5th
五度目の目覚めは冷たい寝汗の感触を第一に感じた。
海に落ちた時には恐怖しかなかったが、今回はそれに不快さまでまとわりついている。
今でも覚えている。
あの店員の言葉、視線、掴まれた手の感触、それに……。
さやかはベッドから急いで抜け出し浴室へと閉じこもった。長い時間、延々と熱いシャワーを浴び続けた。しかし一向に恐怖をぬぐうことはできず、寒くもないのに体が震え歯が鳴った。
その日、さやかは一歩たりとも外へ出ることはできなかった。
*
だがやがて、照明をつけないでいた室内が夕暮れの色に染まりだした頃。
さやかはようやく悔恨をもって目をつむったのだった。
ごめんなさい、こんなことになってしまって……。
まだ会えていない彼に心の底から謝る。
私のせいで何度も何度も七月一日がやり直されていて、きっと彼にも迷惑をかけている。私が辛い思いをした回数だけ、彼も嫌な思いをしているはずだ。
私だけじゃない、きっと彼も……。
さやかは気づいていた。この時が巻き戻される現象は、自分の強い想いによって引き起こされているということに。
強く願い、目を閉じる。これまでのループ現象は、すべてこの二つの相乗効果によって発動しているということに。
そして、これまでは自分の願いのためだけに時を巻き戻しているということにも――気づいている。
閉じるさやかの目元から、つ、と涙がつたった。
もう一度だけでいい、やり直させて。
お願い、私にもう一度チャンスをください。
そうしたら、私……。