6.モチコ先輩
「モ、モチコ先輩っっ!!」
「あらあら、えらい熱烈な歓迎やなぁ」
気がつくとコウスケは自分より少しだけ背の低いその少女を抱きしめていた。柔らかな少女の身体とその温かさを全身に感じた。
「えっ、あっ、ご、ご、ごめんなさいいい!」
コウスケはハッと気がつくとその場からとびのいた。
「ちょっとビックリしたわ。うちはええねんけど、どんな女の子にもやっていいわけやないで?」
綺麗な栗色の髪をショートボブのところで切りそろえ、好奇心たっぷりなぱっちりとした碧眼でクスクスと笑いながらコロナ・モチヅキはコウスケを見つめた。
「それにしても、二人とも元気そうで良かったわぁ。携帯繋がらへんしどうしたもんかなぁって思てたら二人の声が聞こえてなぁ。ほんまよかったわぁ。」
「私たちもすっごい心配してたんですよ!モチコ先輩!シェルターはあんなことになってるし、この人だかりだから皆を見つけるのも大変だなって!あーーでもよかったぁ!私もぎゅーってさせてください!ぎゅーーーー!」
暫くミリアに捕まっていたコロナは、ようやく開放されると疑問を口にした。
「シェルターがどうとか言うとったけどなんかあったん?うち課外授業で外れの農業プラント行ってて、そっちのシェルター行っててん。」
途端に二人の表情はしぼんだように暗くなった。
「その、、、」
コウスケは意を決してシェルターで起きていたこと、父のこと、自分たちも戦闘に巻き込まれたことをコロナに説明した。
「そうなんか。大変やったなぁ。頑張ったんやね!えらいえらい!よしよし!」
コウスケとミリアの頭を撫で回すコロナであった。
「ちょっ!あの!もう大丈夫ですから!」
何とかコロナのてから脱したコウスケは顔を赤らめながら続ける。
「そ、それでこれからどうしようかなと思って、金もないし、だったらいっそ軍に志願しようと考えてたところなんです!街をめちゃくちゃにしたあいつらをぶっとばせるなら、戦う力が手に入るなら軍もいいかなって。」
「そうかぁ、コウスケが前を向けるならそれもええと思う。よっしゃ、そんならウチも志願するわ!」
「え?モチコ先輩は別にいいじゃないですか。実家大きいじゃないですか。お金だってあるだろうし、わざわざ危険な軍なんか行かなくたって!」
ミリアは驚きの声を上げた。
「いや、ウチもともと卒業したら軍行こう思っとったんよ。お父ちゃん軍人やし、この時代に生まれて戦争から目を背けとうないな思っててん。ちっとばかしはようなるだけや。どうせ高校も授業ないやろうし!」
「でも、きっと危険なことも一杯あるんですよ!怖くないんですか?」
「そんなん大丈夫や!ちゃーんとコウ君が守ってくれるんやろ?」
「せ、先輩。わ、分かりました!任せてください!絶対守りますから!」
「そっか。私は、、、やっぱり怖いな。ごめん。二人とも絶対生きて帰ってきてね!私はここで街が再建できるようにがんばってみる!」
ミリアは少しさみしそうな顔をしながら二人に別れを告げた。
「ミリア、、、うん。わかった!俺達が帰るまでにちゃんともとの街に戻しといてくれよ!じゃあ志願兵の集合場所いってみる!他の皆の事とか分かったら連絡くれよ!じゃあ!」
「んー、ミリアちゃんとはお別れかぁ。寂しいなぁ。最後にぎゅーするで!ぎゅーーー!」
しばしの別れを惜しんだあと、二人は案内された会議室に向かったのであった。