だって目の前の人が神様のようなものだなんて。
「ええっとお前はセリアじゃねぇ…ええっと…そう、藍那から聞いているのだな。呪いのことを」
智は目の前の非日常的な光景に少しずつ慣れていった。
「あ、はい。そうです。…左様でございます。間違えございません。」
そして目の前の人が神(?)であることを知った智は自分の知ってる知識をフル活用して敬語を使った。
「いやお前さん…話し方どうした。…まぁそんなことはどうでもいいんだよ。お前さ、地球以外の場所に行ったことあるか?」
「え?いや…あの…ないです…。」
「ではなぜ、お前さんは加護が使えるのだ?」
「は?何ですか?それ?」
智の反応を見て本当に知らないのだろうと神(?)はさとった。
「説明してやろうじゃないか…そもそもな藍那は……」
セリアが呪われた経緯や、呪われたことによる現世や神の国の影響、そして呪いを解く方法などなどを3時間ほど聞かされた。
また、自分が加護の力を持っていることも教わった。これによって呪いの力が抑えられ、近くにいれば不幸にならないようになるらしい。
つまり…
「藍那は次も転生するからそこに俺も転生させ、俺の加護の力で呪いを解けということですね?」
「理解が早くて助かる。まぁ加護の力はお守りに近いから必ず守れるわけではないし、強要はしないが…」
「いいや行かせてください!今すぐがいいのですか?今すぐ行かせてください。」
元はと言えば神々のせいで藍那はこうなっているというのに…何故だかふてぶてしくしょうがねーなーと神(?)はぼやいた。
「んじゃ飛ばすよ。3...2...1...ぽん」
そこで智としての意識は途絶えた…。
次回から転生先の暮らしを書きます。
今回読んでくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします。