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血鬼~Bloody Demon~  作者: にっしー
第1章戦場への帰還
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第二話 宮殿急行 ③

「絶滅危惧種同士だ、本当はやりあいたくないものだが、仕方あるまい。見せてやる」


 ルイドの姿も邪鬼の姿へと変貌する。


「くらえぇぇ!!」


 右拳に力を込めるルイド。風がその周りに渦のように集まっていく。工藤も、構えを取る。


「烈風掌!!」


 放たれるルイドの掌撃。工藤は剣の構えを取ったまま動かない。


「足がすくんだか!そのまま果てるがよい!」


 掌撃が当たる数十センチ手前で、工藤は、ようやく一歩、動く。


「工藤流剣術、一心斬!!」


 時が一瞬、止まったかのようにゆっくりと数歩先へ歩くと剣を収める。直後、斬撃の音が遅れて聞こえ、ルイドの身体から鮮血が舞う。


「ぐはっ……」


 邪鬼の姿から元に戻り、オーラがうっすらと消えていくルイド。今にも倒れそうな状態で、工藤の方を振り返る。


「ま、まさか……ここまでとは。お主、やはり、入ってもらうぞ。このまま帰すわけにはいかん……」


 オーラを拳に込めるルイド。


「まだやるってのか!やめろ、それ以上血を流したら死ぬぞ!」


「死ぬ……?そんなもの、当の昔に死んでいる。私は負けるわけにはいかんのだ。絶対に勝たなければいけないのだ……。こんなところで、終わるわけには、いかんのだよ!!」


工藤に殴りかかろうとするルイド。しかし、そのまま空振りし、地面へと倒れる。


「おい、お前!」


 寄りかかる工藤。


「触るな!!私に……触るな。私は負けん。誰にも負けるわけには……」


 ルイドは、話している途中で、眼を瞑つぶり、意識を失う。


「しっかりしろ!くそっ……おい!誰かいないのか!

医療班を呼べ!」


 工藤の呼び掛けに対し、兵士がやって来る。


「ルイド殿!これは何事!貴様、何をした!」


 剣を抜く兵士。


「話は後だ、こいつを早く医者に見せろ!死んでしまうぞ!」


「くっ!わかった!」


 工藤に言われ、無線で医療班を呼ぶ兵士。すぐに、医療班が現れ、宮殿内の医務室へと運ばれていく。


「おい、しっかりしやがれ、ルイド!おい!」


 工藤の呼びかけがうっすらと聞こえる中、ルイドはぼんやりと遠い昔のことを思い出していた。


◇◇◇◇◇


 15年前、夏。


 西の国、ヒーブ村。


 村は山の中腹にあり、外界から隠れるように存在していた。ヒーブ村の一族たちは、皆、不思議な力を持っていた。難病と言われるような病を何でも治し、どんな怪我も触れるだけで、一瞬で完治させる力があった。そんな彼らの村に、ある日外界から迷い込んだひとりの少年がいた。村の門前で倒れていたところを、少女が助け、村に入れた。


「……ここは?」


 少年が目を覚ますと、知らない部屋にいた。振り向くと、少年の右横には14歳ほどの年齢で、黒髪に、透き通るような蒼い瞳をした、色白の肌の少女が座っていた。


「君は?」


 少年が尋ねると、少女は答える。


「私はフィアン。あなた、私たちの村の前で倒れてたのよ」


「僕が……?」


「覚えてないの?」


 少女が首を傾げて聞く。


「いや、何も。ところでここはどこ?」


「ああ、ここは……」


 フィアンという名の少女が言おうとすると、部屋の奥から、フィアンと同じ蒼い瞳をした屈強な体つきをした男がやって来た。


「ここはヒーブ村の村長の家。つまり、私の家だよ。君をここへ運んだのはフィアンだ。感謝したまえ。倒れた君を、3日も看病し続けたのだからな」


「え……君が?ありがとう、助かったよ」


 頭を下げ、お礼を言う少年。


「いいの!当たり前のことをしただけよ!それより、もう身体は大丈夫?」


 気にしないで、と手を振り、少年に尋ねる。


「うん、たぶん。君のおかげかな」


 微笑む少年に、頬が赤らむフィアン。


「えっと、その……あの!お腹空いてる?」


「あ、うん。ちょっと」


 すると、男が話しかけた。


「なら、ご馳走を用意しよう。この山で取れた美味しいものばかりだ」


「あ、ありがとうございます!えっと、村長さんですよね、名前は?」


「ああ。私の名前はシン。よろしく」


 手を差し出すシン。


「あ、こちらこそ!」


 握手をする少年。


「あの、そういえば、あなたの名前は?」


 フィアンが少年に尋ねると、少年は笑顔で答える。


「僕の名前は……ルイド、ルイド・ベルザック!」



少年の物語は、ここから始まる。


ルイドが意識を失ってから、10分後。宮殿内に再び、暗雲が立ち込める。佐久間蓮威と赤松守時の両名が、宮殿に到着したのだ。


 二人は、宮殿の門に着くや否や、門兵を瞬殺し、堂々と正面から乗り込む。


「あれれ、誠士郎いないなぁ。どこの部屋かな」


「なぁに。そこら辺にいる奴らに聞けば問題ありませんよ、旦那」


 赤松の指差した先には、騒ぎを聞きつけ、入口に数十名の兵隊が集まっていた。


「お前たちが佐久間蓮威に、赤松守時だな。すでに、貴様らの情報は受け取っている」


 兵隊の指揮官が前に出て、剣を構える。


「何だ、僕ら結構有名なんだね。でも、その程度の人数じゃあ、面白味がないなぁ」


 興味無さそうに、指揮官を見る佐久間。


「我々だけではない。すぐに、応援の部隊が駆けつける。それに、貴様の相手は我々ではない」


 指揮官がそう言うと、奥から男が、一人出てくる。

工藤である。


「あれ、何だ、居るじゃないか!……あれ、誠士郎、怪我してるね。どうしたんだい?」


 笑みを浮かべる佐久間。


「うるせぇよ。てめぇには関係ないだろうが」


「まぁ、それもそうだね。……守時、僕は誠士郎とやるよ。君は……」


 佐久間が言葉を続けようとすると、遮って赤松が答える。


「分かってますよ。雑魚は、俺が倒そう」


 刀を抜く赤松。


「さすが、守時。分かってるじゃないか。さて、僕らも戦おうか、誠士郎」


「相変わらずの戦闘バカだな、お前は」


 吐き捨てるように言う工藤。刀を構える。


「それは君もだろ?」


 佐久間も青い細剣を構える。


「菊水よりも、良い剣みたいだな」


「まぁね。刀は好きだけど、こういう剣も悪くない。こいつの名前は、シェイド。名剣だよ」


 佐久間は、その剣を眺めながら言う。


「なるほど、そいつは良かったじゃねぇか。菊水は、あの時、無くなっちまったしな」


「君にぶっ飛ばされちゃったからね。仕方ないさ。けど、次にそうなるのは、誠士郎、君のほうだよ」


 そう言うと、戦闘のオーラを醸し出す佐久間。


「ふん、やってみやがれ!」


 先に攻撃を仕掛ける工藤。それと同時に、周りの兵隊たちと赤松の戦闘も始まる。


 工藤の刀が、佐久間の剣とぶつかり合う。金属の擦れ合う音とともに、激しい火花を散らす。


 再び、戦いの幕は切って落とされた。

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