1.警報
「止める!止める!止まれーーー!!」
ズギャギャギャギャギャ
60mmマシンガンの弾倉は底をついたが、眼前の銀色の機体はそれ以上動くことはなかった。
「くっ」
突然飛来した閃光により右のマニピュレータが吹き飛ぶ。
眼前には、先程倒した物と同型の3機の機体が現れていた。
「もう二度とあんな光景は御免なんだから!!」
ーーーー
「はあっ、はあっ、くそっシェルターなんてどこもいっぱいじゃないか!」
コウイチ・ハセガワは17歳の高校生だ。この時代にはかなり珍しい極東系人種で、瞳は黒く、髪も黒色でクセのないサラサラとしたものだった。
いくつかの避難シェルターを周ったが何処にも入れず、彼は今愚痴を吐きながら、上がった息を整えていた。
「はぁっ、コウ、次は、どこ行こう。はぁっ、学校近くで、知ってる、所は、はぁっ、全部行っちゃったよ。」
ミリア・コルティスは北欧系人種で瞳は茶色で桃色の髪をもつ、コウイチのクラスメイトだった。
また二人とも、同じ"ホム研"の部員でもあった。
コウイチは昔から機械いじりが好きだった。
車の整備工をしていた父親が趣味で壊れた機械を直すのを側でよく見ていた影響であろう。
しかし、機械系の高校に入学した後は機械いじりのみならず、いじったものを動かすことも好きになった。
"大型白兵戦人形"
もとは建設作業などをする大型の産業用ロボットであったそれは、約百年ほど前に初めて戦争に投入され、今なお様々な進化を続け、主要な戦争兵器として用いられていた。
「はぁっ、意外とホムンクルスの中の方が安全かもな?」
「最初からそうすればよかった。もうっ!逆戻りじゃない!」
ーーーー
二人は15分程前、避難警報が鳴るまでいたホムンクルス研究部、通称"ホム研"の部室に戻ってきた。
「とりあえず、ひとまずは安全だろう」
コウイチは走り回って疲れた体を、自分が作ったホムンクルスのシートに投げ出し呟いた。
「いつまで続くのかしら?」
自分の機体に乗り込んでいたミリアが無線通信を飛ばしてきた。
「ここの基地はそれなりに大きいからなぁ、さっさと軍が片付けてくれるだろ」
ダダーン
ふいに薄暗かった格納庫に光が差し込む。突如開けた視界の先に3体の銀色の機体と1体の見たこともないピンク色の機体が見えた。
(黒猫っ!!)
ピンク色の機体の左肩にデザインされた黒い猫のエンブレムを見つめながらコウイチはそんなことを考えていた。